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特集/障害者基本計画

障害者基本計画への期待

■対応のおくれ

笹川吉彦

 何事をするにも先ず必要なことは、しっかりした計画をたてることである。

 平成5年12月3日に、私たち障害者の大きな期待を込めて公布された「障害者基本法」は、このことをその第7条の2に明記している。即ち、政府は「障害者基本計画」を策定すること、各都道府県は「都道府県障害者計画」を策定すること、市町村は「市町村障害者計画」を策定することである。このうち、都道府県と市町村については、国のそれが義務付けられているのに対し、いわゆる努力目標とされている。

 ところで、障害者基本法が公布されてまもなく2年を迎えようとしているが、この精神に基づきそれぞれの計画を策定している自治体が、全国約3300といわれる自治体のうち、どの程度あるだろうか。正確なデータはないが、聞くところによると未だ四百余の自治体に過ぎないということであり、淋しい限りである。国連の決議に基づき、世界的規模で国際障害者年が展開されて早15年、その間いわゆる福祉八法も抜本的に改正され、国や都道府県の権限が各区市町村に移譲され、地域福祉の基盤整備が行われたという中でである。

 この遅滞の原因はどの辺にあるのだろうか。少なくとも現状のままでは私たち障害者の期待するノーマライゼーション社会の実現は程遠いものになってしまいそうである。その原因はどこにあるかについては、近々総ての自治体を対象に実施されようとしている新障害者の10年推進会議(全社協等関係4団体で構成)のアンケート調査結果で明らかにされることと思うが、その中で特に目立つのは町村における対応の遅れである。

 わが国では、これまで障害者問題は国や都道府県の義務として位置付けられ、推進されて来た。従って、人口が少なく障害者そのものが少ない町村においては、その窓口もなければ担当者もいないといった状況下にあった。その結果が今日の結果をもたらしているのではないだろうか。

 一方、障害者自体も団体を組織するだけの力がなく、行政に対する具体的な要求もほとんどなかったのではないかと思う。

 こうした状況の下で、「障害者基本法」の精神を活かしてそれぞれの基本計画を策定するには、先ず第1に、行政担当者の認識を改めること、第2に、政府や都道府県が基本計画策定のためのノウハウを提供すること、第3に、財政面で問題のある町村については、積極的な財政援助を行うこと、第四に、障害者数の少ない町村については、幾つかの自治体が一地域としてまとまり、広域的な基本計画を策定すること、第五に、障害者自体が目覚め、団体を組織して自らの要求を声にすることではないかと思う。

 いずれもにしても、3300余の総ての自治体が1日も早く「障害者基本計画」を策定し、更に具体的な年次計画と数値目標を立て、障害者自身が実感できる「福祉社会」を実現することを切望して止まない。

(ささがわよしひこ 日本盲人会連合副会長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年1月号(第16巻 通巻174号) 21頁