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列島縦断ネットワーキング

愛知・愛知地域職業リハビリテーション交流集会

岡谷和典

 地域職業リハビリテーション交流集会は、地域における職業リハビリテーションネットワーク作りを進めることを目的に、平成元年度から、全国47都道府県にある地域障害者職業センターで地域の実状に応じたテーマに基づき実施してきました。
 平成8年度は愛知県を含め全国8か所で開催され、愛知県においては1月28日、名古屋市内で「企業で働きたい!に応えるために」というテーマで、職業リハビリテーション関係者、事業主等約200名の参加のもと盛大に行われました。
 日本障害者雇用促進協会の氏家麻夫監事による基調講演(写真1 略)では、海外での障害者雇用の取り組み、法律改正の経緯等を交えながら職業リハビリテーション(以下、「職リハ」という)の変遷がわかりやすく説明され、職リハに対する考え方について理解を深めるものでした。
 また、基調講演の後半ではノーマライゼーションの推進に関する説明があり、その中で障害者の雇用促進を進めるにはさまざまなバリアの克服をすることが必要であること。特に心のバリア(偏見、差別)を取り去ることが最も重要であり、学校教育の早い時期に、こういったことについて教育し、国民一人ひとりの意識改革を進めることの必要性が強調され、今後の職リハを推進するうえで示唆に富む内容でした。
 パネルディスカッションにおいては、パネリスト(職業安定所、養護学校、障害者能力開発校、福祉施設、事業所)から取り組みの現状についての話題提供を踏まえ、司会者からパネリストに対し質問をするというスタイルでのディスカッション(写真2 略)が行われました。
 討議は、企業での障害者雇用に対する具体的取り組みと精神障害者の雇用に関することを中心に進められ、パネラーによる積極的な意見交換がなされました。
 精神障害者の雇用については、精神障害者は身体障害者、知的障害者に比べ特性・障害の状況が理解しづらいとの発言もありましたが、知的障害者の受け入れについては、さまざまな経験を積み重ねながら配属先を検討しているところであり、現在、各部署で障害者の受け入れに関し、積極的に採用する計画を進めているとの企業側からの力強い発言もあり、今後、愛知県の障害者雇用に大きな期待がもてました。
 交流集会全体を通して、職リハに携わる関係機関が、それぞれお互いの事業内容を理解し、「雇用する側」と「雇用を支援する側」とが共通認識を得ることができたという点では参加者から高い評価を得ることができ、本交流集会が非常に有意義であったと確信しています。
 愛知県では、平成5年より福祉の総合計画「愛フルプラン(あいち8か年福祉戦略)」をスタートさせ、福祉に関する7項目の対策を柱に平成12年度までに達成することとしています。その中で障害者対策については「障害を持つ人々の自立への支援と社会参加」というスローガンを基に養護学校教育の充実、自立生活支援施設の増築、リハビリテーションセンターの建設等に向けて着々と準備が進められています。また、愛知障害者職業センターにおいても職業安定行政との連携の下に職リハサービスの一環として職業準備訓練、職域開発援助事業等を展開し、あらゆる障害者に対して幅広くサービスを実施しているところです。
 障害者雇用については、今後も検討すべき課題は多く残されてはいますが、労働、福祉それぞれの関係者を集めた交流集会が開催されたことは、労働行政における障害者対策も交えた今後の愛知県での職リハネットワークの構築に向けての大きな第一歩を踏み出したのではないかと考えます。
 また、このような交流集会を開催することにより職リハ関係者、事業主の理解を深め、お互いが「心の壁」を取り去っていければ障害者の雇用促進にも、今以上に明るい兆しが訪れるのではないかと思います。

(おかやかずのり 日本障害者雇用促進協会障害者職業総合センター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年4月号(第17巻 通巻189号)54頁~56頁