列島縦断ネットワーキング
[千葉]
第3回職業リハビリテーション研究発表会に参加して
障害者雇用をすすめる企業の立場から
川俣博昭
職リハの研究動向への期待
昨年12月5、6両日に日本障害者雇用促進協会主催の第3回職業リハビリテーション研究発表会が開催されました。障害者雇用を進める企業の担当者として、大きな期待をもって出席しました。
最初に職リハ研究の位置づけおよび、最近の障害者職業総合センターにおける研究動向について報告しましょう。
●発表会開催目的
職業リハビリテーション研究発表会は、職業リハビリテーションに関する調査研究等の成果を、広く各方面に周知すると共に、参加者相互の意見交換、経験交流などを行うことにより、職業リハビリテーション研究及び障害者の雇用・就業支援技術の質的向上を図り、障害者の雇用促進に資することをねらいとしています。
●職リハの研究体制
① 日本障害者雇用促進協会(本部)における研究は、主として雇用主に対する雇用管理の指導・援助の研究で、外部の委託研究によって行っている。
② 広域障害者職業センターの3つは、職リハの過程での研究と職業訓練等を行っている。
③ 障害者職業総合センターは、各方面の要請に応える使命をもっていて、研究内容としては、労働行政としての政策的な研究、基礎的・理論的な研究を行う役割を担っている、とのことである。
●障害者職業総合センターの研究動向
① 雇用動向・雇用制度に関する研究4件。
② 精神障害者等に関する研究5件。
③ 精神薄弱者に関する研究7件。
④ 視覚障害者に関する研究2件。
⑤ その他の障害者に関する研究5件。
⑥ 職業評価、職業指導に関する研究8件。
⑦ 職業講習に関する研究3件。
⑧ 職業適応、雇用管理に関する研究5件。
⑨ 就労支援機器・環境に関する研究5件。
以上の44テーマのうち、15件は既に実施されている、とのことです。
●シンポジウム(第1日目)
①「精神障害者の職業リハビリテーション」司会・池田勗氏
②「企業における身体障害者のキャリア・アップ」司会・道脇正夫氏
③「自閉症者の職業上の諸問題について」司会・茨木俊夫氏
④「障害者の能力にあわせた職務の創出と職業能力開発」司会・岸本隆臣氏
●研究発表(第2日目)
講演の柱は精神障害と障害者プラン
特別講演は、慶応義塾大学小此木啓吾教授の「現代社会と精神障害」という演題です。総論の部分では、精神分析医学の二大潮流である「記述医学」の役割と「力動医学」による精神障害領域の就労者に対する治療、カウンセリング、地域連携による支援体制の枠組みについての重要性を力説されました。精神分析は、専門医の分野でむずかしい、という従来の考え方を覆すような、平易で示唆に富んだ講義でした。
各論としては、①精神障害者の環境と役割の担い手、②職場のメンタルヘルス、③現代人のストレスの原因とその処方箋、の3つについて、実例をあげながら臨床の現場をユーモアを交えて講演され、会場の聴衆を魅了されました。
次の講演は、厚生省・社会援護局身体障害者福祉専門官・寺島彰氏の「今後の障害者福祉」という題目です。これについては、12月18日に「障害者プラン」として発表されたところです。
発表会の運営ですが、講演会の題目は今日的で時機を得たものでした。また、講演会やシンポジウムを第1日目にまとめ、研究発表を第2日目に配して、シンポ参加者や研究発表者の時間的な制約と重複を避け、遠隔地よりの参加者の便宜を配慮した、主催者側の意欲ある工夫について評価をしたい。
待たれる労・使関係者の参加
今回の発表会の特徴は、参加者が毎年増加し過去最高の609名に達し、定員をオーバーしたため申込み期間中に締め切ったこと。内部職リハ関係者よりも外部関係者の参加者が3割増えて、多くなったことです。
研究発表者は、外部関係者の発表も年々増加しているものの、やはり障害者職業総合センター、国リハ、大学課程・養護学校等の障害関係の研究専攻者や地域職業センターの専任者の発表が圧倒的に多くみられました。
障害者雇用が社会的に重要、かつ急務であることは言を待たないところです。この時期に開催された職リハ研究発表会に、企業、労働組合、教育関係者の参加が比較的少ないことは残念なことです。なぜなら、雇用はこれら労・使が受入れ側であり、教育的リハビリ機関等が供給側であるからです。これら当事者の研究事例や問題提起の登録件数が少ないことはなぜか、ということを今後の課題として、主催者側も企業の労使関係者、教育関係者も反省してみる必要があると思います。
(かわまたひろあき リコーエスポアール㈱)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年3月(第16巻 通巻第176号) 65頁~66頁