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高度情報化社会にむけて

体験・パソコン通信でふくらむ夢の続き…

左高孝太朗

 十数年前、養護学校に通っていた頃のぼくは、こんな夢を持っていた。「自分の思っていることが、もっと楽に伝えられ、多くの人とお喋りする道具ができたらいいなぁ」と。

 言語と肢体の運動に重複した障害をもつぼくにとって、人とのコミュニケーションは、文字板とタイプライタを使うことが主な表現の手段だった。でも自分の意志や考えを思うまま表して、人に伝達するとなると、なかなか難しく歯がゆい思いもしばしば味わった。

 パソコンを使って文書をつくり、モデムと電話回線を通して相手へ伝えたいメッセージを送る…これがパソコン通信の基本である。それは、ぼくにとって、ワクワクするぐらい様々な可能性を秘めていた。

 ある時は、パソコン通信で知り合った仲間と計画を立て、旅行をしたり、自分とは無縁だと思っていたスキーにまで出かけたりする。仕事や活動で、パソコンをより使いこなす知識や技能を身につけるために、ネット上での専門的なフォーラムに参加し勉強をするなど、パソコン通信で得られる人々との交流や情報は、現在、自分が在宅生活を送る上で無くてはならない社会参加への糧である。

 また、自分の思いや考えをキーボードを打つだけで自由に表現でき、確実に外部へ伝わる満足感は、身体の機能にも良い効果をもたらすようで、日常的な会話は文字板(現在はトーキングエイドを利用)にあまり頼らず、自然に口語でするようになった。最近、ぼくの言葉が聞き取れるようになったと、家族以外の人からもよく言われる。

 こうしてみると冒頭に書いた夢が、パソコン通信によって、何だか現実のモノになっているような気がする。

 将来マルチメディアやインターネット等の情報通信技術を誰もが使いこなす日がやってくるのだろうか?そして、ぼくの夢の続き(社会で働き、快適に暮らすこと)が描いていけるのだろうか?またワクワクしながら、思いをめぐらしているこの頃である。

(さだかこうたろう)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年2月号(第16巻 通巻175号) 47頁