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気になるカタカナ

ピア・カウンセリング

樋口恵子

 ピア(PEER)とは仲間とか同等といった意味をもった英語です。障害という共通点をもつ者同士が、対等な仲間として助けあう方法の一つとしてピア・カウンセリングは使われています。

 ピア・カウンセリングは1970年代初め、アメリカでスタートした自立生活運動のなかで、障害者の力を互いに活かし合い、「障害者こそ障害の専門家である」という新しい概念を打ち出しました。これまで、障害者はリハビリテーションの対象者であり、福祉サービスの受け手でしかなかったのですが、自分たちのほしいものは自分たちが一番よく知っているし、障害をもって生きてきた経験を、他の仲間の援助に使おうと、自立生活センターがスタートしました。

 自立生活センターで働く障害者はピア・カウンセラーと呼ばれ、住居、仕事、所得保障、介助など、その人にとって必要な生活の情報提供をします。また、自立生活をしていく上で必要な生活技術を習得する機会の提供、障害の受容、自信を回復していくための精神的サポートをしていきます。

 ピア・カウンセリングの目的は障害をもった自分を認め、自分らしくありのままに生きる人をサポートすることです。誰かに生き方を提示されるのではなく、自分の人生の目標をもち、どの地域で生きるか、どんな生活をしたいのか、一つひとつを選択し、自己決定していくことです。そのなかで、これまで障害のせいとしてあきらめてきた不便なこと、たとえば駅や建物にエレベータがなく1人では利用できない、地域の学校に行けない、就職ができないなどが、社会のつくられ方に原因があるということに気づき、社会を変えようとする力を育てることです。

 日本でピア・カウンセリングという言葉が使われ出したのは、1986年に八王子でスタートしたヒューマンケア協会という自立生活センターで、ピア・カウンセリング集中講座を開いたのが最初です。以来自立生活センターは、全国に広がり、重度といわれる障害者がピア・カウンセラーとして有給スタッフで働いています。

 ピア・カウンセリング集中講座(2泊3日)、長期講座(40時間)といった講座でピア・カウンセリングを体験してみませんか?

<問い合わせ>

全国自立生活センター協議会(JIL)
〒182 立川市錦町1-3-13三島村ビル102
TEL 0425-29-1169
FAX 0425-25-4757

(ひぐちけいこ 全国自立生活センター協議会代表)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年9月号(第16巻 通巻182号)35頁