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列島縦断ネットワーキング

[宮崎]

宮崎県立生活情報センターについて

村岡精二

 21世紀に向かって、宮崎県はいろいろな面で、大きく変わろうとしています。

 ご存知のとおり、宮崎県は昭和63年7月に全国初のリゾート法の指定を受け、平成5年7月に「シーガイヤ・オーシャンドーム」が完成しました。丁度その年の夏は、天候不順の冷夏で全国からオーシャンドームの夏を求めて観光客が殺到したことを覚えています。

 さて、福祉施策の面に目を向けますと、リゾートと同じ時期に、福祉の新たなプランが始まった時でもありました。

●ホット21ふくしプラン

 新たな福祉への取り組みのテーマは、『ホット21ふくしプラン』というものです。

 少し変わったこのテーマの由来は、「県民生活をあたたかく見守り、ほっとするやすらぎが感じられる。そんな福祉社会を実現しよう」という意味で、その基盤となる福祉行政施設を整備していく計画のことです。

 このふくしプランの具体的な施策としては、①リハビリテーションの拠点施設、②生活情報提供施設、③総合相談施設、④人材の養成施設、⑤福祉のまちづくりの五部門について再編整備を実施するものです。

 ①では、リハビリを重視した身体障害者相談センター(身更相)と重度身体障害者更生援護施設を併設して整備し、センターには医師を配置しています(平成7年4月開設)。

 ②では、宮崎県生活情報センターとして、視聴覚情報提供施設と消費生活センターを合築しています(平成7年4月開設)。

 ③では、福祉事務所、児童相談所、精神薄弱者更生相談所、婦人相談所の4つを合築した中央福祉相談センターで、総合相談に応えられるようにしています。(本年4月開設)

 ④では、福祉サービスの推進に必要な人材を養成する機関として社会福祉人材研修センターを設置します(8年度整備)。

 ⑤では、働く障害者のまちづくりとして、福祉工場や授産施設などを周辺環境を含めてモデル地区として整備をしていくことにしています(現在検討中)。

●宮崎県生活情報センターの紹介

 それでは、今回、全国の皆さんにご紹介します「宮崎県生活情報センター」の施設の役割や最新設備などの特色を説明します。

(1)施設整備の考え方

 先に述べました五つの大きなプロジェクトを今まさに整備していますが、生活情報センターの設置の考え方は、「ノーマライゼーションの考え方を基本としており、県民の方々が誰でも気軽に利用でき、幅広い交流の和が広がる施設にする」としています。

(2)施設の配置

 生活情報センターは、3階建になっており1階は視覚障害者センター(運営委託)、2階は聴覚障害者センター(運営委託)、3階は消費生活センター(庁舎管理)から構成されております。皆さんは3階の消費生活センターがなぜあるのかと思われるでしょうが、このあたりが、宮崎県のユニークな考え方になるところだと思います。

(3)合築の理由

 一言で言えば、情報の重要性とノーマライゼーションの日常的な展開の必要性です。

 三施設を合築することで、障害者を含めた県民に対して、必要な情報の発信提供を行うとともに、研修相談の場を提供することで、この施設を通じて障害者と県民が日常的に交流を実現できることになるからです。

 そのため、施設全体の名称も通称として、施設の目的を表したものになっていることからもわかっていただけると思います。

(4)施設機能の紹介

① 視覚障害者センター

 このセンターは、視覚障害者の方への情報提供施設で、延床面積862㎡の広さがあり、1万冊の点字図書、4万巻の録音テープが備えられており、誰でも閲覧したり、貸出しができます。

 さらに、視覚障害者の方からの相談にお応えするほか、視覚障害者の方やボランティア(朗読等)の方への様々な研修も行います。

 ここの特徴は、1階だけでなく、2階、3階まで23か所に視覚障害者用音声誘導装置(白杖の先の磁石を感知して誘導)が配置されていることで、たとえば磁石付きの白杖を使用すれば、建物の外から、音声により館内への誘導をしてくれるシステムになっています。

 また、各部屋ごとに、音声による紹介をしたり、エレベーターはボタンに触れずに白杖を感知すれば自動的に降りてきて開きます。

 さらに、最新設備の録音室やパソコンでの図書管理システム、OA室などがあります。

② 聴覚障害者センター

 このセンターは、聴覚障害者の方への情報提供施設で、共有スペースを含めて延床面積815㎡と全国でも有数の広さがあります。1000本の字幕入りビデオテープを備えており、誰でも試写を見たり、貸出しを受けられます。

 さらに、聴覚障害者の方からの相談にお応えするほか、聴覚障害者の方やボランティア(手話等)の方への研修も行っています。

 ここの特徴は、やはり地元テレビ局もビックリされた大きなスタジオと言えます。

 このスタジオでは、教育、教養、娯楽などの幅広い分野にわたり、字幕、手話入りビデオの製作ができるように、数千万円をかけて最新システムを導入しました。

 そして、屋外で取材したり、スタジオで収録したりしたテープを調整室で編集し、そのテープにわかりやすく字幕や手話を挿入することで自主製作の作品を完成させ、貸出し利用ができるようになりました。

 すでに、自主製作の作品が次々に完成していますが、今後、さらに地元に密着した作品ができると期待しています。

 このほか、80インチのスクリーンとボディソニックを備えた試写室、聴覚障害者用の磁気誘導ループを研修室、交流ホールなどに導入しています。

 この施設整備に当たって、必要なところには十分な資金を使っていく本県の基本姿勢を、誇りに思っています。

③ 消費生活センター

 このセンターでは、消費生活に関する各種情報提供、研修会・講座等の開催や講師の派遣、商品の品質・安全性などに関する商品テストの実施、相談などをしています。

 ここでの特徴は、816㎡の広いスペースを利用した生活情報スペースがあり、資料・雑誌、図書、閲覧コーナーと視聴覚・展示・談話コーナーがあり、かなりの情報を提供しています。

 さらに、1階から3階共通スペースとして県民や障害者が交流会、研修会、映画会、ボランティア活動などに広く活用できる交流ホール(定員150名)を2階に設置しています。

●施設周辺の整備

 この施設を整備する際、周辺整備が必要となり、次のことを実施しました。

(1)点字ブロック

 この機会をとらえて、これまで各機関でまちまちだった点字ブロックの敷設方法について、関係の道路管理機関、警察等による会議を開催することができ、統一的な取扱いをきめることができたことです。その結果、県内でもモデル的な敷設が実現しました。

(2)弱者感応信号機

 さらに、警察のほうから、障害者が多く利用するため、安全対策として最新式の弱者感応信号機の設置をしたいという提案もあり、いろいろな波及効果が出てくるなど、一体的に整備できたこともうれしい結果でした。

●終わりに

 このプランにより、視覚障害者、聴覚障害者の方々の活動拠点が、宮崎市のNHK横という交通至便地域に設置されたことは、障害者の方々はもちろん県民にとっても、身近なところで交流ができる形ができたことを示しています。

 各県でも、整備されているでしょうが、宮崎県のように市の中心部に設置したところは少ないのではないでしょうか。実際、施設の利便性から施設の利用者も障害者、ボランティア、消費者(県民)などの利用が大幅に増加し、交流が行われています。

 さらに、平成7年11月には天皇皇后両陛下のご視察もあり、家庭教育学級、ボランティア団体、老人クラブなどの利用も増加しており、広く県民に知られてきています。これがまさしくノーマライゼーションのひとつではないでしょうか。

(むらおかせいじ 宮崎県障害福祉課)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年5月号(第16巻 通巻178号) 60頁~63頁