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列島縦断ネットワーキング

[千葉]

盲人ゴルフの活動について

黒羽根唯年

●自然の中で

 暖かくなりゴルフシーズン到来、まさにゴルフを愛する人々も、心ワクワクする季節になりました。青葉の木々の中にその薫りを体で感じつつ、耳で風景を見る自然の中でのプレーに興じていますと、爽やかな薫風に乗ってそこかしこから鳥達の囀りが耳に飛び込んできます。自然の中でのスポーツ、それがゴルフです。自然が優しく私達を受け入れてくれます。その時その一瞬、我を忘れ快い汗と共に、ゴルファー同志の会話に花が咲く。ゴルフを通じて心はひとつとなる、不思議な感があります。それがゴルフではないでしょうか。そして、そこに連帯意識も生まれます。このような素晴らしいスポーツ、ゴルフに出会ったことに感謝し、もっともっと広く、諸々の障害を持った人達と共にゴルフを通して交流ができましたらと常々感じております。

 そして私達視覚障害者のゴルフ愛好者の会VIG(Visually Impaired Golfers of Japan)を3年前に発足致しました。視覚障害者のゴルフ好きが集まった会です。それぞれ一生懸命に練習しております。

 私がゴルフにのめり込んだのは、今から16~17年前のことでした。近所のスナックで飲みながら話をしている時に、ゴルフ談義となり、それまで、いくたびかは経験のあった私もコースに行く破目となりました。その時行ったゴルフコースは、とってもトリッキーで私の持っていたボールはハーフできれいに紛失(OB)。仕方なく残りハーフのために、コース売店で買い足しました。ところがそれらのボールも18番ホール終了時には、たった1個残っていただけ、という惨憺たるものでした。その時から、私のゴルフ熱が燃え、ゴルフ大好き人間となりました。

●練習場へ

 私がゴルフを始めたころは、視覚障害者でゴルフをしているのは、私1人ぐらいだろうと思っておりました。しかし、7~8年前に知人から「盲人の人達がゴルフを練習している」と聞き、早速その会を紹介して頂き、仲間入りするべく練習場へ。その会は、何人かの視覚障害の人達がボランティアの人達の力を借り、始めたのだそうです。1年足らずであるにもかかわらず皆さんがボールを捕え一生懸命にクラブを振っている姿には驚きました。それから、私もブラインドゴルファーの一員として、毎週土曜日には練習場に通いました。そこが現在のJBGA(ジャパニーズ・ブラインド・ゴルフ協会)です。

 その後東京ハイランド・センターで何人かが練習していることを聞き、話し合い、力を合わせてVIGという会を結成しました。VIGでは、年2回(春秋)の大会やゴルフ雑誌の音訳テープの配布、また日本におけるブラインドゴルフの普及と啓蒙を広く呼び掛けています。

 私が常々、皆さんに聞いていることは「ゴルフ好きが集まったら、たまたま皆目が悪かったんです」ということです。健常者の方々と何一つ変わらない形態でできるゴルフを“障害者”“健常者”などと言う隔たりを取り払い、一緒に楽しめるようになればと願い、一同技術の向上を図っております。

 最近では、各ゴルフ場も理解が深まり、1人の帯同キャディー(眼のかわりをしているアシスタント)の入場を認めてくれるようにもなりましたが、せめて2人の帯同キャディーと、プレイングキャディー、視覚障害ゴルファー3名計6名でプレーを進行させていただければ時間の節約となり、また常に視覚障害ゴルファーの側に健常者がいることで安全性も増すこととなります。日本ではプレーヤーは4名までと限定され、それはゴルフ場側の説明では異口同音に「危険だから」の一言。やむをえず帯同キャディーがプレーを行いながら、進行しています。そのため負担を強いられ、疲れることと、時間もかかるようになります。さらに日本では、1ラウンド2時間程度でまわるようにコース側からの要請があり、少しでも遅れると苦情を言われ、また他のプレーヤーからも苦情の対象となり、肩身の狭い思いをしております。

●身体障害者ゴルフ大会に出場

 スコアーは、なかなか良くなりません。健常者の初ラウンド、ビギナーと同じぐらいのスコアの視覚障害ゴルファーが大半です。これを解消するためにVIGでは、スクランブル(初心者でも上級者でも一緒に楽しめるゲーム方法)を取り入れたりして、より楽しくゴルフをする工夫をしております。私達視覚障害者も、それぞれの工夫と、帯同キャディーの方々のお蔭で何ら心配なく、プレーができます。

 私はこの体験を、各団体の大会などに積極的に出場し、機会あるごとに説明しております。昨年は第1回身体障害者ゴルフ大会を知り、早速、津ゴルフクラブまで行ってきました。この大会は、日本で初めての大会です。視覚障害者以外のゴルファーの方々が一堂に集まっておられました。視覚障害の私が訪れたことで、関係の皆様は驚いておられました。私にとって、残念だったことは、その大会に視覚障害ゴルファーが1人も参加しておりませんでした。私自身も、この大会が開催されることを知った時は、登録遅れのため大会に出場できませんでした。その代わりに主催者側のご厚意によりまして、オブザーバー参加となり、諸々の障害をもった方々と懇談する機会も得ることができました。主催者の方々から、本年度からは、視覚障害の人達も、ぜひ参加してくださいとの言葉をいただくことができ、津ゴルフクラブまで行きましたことが無駄でなかった、良かったと感無量でございます。永年、このような大会が早く実現出来たらと、思い続けてきましただけに、夢のようです。今後は関東地域でも身体障害者ゴルフ大会が開催できましたら、この上ない、喜びでございます。実現できるように努力していきたいと思っております。

●アメリカでの体験

 最後に私がなぜそんな気持ちになったかと申しますと、4年前アメリカのフェニックスでの盲人ゴルフ大会に出場した時のことです。大会終了後、パーティーの席上で有名なスポーツアナウンサーが1人の女子プロゴルファーを紹介しました。その女子プロゴルファーが、癌の手術を行うとの説明です。そして同じゴルフ仲間として、チャリティーのお金を手術代の一部としてプレゼントしたというのです。そのお礼の挨拶に来ましたと通訳の人が話してくれました。その時、とっても良いことをするなぁと感激した覚えがあります。次の年、やはり大会後のパーティーの席上であの女子プロゴルファーは、手術の甲斐もなく亡くなったと、昨年と一緒のアナウンサーは涙ながら話して下さった記憶があります。今もバッジに触れるたびに、私にも何か役に立つことはないかと、いつも思っております。

 個人個人の力は非力です。でも結集すれば無限の力が育くまれます。何もできない、動かないからでは、何も生まれません。例えばチャリティーコンペ大会のような催しに障害者の私でも参加することにより、福祉に貢献ができ、福祉を受ける身だけでなく、福祉に協力できることが、喜びと誇りに思えるからです。微力な私達です。皆々様の力と知恵と勇気をご支援下さい。そんな気持ちでいっばいです。

(くろばねただとし 日本視覚障害ゴルファーズ協会)

日本視覚障害ゴルファーズ協会連絡先

黒羽根唯年

〒276 千葉県八千代市米本団地3-20-301

℡ 0474-88-1359


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年6月号(第16巻 通巻179号)52頁~54頁