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特集/「アジア太平洋障害者の10年」中間年を迎えて

新たなステップに向けて全日本ろうあ連盟の取り組み

大槻芳子

 今年は「アジア太平洋障害者の10年」(以下「10年」とする)の中間年、また全日本ろうあ連盟にとっては創立50周年にあたる記念すべき年でもあります。

 全日本ろうあ連盟は1994四年に10年の運動方針を打ち出し、国内にあっては「ろうあ運動」から「障害者運動」へと、ろう者としての視点をもちながらも他の障害者と積極的に連携し、運動を進めていくことにしました。また国際的にはアジア諸国のろう者の実情をまず学び、お互いに協力し自立への援助の方法を検討・実施していくことを確認しました。

 このような確認の基にアジアへの支援活動の一つとして「アジアろう者友好基金」を設立し、このキャンペーンも兼ねて「知事と語ろう全国ろうあ者キャラバン」を組織(写真1 略)しました。このキャラバン隊は昨年の全国ろうあ者大会を皮切りに、北回りと南回りに分かれてキャンペーン活動を行っています。現在、各都道府県の知事と面会し「聴覚障害者情報提供施設の建設」「手話通訳の制度化」等を訴えながら、市民には「アジアろう者友好基金」への募金を呼びかけ、2月3日の日比谷公会堂でのゴールセレモニーを目指してキャンペーン中です。

 また今年の創立50周年記念大会にはアジア各国より代表者を招き、世界ろう連盟の「アジア地域事務局代表者会議」を開催し、大会の場所ではシンポジウムやパネルディスカッション等、中間年にふさわしい新たなステップになる企画をたてています。

 そして2年前より始まったJICA(国際協力事業団)の「ろう者のための指導者(アジア大洋州諸国)」事業ではネパール、マレーシア、タイ等延べ9か国17名を迎え、日本の福祉・ろう教育・手話通訳制度等を学び(写真2 略)、あわせて日本各地のろう者との交流を行う等、アジアの参加者にとっても、私たち日本のろう者にとっても、とても刺激になるものでした。アジア各国の実情を聞くにつけ日本の20年程前の私たちろう者の生活とダブり、「ソウダソウダ」と相槌を打ちながら、「私たちはこうやって運動してきた。ガンバレ!」とエールを送る一方で、確実に私たちの仲間がアジアにいる、一緒に歩み共感できる人たちがいることを知り、とても勇気づけられました。

 また日本にいてアジアを見るだけでなく、昨年はJICA総合研究所の委員の1人として、タイ、ネパールで障害者の実態調査を行う等、この中間年までの5年間は飛躍的にアジアとの交流が深まったと思います。

 国を越えてコミュニケーションできるこの「手話」という素晴らしい言語を誇りに思い、共感できた経験は、日本からアジアへと活動の拠点と幅を拡げる自信につながり、大きな成果が得られたと思います。

 そして、このようにアジアへの気運が高まるなか、「ろうあ運動」から「障害者運動」へ、「日本のろう者」から「アジアのろう者」へとどのように発展させ多くの人たちと連帯できるか、そのために残る5年間、今年の「全日本ろうあ連盟創立50周年記念全国ろうあ者大会」をスタートに、新たにアジアの実情を調査し、協力体制を確立していきたいと思っています。

(おおつきよしこ 全日本ろうあ連盟事務所長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年1月号(第17巻 通巻186号) 23頁