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特集/市町村の福祉のまちづくり

福祉基本条例に基づく総合的な福祉のまちづくり

狛江市福祉部

 狛江市は、「あいとぴあレインボープラン」(地域福祉計画であり、老人保健福祉計画でもある)を着実に推進するため、狛江の福祉憲法というべき福祉基本条例を制定し、これを根拠として総合的な福祉のまちづくりを推進しています。

1 条例の制定

 条例の制定は、レインボープランを策定した2年後の平成6年3月で、施行は、同年10月です。レインボープランの実施計画づくりにあたっては、他部局との連携、調整に四苦八苦しましたが、平成5年度の予算編成に合わせ、完成させることができました。

 そして、平成5年5月に行われた第1回福祉まつりで実施計画を発表し、参加者全員に計画書を配布しました。

 同じ平成5年3月の定例市議会において、条例化の直接的切っ掛けとなる一般質問がありました。

 「福祉部のみが躍起になっても、他の部局がその気にならなければ、道路の段差解消一つとっても進まないのではないか。条例をつくって、市政全般に行き渡るような施策を推進するのが重要ではないか」というものでした。

 それを受け、市長は「レインボープランを着実に推進していくためにも、さらに21世紀の超高齢社会に備え、行政、市民、企業等が今後、ともに手を携えて総合的な福祉のまちづくりを進めるためにも、ご提言の観点が必要と存じますので、今後ひとつ検討してまいりたいと考えております」との答弁を行いました。

 レインボープランでは、地域福祉の基本理念として、「参加する福祉の推進」「理解と協働の促進」など6項目を揚げています。また、実施計画づくりの中で「福祉は、市民自らの問題であり、行政努力だけでは豊かな福祉社会は実現しない」、このような考え方をいかにして市民に浸透させるか、そのためにインパクトのあるものは何かを考えていましたが、これといったものが思いつかないでいました。質問通告があり、理事者も条例化に積極的であったことから、この際、狛江の福祉憲法としての条例化が、最もインパクトのあるものになるのではないかと考えました。このような条例をもつ自治体は、東京にはありませんでしたので、都内初をめざして作業をすすめることになりました。

2 条例の骨格

 条例化を決断したとき、条例の骨格として、漠然とした中で、次のように構想し、ほぼ構想どおりに条例化を図りました。

① まず、狛江の福祉憲法としての条例化であるから、憲法と同様に前文をもつこととし、この前文には、レインボープランで揚げた基本理念を格調高くもってこよう。

② 次に、行政と市民それぞれの役割と責務を明らかにし、互いに連携・協働していくべき努力規定を条文化しよう。

③ 一般質問の主旨であり、以前からの課題でもある公共的建築物等のバリアフリーを、条例をもって義務化しよう。

④ レインボープランの推進体制の確立の重要な位置づけである(仮称)地域福祉推進委員会を条例を根拠として設置したらどうかと考えた。

3 条例の概要

(1) 前文

 市民の立場から、すべての市民が、生涯にわたり人間性が尊重され、生きがいをもって、ともに生きる豊かな福祉社会実現の必要性と、そのために市と市民、業者が連携・協働してそれぞれの役割を果たし、この愛する郷土に豊かな福祉社会を実現することを決意し、この条例を定めることと規定している。

(2) 第1章 総則

 前文を受け、改めて条例の目的及び市民福祉の基本理念を規定するとともに、市の責務、市民の権利と責務、業者の責務を明らかにしている。

(3) 第2章 公共的建築物等の高齢者等への配慮

 不特定多数の人が出入りする公共的建築物、公共交通機関、道路及び公園等を整備しようとする者に対し、施設の大小、官民を問わず、高齢者、障害者等を含むすべての市民が、当該施設を安全かつ快適に利用できるよう配慮(条例では、これを「施設の福祉環境整備」と定義している)することを義務づけ、既に施設を設置し、または管理している者には、努力義務を課している。整備基準に適合する施設には、適合証を交付するとともに市報等で広く周知することとしている。さらに、整備基準に従い新たに施設を整備する者や既存施設を整備基準に適合させるために、福祉環境整備をする者に対し、低利融資あっせん、利子の一部補給や50万円を限度に工事費の1割相当額を助成している。

(4) 第3章 市民福祉推進委員会

 市長の附属機関として、福祉に関する重要事項について、調査、審議し、必要な意見を具申する役割をもった市民福祉推進委員会の規定である。

4 今後の課題

 条例の制定により、狛江市は市民福祉を推進し、真に豊かな福祉社会を実現していくことを鮮明にするとともに、市民や事業者に必要な協力を呼びかけた。しかし、財政状況等があって、推進体制の整備が思うようにならず、日々、プレッシャーを感じている。特に第2章の公共的建築物等の福祉環境整備は、やるべきことの多くができていない状況であり、この点については、行政のさらなる努力はいうまでもないが、市民を巻込んだシステムづくりなどの工夫も重要なことと考えている。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年5月号(第16巻 通巻178号)20頁~21頁