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気になるカタカナ

セルフヘルプ

奥野英子

 セルフヘルプ(Self-Help)を英和辞典で引くと「自助、自立、独立独行」と書かれている。

 障害者福祉やリハビリテーションの領域において、このセルフヘルプは具体的にどのような場面でどのように使われているのだろうか。障害者関係の法律や通知文においては、まだ、セルフヘルプという用語は使われていない。各種の社会福祉辞典を調べてみたが、セルフヘルプという用語としては掲載されておらず、一部の辞典において「セルフヘルプグループ」として解説されている。

 「セルフヘルプグループ」とは、「患者会等、共通の障害・疾病をもつ患者やその家族らが集まって、互いに助け合ったり、学習等の機会をもつなどして、相互の成長を図る活動」(「改訂社会福祉用語辞典」中央法規出版)である。

 一方、Self-Helpの日本語訳としての「自助」を調べると、「19世紀、イギリス社会の基本的な倫理観であり、社会事業もこの理念によって運営されている。人間は理性にしたがって勤勉であるならば幸福になれるはずである。逆に貧困者は怠惰であるという。しかし、やむを得ない原因のものや、更生の意欲のある者は、社会事業の対象として資格があるとした。この理念(自助)は社会事業の底流となっいてる」(「社会福祉辞典」誠信書房)と解説されている。

 このようにSelf-Helpの日本語訳としての「自助」は非常に古くからある概念であるといえる。社会福祉援助技術の代表的方法である「ケースワーク」は、1860年代にイギリスで開始された慈善組織化運動に端を発しているが、この運動は、自助、セルフヘルプを基調として援助を実施してきたのである。

 このように国際的、歴史的経過をふり返った上で、最近、目新しいカタカナ言葉として使われるようになってきた「セルフヘルプ」は、「自立」とも共通する概念であり、「他人に依存せず、自分の力で、自己の向上・発展をめざし、また、同じ障害や同じニーズをもつ者同士が力を合わせ、お互いに助け合い、お互いの成長を図ること」になるであろう。従って、障害者の当事者団体はセルフヘルプグループなのである。

(おくのえいこ 厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年12月号(第16巻 通巻185号) 25頁