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気になるカタカナ

ネットワーク

江田 裕介

 ワーク(work)という語には、手仕事、作業、細工といった意味がある。ネットワーク(net-work)は、もともと網織物や網細工を表したことばである。共通することばには、パッチワーク(patch-work)や、すかし細工(open-work)などがある。

 ネットワークは、そこから転じて、鉄道や道路などの交通網、ラジオやテレビの放送局など、網状にめぐる組織の表現として多用されるようになった。

 今日、単に「ネットワーク」というときは、コンピュータのネットワークなど、電子情報の通信網を表すことが多い。その代表はインターネットであろう。これなどは、まさに時代のキーワードといった感がある。人々のインターネットに対する期待には幻想に近いものがあるけれど、とにかく世情の最先端と考えられている。また、最近はネットワーク社会という表現にもたびたび出会う。こちらは、情報化社会とだいたい同じ意味である。

 ところで、福祉の分野でもネットワークということばは頻繁に使われている。その1つは、福祉情報のデータベースや、コンピュータのネットワークを介した相談事業など、やはり電子情報の通信システムを指すものである。新しい福祉のサービスとして、こうしたネットワークを構築するところが増えている。

 その一方、福祉の分野では、人と人とのつながりや、施設間の交流などを表すときにもネットワークという単語を使う。それぞれ「仲間の輪」「関係諸機関の連携」というほどの意味である。こちらは、昔ながらのマンパワーの連帯を現代的に言い換えている例が多い。また、仲間づくりということもあるようだ。

 いずれにしても、ことばの使い方は、その人の問題意識を反映しているに過ぎない。筆者の場合、ネットワークと聞けば、やはり電子情報の通信システムを連想する。そこで、新しい福祉のネットワークができたと聞けば、急ぎ資料を取り寄せるのだが、ときには、かわいい丸文字で手書きされた入会案内が郵送され、苦笑することもある。

 しかし、ネットワークの語源から考えれば、こうした「手作りの福祉」が、より本来の意味に近いと言えなくもない。

(えだゆうすけ 東京都立小平養護学校)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年8月号(第16巻 通巻181号) 71頁