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特集/「アジア太平洋障害者の10年」中間年を迎えて

アジア太平洋障害者の10年(1993年~2002年)の中間年を迎えて 

丸山一郎

 国際連合のESCAP*(国連アジア太平洋社会経済委員会)の決議により、アジア太平洋地域において、障害のある人々の「完全参加と平等」をめざして国際行動を起こすこの「アジア太平洋障害者の10年」(以下「10年」とする)は、早くも4年を終えて中間年を迎えました。

 「国連・障害者の10年」(1983~1992年)に引き続いての国際年を実施しているのは、国連のなかではアジア太平洋地域だけですが、この地域での国際協調行動を起こそうとした意図により、この4年間に地域内43の加盟国では前の障害者の10年とは違って、障害のある人々の問題に焦点が当てられた新たな動きがあります。

 元首や政府の高官が<完全参加と平等の促進>を宣言する動きが多くの国で行われたり、障害問題の国内調整委員会を作る動きや、障害者関連法律制定のための情報収集が始められたことなどの基本的な取り組みがなされているのは、この10年の制定によるものといえます。

 しかしながら、総会決議が目標にした国連の「障害者に関する世界行動計画」の実施にあたり、特に焦点を絞った12の「行動課題」に関しては、具体的な進展が報告されたのは限られた国においてのみです。

 「行動課題」とは、①国内調整、②法律、③情報、④国民の認識、⑤環境改善(アクセシビリティ)とコミュニケーション、⑥教育、⑦訓練と雇用、⑧障害原因の予防、⑨リハビリテーション・サービス、⑩福祉機器、⑪自助団体、⑫地域協力、です。

 このうち障害者対策としては初歩的ともいえる障害原因の予防、教育、リハビリテーション・サービス、訓練や雇用・就労などに関して、施策の方針と人材の養成などが検討され始めたのも10年の成果と見ている国があります。

 こうした中で、ESCAPは、「10年に関する政府評価会議」(1995年5月)で進捗状況を評価し、推進のための勧告を行いました。この政府会議には、日本の障害関係団体を含めたNGO(非政府機関)も参加して討議に加わっています。

 この勧告をうけて1995年5月ESCAP総会は10年の推進のため、「行動課題実施の年次目標」を採択しました。行動課題別に到達すべき具体的目標を、ただちに実施するものや1996年からの年次ごとに実施を図るものを定めたのです。

 中間年に当たり、2回目の評価会議が本年9月26日、韓国のソウルで開催されます。

 この10年の実現を運動した日本の「新・障害者の10年推進会議」が呼びかけて1996年10月に結成した、「アジア太平洋障害者の10年推進NGOネットワーク(Regional NGO Network for the Promotion of the Asian and Pacific Decade of Disabled Persons 略称RNN)-現在12か国の障害者団体やグループの連合体と、6つの国際障害者関係団体(WBU、WFD、RI、DPIなど)が参加」はESCAPへの提言と協力を積極的に行ってきました。10年の公式ロゴやテーマソング(日本のキャンペーンソングを採用)を提案し採択されています。

 RNNは毎年各国で推進のキャンペーンを実施してきています。93年沖縄、94年マニラ(フィリピン)、95年ジヤカルタ(インドネシア)、96年オークランド(ニュージーランド)等、年々拡大されてきていますが、各地での障害者団体や関係者の交流を進め、討議の結果を国連や各国に提言してきました。各国でのキャンペーンには、大統領や首相の出席を得るなど、社会への10年の周知浸透を努力してきています。

 中間年に当たる“キャンペーン'97”は、97年9月26日~29日まで韓国ソウル市で、国連「評価会議」と同時に開催されます。

 この10年のことを、障害のある人々自身を含めて各国の人々はほとんど知らないことも事実です。提案国である日本においても、ごくわずかの関係者のみでしょう。中間年を迎え、この国際年の意義と目指すものの一層の周知が図られる努力が求められています。

(まるやまいちろう RNN事務局長、日本障害者リハビリテーション協会)

*注

 国連システムの主要機関である経済社会理事会の下部組織で、5つの地域委員会の1つ。本部はバンコク。

 現在、域内の加盟国・準加盟メンバー50六か国(地域を含む)、域外の加盟国4か国の計60か国(地域を含む)がこれに参加している。なお、わが国は、1952年に準加盟メンバー、1954年に加盟国となった。

 活動目的はアジア太平洋地域の経済社会を促進すること。従って、活動の分野は、農業、工業、社会開発等、経済・社会に関連する全ての分野を含んでいる。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年1月号(第17巻 通巻186号)10頁~11頁