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特集/障害者プランの推進に向けて

総合的視野に立つ障害保健福祉行政

厚生省大臣官房障害保健福祉部

1 障害保健福祉施策の総合的検討

(1)趣旨

 平成8年7月に、身体障害者、精神薄弱者、精神障害者という3つの障害者の施策を効率的に推進するために大臣官房に障害保健福祉部が設置されました。このような行政組織の再編がなされた後、今後の障害者施策の最大の課題は、地域における障害者の生活を支えるための総合的な施策の充実ですが、現在は障害の種別や程度に応じて施設体系及び施策体系が細分化され、必ずしも調整がとれていない状況にあります。
 しかしながら、障害種別ごとの現行施策をすぐに一元化することは不可能であり、施設体系や保健福祉サービスの在り方、今後の障害者施策等について幅広く検討いただこうと、身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会障害福祉部会及び公衆衛生審議会精神保健部会にそれぞれ企画分科会を設置し、合同で審議を行うこととしています。

(2)検討項目案

○障害者施設体系の見直し
○障害者の地域生活支援のあり方
○障害者の権利擁護方策
○障害者保健福祉サービスのあり方
○障害者保健福祉方策の実施体制・人材確保方策
○介護保険制度等他制度との関わり

2 障害者プラン関係

 平成5年に策定された「障害者対策に関する新長期計画」の重点施策実施計画としてスタートした障害者プランは、9年度予算案で2年次目となり、14年度までの整備目標に向けて、具体的な施策の充実を図ることとしています。
 予算額は8年度の2025億円に比べ221億円増の2246億円、伸び率にして10.9パーセントの大幅増となっています。
 事業規模としては、グループホーム・福祉ホームを1751人分の増、授産施設・福祉工場については4921人分の増、在宅施策の要であるホームヘルパーは7500人増、ショートステイは382人分、デイサービスは68か所増やします。
 また、待機者の解消を目標としている身体障害者療護施設と精神薄弱者更生施設についてはそれぞれ1100人分、1903人分の増を図るほか、退院可能な患者の社会復帰を促進するため精神障害者生活訓練施設(授護寮)も780人分の増を計上しています。
 昨年度障害者プランの中で創設された障害者の生活等を支援する市町村障害者生活支援事業、障害児(者)地域療育等支援事業、精神障害者地域生活支援事業の3事業についてもそれぞれ実施箇所数を倍増するなど、別表のとおりの拡充を図ります。
 また、9年度予算の新規施策として次のことを実施します。

①身体障害者療護施設の通所利用の開設

 身体障害者療護施設(重度の障害のために常時の介護を必要とする者が入所する施設)の待機者であって、通所を希望する者及び現在療護施設の入所者であって、在宅での生活が可能な者に対し、通所利用の途を開きます。これには療護施設の既存スペースを利用するか、新たに通所部分の施設を整備するか、2つの方法があります。

②小規模身体障害者療護施設の創設

 身体障害者療護施設は、重度身体障害者更生援護施設に併設する場合(定員30~40人)、他の身体障害者更生援護施設等と複合化する場合(定員30~40人)及び特別養護老人ホームに併設する場合(定員10~20人)に限り、定員を引き下げてきましたが、障害者プランで待機者の解消を主眼として平成14年度までに2.5万人分の整備を目標とした趣旨も踏まえつつ、障害者がより身近な地域で施設機能を活用できるよう、定員を30人とした小規模身体障害者療護施設(単独型)を創設することとします。

③デイサービス事業の利用定員の引き下げ

 身近な地域で機能を活用するための方策として、デイサービス事業についても従来最低8人で実施していたものを、5人から実施できるようにします。

④ホームヘルプサービス事業

 本事業は、障害者プランでは平成14年度までに4万5000人(身体障害者、身体障害児、精神薄弱者、難病分)を上乗せすることとしており、平成9年度予算(案)では7500人分を計上することとしています。
 各都道府県においては、障害者のホームヘルプニーズが十分反映された制度の運用が、管下すべての市町村において図られるように、指導の徹底をお願いするとともに、要介護者のニーズにあったきめ細やかなサービスを効率的に提供する体制を整備するため、介護保険制度への移行を展望して、現行の「人件費補助方式」に加え、「事業費補助方式(サービス提供量に応じて補助する方式)」を導入することとし、この2つの方式のどちらかを市町村が選択する方式に変更することとしました。本方式への切り替え時期については、平成9年7月を予定しています。

⑤ガイドヘルパー養成研修事業の創設

 ガイドヘルパーについては、従来より身体障害者ホームヘルプサービス事業運営要綱等において、外出時の付き添いに関する必要な研修を受けることとされていて、その研修は各都道府県において実施されてきましたが、重度の視覚障害者や脳性まひ者等の全身性障害者が外出しようとするとき、付き添いのヘルパー(ガイドヘルパー)は重要な役割を担うこととなるので、ホームヘルパーの養成研修時に交通機関を利用する際の介助方法や、人混みでの安全な移動方法などの専門的な技術の習得に関する研修を併せて実施します。

3 保健福祉の基盤整備

 日常生活用具に盲人用信号感知器、補装具に簡易型電動車いすの取り入れを図るとともに、身体障害者自立支援事業、精神薄弱者通勤寮等運営事業、精神科救急医療システム整備事業などの充実を図ります。
 また、身体障害者ケアサービス体制整備支援モデル事業と、精神薄弱者ケアガイドライン試行事業を創設し、市町村等のケアマネジメント体制の整備を進めます。
 なお、精神障害者に対する各自治体で策定する「障害者計画」や精神障害に対する社会的な誤解、偏見の是正など地域精神保健福祉施策の充実を図ります。

4 社会参加の推進

 盲導犬の育成など「障害者の明るいくらし」促進事業を充実させるほか、平成10年3月に長野県で開催されるパラリンピック冬季競技大会の開催費、平成5年からスタートした「アジア太平洋障害者の十年」の中間年記念事業費などを新たに計上しています。

5 小規模作業所に対する助成

 小規模作業所は就労の機会が得難い在宅の重度障害者を対象に、1か所概ね5人以上が通所による軽作業等を行うところであって、その作業所に対する援護事業を早期に充実させるため、8年度には助成箇所数を484か所増したところであり、9年度も349か所と大幅な増を図ることとしています。
 なお、身体障害者、精神薄弱者、精神障害者の小規模作業所に係る地方単独分の財政措置として、平成8年度においては、標準団体当たり、都道府県3400万円、市町村430万円(精神障害者の小規模作業所は除く)が単位費用積算基礎に算入されており、平成9年度においても所要の改善措置が講じられる予定です。

6 重症心身障害児(者)通園事業

 本事業は、在宅の重症心身障害児(者)に対する機能訓練や生活指導などの療育を実施する場であることから、障害者プランにより計画的に整備することとしています。
 なお、事業の推進に当たっては、重症心身障害児(者)の療育の向上に資するために、特に、当該事業の都道府県における指導的役割を持つA型の設置について積極的に推進されるよう努めています。

7 平成9年度障害者施設の整備等について

 障害者施設の施設整備については、平成8年度を初年度とする障害者プランの2年次目として平成14年度末の整備目標に向け、その整備を着実に推進することとしていますが、施設整備費予算については従来の整備量に加えて約91億円、設備整備費予算についても従来の整備量に加えて約4億円を計上しているところです。

8 その他

 「障害者国際交流センター」(仮称)の建設整備に伴う基本・実施設計費が計上されたほか、障害者等保健福祉総合研究経費、感覚器障害研究経費、精神保健医療研究費などの研究経費や精神障害者の長期入院患者の療養のあり方に関する検討費を計上しています。

障害者プランの推進
区分 8年度予算 9年度予算 目標値
(平成14年度)
グループホーム・福祉ホーム 7,422人分 (+1,751)

 9,173人分

20,060人分
授産施設・福祉工場 45,874人分 (+4,921)

 50,795人分

67,570人分
重症心身障害児(者)等の通園事業 368カ所 (+92)

 460カ所

1,238カ所
精神障害者社会適応訓練事業(通院患者リハビリテーション) 3,984人分 (+214)

 4,198人分

5,280人分
精神障害者生活訓練施設(援護寮) 2,060人分 (+780)

 2,840人分

6,000人分
市町村障害者生活支援事業 40カ所 (+40)

 80カ所

690カ所
障害児(者)地域療育等支援事業 70カ所 (+70)

 140カ所

690カ所
精神障害者地域生活支援事業 47カ所 (+47)

 94カ所

650カ所
ホームヘルパー 8,000人増 (+7,500)

 15,500人増

45,300人増
ショートステイ 1,454人分 (+382)

 1,836人分

4,650人分
デイサービス 559カ所 (+68)

 627カ所

1,010カ所
身体障害者療護施設 18,069人分 (+1,100)

 19,169人分

25,000人分
精神薄弱者更生施設 86,393人分 (+1,903)

 88,296人分

95,600人分

8年度予算 2,025億円 → 9年度予算 2,246億円


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年5月号(第17巻 通巻190号)13頁~17頁