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特集/「アジア太平洋障害者の十年」中間年を迎えて

義肢装具における国際協力の具体的成果を

澤村誠志

 「アジア太平洋障害者の十年」が始まり、今年は中間年となりますが、障害者の参加と平等を目指して単なる理念の確認にとどまらず、何か具体的な成果を後世に残す必要があります。特に、世界の大半の人口を占めるアジア地域に住む私どもにとって、義肢装具の領域においても国際協力を進めていくことが大きな責務のように感じられます。アジアの開発途上国におきましては、義肢装具製作技術者の教育は、パキスタン、カンボジア、中国、香港を除いては皆無に近い状態です。また、外貨が不足していることもあって、海外からの義肢装具パーツの輸入ができないため、その技術があったとしても生かせていないのが現状です。

 これらのきわめて乏しい義肢装具サービスの現状を少しでも改善し、具体的な成果を上げることを目標に、私どもは、「アジア太平洋障害者の十年」キャンペーン’93沖縄会議において、「アジア開発途上国における義肢装具センター」を提唱し、これが決議・勧告されました。

 そこで、ISPO(国際義肢装具協会)と日本義肢装具学会の協力を得て、その具体化を今なおODAの援助が期待できるインドネシアに焦点をあて、保健省を窓口として再三交渉にあたり、一九九六年四月にインドネシア政府から正式に日本大使館に要望として上がってきました。

 今後は外務省と厚生省の協力のもとに、わが国として、国際的に通じるカテゴリーⅡレベル(ISPO、WHO)の義肢装具士の教育を進めていくことと同時に、教育、臨床に必要なパーツの製作を進めていくことが重要と考えます。政治的な判断を誤り、決して国際的に顰蹙をかうような中途半端な援助にならないように努力するべきと思われます。

 この間、ISPOは、アジアにおいては切断、義肢に関するコンセンサスカンファレンスを一九九四年にはタイのパタヤで、一九九六年にはインドのマドラスで開催しました。また同年、開発途上国における義肢装具サービスのあり方についてのコンセンサスカンファレンスをプノンペンで開催し、将来へのビジョンを作成しました。

 一方、わが国は、一九八一年のアジアの義肢装具セミナー、そして一九八九年には、第六回ISPO世界会議を神戸で開催し、多大の評価をいただきました。しかしその後、アジア開発途上国からわが国に対する援助の要望が大きく、わが国としては義肢装具に関するネットワークを作り、情報基地的な広報を含めた仕事をする必要性を強く感じています。幸い、厚生省にて「アジア太平洋障害者の十年」中間年の行事の一つとして、義肢装具国際セミナーを取り上げていただける機運になり、一九九八年二月初めに義肢・装具の進歩についての国際セミナー及びアジア開発途上国における義肢装具サービスの向上についてのワークショップを開催するための準備に入っています。

 このセミナーは、日本義肢装具学会、ISPO及び日本障害者リハビリテーション協会が主催者となり、欧米よりの義肢装具・切断術の権威と、WHO、ICRCなど国際組織の代表者の参加も得て、アジア太平洋地域における義肢装具ネットワークを促進するため、わが国としての責任を果していきたいと存じますので、ご理解ご支援をお願い申し上げます。

(さわむらせいし 国際義肢装具協会会長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年1月号(第17巻 通巻186号) 25頁