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[栃木]
栃木県障害者文化祭「カルフルとちぎ'96こころのつどい」の開催について
池田美智雄
1 沿革及び開催の趣旨
栃木県では、平成7年10月に「第10回国民文化祭・とちぎ'95」(主催:文化庁・栃木県ほか)が開催されたことに伴い、県民の文化活動への関心が急速に高まりました。
このような状況の中、本県では、昭和55年に開催された国民体育大会の直後に全国身体障害者スポーツ大会が開催されていることから、県内の障害者から「もう1つの文化祭」として文化・芸術活動の発表の場を求める声が高まってきました。12月9日の「障害者の日」の趣旨に鑑み、国民文化祭の開催直後の平成7年12月14日、15日に、日本障害者リハビリテーション協会のご支援を受け栃木県障害者文化祭を開催することとなりました。タイトルは、障害者と健常者、障害者相互の交流の活発化の願いを込めて、フランス語の「交差点」を意味する「『カルフル』とちぎ'95」としました。
当日は肌寒い日であったにもかかわらず約1万5,000名の来場者があり、記念式典、記念講演、作品展示、演芸、カラオケ大会など多彩な催しが開催される文化祭となり、お互いの交流を深めました。
2 平成8年度の事業展開
本県では、目前に迫った21世紀への橋渡しとして、これからの県政の指針となる「とちぎ新時代創造計画3期計画」を平成8年1月に策定しました。
この計画の中で、障害者福祉行政は県政の重要施策の1つとして位置づけられ、障害者文化祭についても平成7年度の成果を生かし、一層の交流と相互理解の促進を図る観点から、障害者文化祭を開催することとしました。
特に今年度は、精神障害者の集いとして従来開催されていた「精神保健大会」と、合同で開催することとなりました。
これにより、平成8年度の本県の障害者文化祭は、身体障害者・知的障害者・精神障害者のすべての障害者が参加する文化祭として、多くの県民の参加を得て、障害者の自立と社会参加の促進のために非常に有意義なものとなりました。
3 文化祭の内容
会場は、宇都宮市明保野町の宇都宮市文化会館小ホール、総合コミュニティーセンター、明保野体育館の3会場において、11月13日(水)、14日(木)の開催となりました。この会場の大きな特色は、3施設が駐車場を挾む形で隣接しており、いずれも障害者向けの設備が整備されており、大型車を含めた駐車スペースが十分にあることがあげられます。
このため、その一部を屋外イベント用として活用することができ、当日は、駐車場の一部約3,000平方メートルを模擬店等の会場として、その中に、屋外ステージ、休憩所等を配置することができました。
各会場で行われたイベント等の具体的な内容は次のとおりです。
(1) 宇都宮市文化会館小ホール
① 記念式典:2日間にわたる文化祭の開会を祝い、心の輪を広げる体験作文・障害者の日のポスターの成績優秀者等の表彰、体験作文の発表等を行いました。
② 記念講演:宮城まり子氏を講師に迎え「こころの交差点」と題して講演会を行いました。会場は、立錐の余地のないほどの入場者があり、それぞれが深い感銘を受けました。
③ 芸能の発表:特殊教育諸学校、施設の利用者が演劇・合唱等、日頃の練習の成果を存分に発揮しました(写真1 略)。
④ ファッションショー:障害者におしゃれを楽しんでもらうため、機能性とファッション性を兼ね備えたファッションショーを行いました。
また、(財)栃木盲導犬センターの協力を得て、盲導犬もショーに登場しました。
(2) 総合コミュニティセンター
① 作品の展示・販売:精神障害者関連施設の利用者が制作した絵画・工芸作品を展示・一部販売しました。
② 精神保健福祉相談:こころの悩みや不安に対する相談コーナーを開設するとともに、リラクゼーション機器等の展示を行いました。
③ OTコーナー:作業療法士による「籐かご」制作の実演・指導を行いました。
④ カラオケ大会:県内各地からのど自慢の障害者50人が参加しました。
⑤ そばコーナー
⑥ 楽しく愉快な演芸会
(3) 明保野体育館
① 作品展:県下全域から応募された、絵画、書道、工芸、写真等の作品を在宅、施設、学校のコーナーで展示しました。
② おもちゃ図書館紹介コーナー:障害をもつ子どもたちがいろいろなおもちゃに出会い、友達やボランティアの人々と交流する場であるおもちゃ図書館の活動を紹介し、人気のおもちゃ、手作り布絵本等を展示しました。
③ ボランティア活動紹介コーナー:県内で活動しているボランティアグループ等を紹介し、同時に相談コーナー、点字体験コーナー等を開設しました。
④ 作品販売会:障害者施設、特殊学校等で制作されたこころ温まる作品の販売会を行いました。
(4) 屋外広場(駐車場)
① ふれあいコーナー‥病院、保健所、施設、学校、作業所等の新鮮な野菜等の即売会や、地元高校生ブラスバンド部による演奏会など各種のイベントを行いました。
4 おわりに
今回の文化祭は、天候にも恵まれ2日間で約1万6,000名もの参加者があり、盛況のうちに閉幕することができました(写真2 略)。
開催に当たり、各関係団体をはじめとして延べ五百名を超えるスタッフの協力があり、普段交流の機会の少なかった、一般県民や施設職員、特殊学校教員との相互交流も実現するなど、予想以上の成果がありました。
今後は、より多くの一般県民の参加を得るために開催日を休日等にすることや、より多くの障害者が参加できるプログラムの充実、さらには、障害者が日常的に文化活動を楽しめる場づくりなども必要と考えています。
今後もより多くの障害者と県民が参加できるような文化祭として、発展させていきたいと考えています。
(いけだみちお 栃木県保健福祉部障害福祉課)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年3月号(第17巻 通巻188号) 46頁~48頁