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列島縦断ネットワーキング

[長野]

「ふれあいと感動」の長野パラリンピック

内野祐志

開催決定

 平成5年9月、ドイツのベルリンで開かれたIPC(国際パラリンピック委員会)総会において、一九九八年長野パラリンピック冬季競技大会の開催が正式に決定しました。

 この決定を受け、同年11月にこの大会の準備と運営に関する事業を行うため、長野パラリンピック冬季競技大会組織委員会が設立されました。

 現在は、組織委員会も財団法人となり、長野県や関係する市町村の職員等の約40名の職員により、大会開催に向けて準備を進めています。

 長野パラリンピックは、1998年3月5日から14日までの10日間、「ふれあいと感動」を大会テーマとして開催いたします。世界から参加する選手・役員は、約30の国や地域から約1500人を予定しています。

 長野大会では、山ノ内町志賀高原でアルペンスキー、白馬村でクロスカントリースキー、野沢温泉村でバイアスロン、長野市でアイススレッジスピードレース、アイススレッジホッケーの五競技が行われます。

身体障害者のオリンピック

 パラリンピックは4年に一度行われる身体障害者のオリンピックです。オリンピックの直後に同じ施設を利用して行われることが慣例となってきています。

 長野でもパラリンピックの開催直前に、長野オリンピックが開催されることになっています。

 そのため当組織委員会では、同じ建物にある長野オリンピック冬季競技大会組織委員会と連携を図りながら、2年先の大会開催に向けて準備を進めています。

 日本で過去に開催された障害者スポーツの世界的な大会としては、東京オリンピックの後に開催された東京パラリンピックやフェスピック大会(極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会)が1975年に大分市と別府市で、1989年に神戸市で開催されたことなどがありますが、パラリンピック冬季競技大会が開かれるのは日本では初めてのことであり、アジアでも初めて開かれる冬季大会となります。

大会機運の盛り上げ

 選手が日頃の練習の成果を発揮し、実力を出し切るためには、多くの観戦者が温かい声援を送り、各国選手の素晴らしいプレーに対して分け隔てなく応援することが大切です。

 前回、1994年に開催されたリレハンメル・パラリンピック大会では、多くのノルウェー国民がボランティアあるいは観客として参加し、温かな応援をする姿などに高い評価と称賛が与えられました。

 今年8月には、アメリカのアトランタでオリンピックの直後、パラリンピック夏季大会が開催されます。

 そして、次はいよいよ日本の、そして長野の番です。

 大会への理解と関心を高め、盛り上げを図るため、組織委員会では全国から一般公募した大会シンボルマークや大会スローガンを使ったポスターやパンフレットを配布したり、パラリンピック・グッズを作って長野県内、県外で行われるイベントに出向いて頒布を行うなど各種広報活動を展開しています。

 また、大会準備状況をパラリンピック・ニュースとして3か月に1回まとめ、関係機関、団体や雑誌社に送るなどして情報提供を行っています。

 しかし、未だ長野パラリンピックの知名度は低く、国内に向けて積極的なPR活動を行うことが大きな課題となっています。

 そこで組織委員会では、現在、長野大会をPRする一つとしてテーマソングの制作を依頼し、本年度中の完成を予定しています。

 このテーマソングは、長野県中野市出身で昭和59年に映画『風の谷のナウシカ』『Wの悲劇』等の音楽を担当して脚光を浴び、現在もNHK日曜日朝の『日曜美術館』のテーマ音楽やテレビのCM音楽などで幅広く活躍している久石譲(ひさいしじょう)さんに依頼しいています。

 完成の暁に、多くの皆様に親しまれ、口ずさまれれば、長野大会をPRする恰好の素材となり得ると期待しています。

運営体制づくり

 長野パラリンピックは、スポーツを通じて身体障害者と健常者との相互理解や国際交流を深める上で極めて大きな意義があります。日本で培われてきた身体障害者スポーツ大会の経験やノウハウを活用し、シンプルな中にも日本らしさ、長野らしさを全世界に向けてアピールする大会となるよう、現在、競技運営、施設運営、各式典の内容、宿泊、輸送の方法などの具体的な実施計画を策定しています。

 また、大会を成功に導くためには多くの皆様にお手伝いいただくことが不可欠であり、登録をいただいている約3000人余の大会運営ボランティアの皆様に対して、大会に関わっていただく上で必要な知識を深めていただくため、研修会を行っています。

選手の育成強化

 障害者スポーツに参加する選手の競技レベルの向上により、パラリンピック大会は障害者スポーツの世界最高レベルの選手が集まる大会となっています。

 大会が盛り上がるためには、大会時に多くの日本人選手が活躍することが望まれますが、まだ、バイアスロンやアイススレッジスピードレースなど、日本で馴染みの薄い競技については、選手の育成強化が必要となっています。

 選手の育成強化については、厚生省や日本身体障害者スポーツ協会をはじめ関係者の皆様が取り組まれており、毎年開催しているジャパン・パラリンピックなどの大会で選手の実力がさらに向上し、世界の強豪を迎えた本大会で実力を発揮されることを期待しています。

大会を成功させるために

 20世紀最後の、そして4年に一度世界各国の障害者スポーツ選手の代表が集う祭典「長野パラリンピック冬季競技大会」を成功させるためには、当組織委員会だけでなく、関係機関や一般の皆様の協力がいかに広く得られ、一体となってこの大会を作り上げられるかにかかっています。

 大会開催まであと2年余り、残された時間はわずかになってきましたが、素晴らしい大会となるよう、今後も多くの皆様の温かいご支援をいただきますようお願いいたします。

(うちのゆうじ (財)長野パラリンピック冬季競技大会組織委員会事務局)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年3月(第16巻 通巻第176号) 59頁~61頁