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特集/「アジア太平洋障害者の10年」中間年を迎えて

「アジア太平洋障害者の10年」中間年にあたって

高嶺 豊

 「アジア太平洋障害者の10年」中間年の評価会議が1997年9月にソウルで開催されることが正式に決定した。中間年会議は、韓国政府が1997年9月にソウルに誘致したいむねをESCAP事務局に表明していたが、その後いくつかの政府が1998年開催を提案していた。98年開催提案の主な理由として、中間年評価会議まで「10年の目標と勧告」を実施する時間があまりないことや、1997年末までの5年間を10年の前半としてフルに評価したいとの意向であったようだ。このように中間年の開催に関して意見の相違があったので、事務局長は各加盟政府へ開催希望年のアンケートを送付した。その結果、1997年を希望する政府が多く、中間年会議は1997年9月に韓国で開催されることが正式に決定した。

ESCAPの動き

 1997年の中間年に向けて、ESCAPでは、「アジア太平洋障害者の10年の行動課題を実施するための目標と勧告」の域内での浸透を図るための活動を行っている。この目標と勧告は、1995年6月にバンコクで開催された最初のアジア太平洋の10年評価会議で決議された。12の領域にわたって72の目標と78の勧告が含まれている。この広報活動のために、ESCAPでは「行動のための目標」と題するインフォメーション・キットを作成し、域内の政府やNGOおよび関係者に配布を始めている。このキットには、72の目標を達成年別に見やすく整理したポスターや、領域別、達成年別に整理された目標のリーフレットなどを含んでいて、目標が一目で分かるように工夫されている。

 10年に関する国内活動を推進していくのに不可欠な機構が、障害問題に関する国内調整機関である。ESCAPでは、この機関の設立を優先事項に掲げており、現在、障害者に関する国内調整機関についてアンケート調査を実施中である。この結果は中間年の評価会議の資料として提出される。

 中間年評価会議では、10年の行動課題の実施に関する政府の中間年までの活動を評価検討することになるが、そのために、ESCAPでは、各政府にアンケートを発送する予定である。このアンケートに関しては、1996年5月に開かれたアジア太平洋組織間委員会(RICAP)障害問題小委員会ですでに作成を開始している。

 1997年5月に、中間年の準備に向けてのRICAP障害問題小委員会が開かれ、中間年会議の議題や会議の日程などが具体的に検討される。

 中間年評価会議では、10年の行動課題を実施するための目標と勧告をもとに、各政府の中間年までの進行ぶりを評価し、10年の後半への取り組み方針を決定することになる。

 前半の5年間に関しての筆者の個人的な意見は、域内協力ではアジア太平洋の10年の意義を各国政府に徹底することが中心であったといえる。各国政府にとっては、国の障害者に関する法および施策の整備が行われた期間だと思える。域内協力の例としては、1995年に行動課題を実施するための目標と勧告が採択されたことで、ようやく10年の活動をモニターする手段が確立されたことである。また、各政府の法整備に関しては政府の動きとして次に記述する。

政府の動き

 アジア太平洋障害者の10年の前半の特徴として、各国で障害者に関する法整備が急ピッチで行われていることである。

 タイでは、1991年に制定された障害者リハビリテーション法の「障害の定義と判定」「雇用割り当て」「医療リハビリ等」に関する規則が94年に続けて公布された。「教育」と「アクセス」に関する規則は現在準備中。また、1996年10月から実施された第8次国家経済社会開発5か年計画の中に初めて障害者に関するセクションが加えられた。このセクションの作成には障害者リーダーが直接携わった。また、1996年3月に、初めて障害者を代表する上院議員が首相によって任命された。

 インドでは「アジア太平洋地域の完全参加と平等に関する宣言」に政府が署名したことがきっかけで、1996年1月1日に障害者の包括的な法律が成立した。現在、規則案が検討され近日中に省庁や関係団体に回覧され修正された後、公布されるとのことである。また、ベトナム、マレーシア、バングラデシュ、インドネシアなどでは、障害者に関する法律や施策の制定が検討されているとのこと。

10年の後半への期待

 「啓蒙から行動へ」というスローガンを聞いて久しい。アジア太平洋の10年の後半は、各政府が具体的な行動をとりやすい時期にきていると思われる。その証として、多くの国で障害者に関する法律や施策の基盤整備が現在行われていることである。さらに、期限付きの「目標」が設定されたことで、域内のプライオリティーが具体的に示され、国内の行動目標が立てやすくなっている。だから、アジア太平洋の10年の後半は具体的な行動を伴う期間になると期待される。

(たかみねゆたか ESCAP社会開発部障害者プロジェクト専門官)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年1月号(第17巻 通巻186号) 12頁~13頁