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列島縦断ネットワーキング

[長崎]

「長崎でてこいランド」ってなあに?

上野左千子

 日本の西の端に「みんなはひとりのために、ひとりはみんなのために」のキャッチフレーズで誕生した「長崎でてこいランド」は、5,000坪の敷地に、のびのび館、すやすや館、ゆうゆう館、さをり館、わいわい広場、小動物園があります。

 「長崎でてこいランド」とは、心身にハンディキャップをもつ子どもの親や支援者たちが力を出しあってつくった、山の中の小さなレジャーパークです。ハンディキャップをもつ人ももたない人も家や施設に閉じこもっていないで「でてこい!」と呼びかけ、そして「出て憩う」場となり、さらにみんなの「ふれあいの場」となることを願って、平成2年5月3日大雨の中、オープンしました。

 誕生したばかりのでてこいランドでは、お客様、特にハンディキャップをもった子どもの親ごさんが、部屋の隅っこか外のベランダにいらっしゃったのが印象的でした。「中にどうぞ」「いいえ、迷惑をおかけしますから」「かまいませんから」の連続でしたが、その方々があるがままの態度に変わるまで、そう時間はかかりませんでした。でてこいランドの空気がそうさせたと自負していますが、今では、元気な方々が「私たちも使っていいの?」「みんな仲良くしてね」と言ってくれるようになりました。

 ハンディキャップをもった方々も徐々にですが来館するようになりました。トイレやお風呂、居場所が確保されれば外に出られるのです。ハンディキャップをもった本人もですが、親も出られない、出せない状況がありました。そして回りの人たちもどうすればいいのか、何をしてあげればいいのかわからない部分もあったでしょう。

 しかし、長崎でてこいランドは元気な人もハンディキャップをもった人も、ハンディキャップといっても身体障害、知的障害、精神障害、最近多くなった不登校の子どもたち、学習障害児、そして小児糖尿病、てんかん等さまざまですが、みんな一緒、何も変わりはないのです。目が不自由な人だったら、声をかければいいし、車いすの人も介助してほしい時は自分から頼むし、何も先走りしなくてもいい、お互いありのままの姿で接すればいいわけです。

 現在、でてこいランドはスタッフが3名(専従2名)で運営していますが、忙しいのでもう1人か2人ほしいところです。でてこいランドには、3つの約束があります。

 一 火を使ってもかまわないが、建物に火をつけないこと。

 二 ケンカはしてもいいが、血をみるケンカはしないこと。

 三 ゴミは、できるだけもち帰ること。

 あとは何時に起床しようが、何時まで起きていようがお互い思いやりの気持ちをもって過ごしてもらえればけっこうです。

 1月は、3日に恒例の餅つき会。1番人気は「湯とり餅」です。畑から大根を掘り、ピリッカラッなんてものではなく、ヒリヒリするくらいの大根おろしにしょうゆをたらし、湯にとった餅を入れて出来上がり。「やはり、でてこいランドはこれに限る」との声にお正月も3日から頑張ったカイがあるというものです。

 2月、3月はお別れの会。学校、子供会、会社いろいろなグループの集まりが開かれます。

 4月、長崎でてこいランドオープン記念の月。そして、また、出会いの日々です。

 5月、各種の歓迎会、総会。

 6月、キャンプの打合せ、リーダー研修会。

 7月、8月は連日のようにキャンプが行われます。事務所には、毎日、カレーと焼肉とおにぎりの差し入れがあります。

 9月、10月、11月はコンサート、結婚式、講演会。昨年は結婚式が5組あり、車いすの方もたくさん出席しました。

 12月はクリスマスコンサート。天井まで届くモミの木に色とりどりの飾りがかけられ、コンサートを引き立ててくれます。専属のボケラーズ(小・中・高校生、主婦、会社員の総勢13、4名のメンバー)、風太郎&ダダチャイルドといったいつものバンドのほかに3、4組が歌い、踊りまくる夜を迎えます。大みそかは常連さんが露天風呂で除夜の鐘を聞きたいと1升ビンを下げてのお出まし。これが終わらないと、でてこいランドの1年は幕がおりません。

 平成8年5月26日、北海道網走郡津別町に「北海道でてこいランド」がオープンしました。きっと今頃は玄関の軒先まで雪が積もっていることでしょう。

 「京都でてこいランド」は平成十年着工の予定で話が進んでいます。福知山線下山駅下車徒歩20数分のところに、こんもりとした山があり、これが全部「京都でてこいランド」になるのですからびっくりです。近くには川も流れており畑も栗山もあり、栗は丹波栗、豆は紫頭巾で有名な黒豆というから驚きです。花咲かじいさんではありませんが、こういう環境の下なら頑張りがいのあるというものです。資金づくりのためのバザーやコンサートに頑張っていらっしゃるメンバーの姿には頭が下がります。しかし、今が一番楽しい時なのかもしれません。

 今年も365日、年中無休のでてこいランドを目指し、頑張りすぎず、力まず、少しずつ少しずつ息が切れない程度に努力したいと思います。

 長崎でてこいランドは、原則として入場無料ですが、お帰りの際に楽しかった分だけのカンパをお願いしています。現在まで公的な助成は受けていません。どうぞみなさんお出かけください。

(うえのさちこ 長崎でてこいランド)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年3月号(第17巻 通巻188号) 49頁~51頁