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列島縦断ネットワーキング

東京・知事と語ろう

―全国ろうあ者キャラバンゴールセレモニー

財団法人全日本ろうあ連盟

 財団法人全日本ろうあ連盟は、今年創立50周年を迎えます。連盟では今年6月に埼玉で開かれる記念大会に向けて、昨年からキャンペーン行事に取り組んできました。その中でも「知事と語ろう全国ろうあ者キャラバン」は、名前の通り全国の知事に面会し、ろうあ者の要望を訴えるもので、ろうあ連盟をはじめ、各都道府県の地域ろうあ協会がもっとも力を入れて行った行事でした。
 キャラバンは昨年6月に愛媛で開かれた第44回全国ろうあ者大会で、スタートを宣言。北海道→東北→北信越→東海→関東を回る北回りと、四国→九州→中国→近畿を回る南回りの2コースに分かれ、8月に北は北海道、南は愛媛から行動を開始しました。
 先頭を切った北海道では、2つのキャラバン隊を結成し、道内の支庁および主な市町村もくまなく回り、地域の聴覚障害者の存在や要望をアピール。他の都府県も駅前でパレードを行ったり、知事にミニ手話講習会を開いたり、一昨年話題をよんだテレビドラマ『星の金貨』のテーマソングを車から流しながら、市内をキャラバンカーが移動するなど、それぞれが工夫を凝らして取り組みました。
 すべての知事との面会は難しく、副知事や障害福祉課の課長と懇談を行ったところもありましたが、知事直筆の記念色紙はいただくことができ、また、この行事によって行政との心理的な距離を短くすることができたことは、ろうあ運動にとって大きな収穫となりました。

50年の意義と仲間との団結

 半年におよんだキャラバンは、今年の1月29日に全行程を終了。2月3日に東京都千代田区の日比谷公会堂で、ゴールセレモニーを行いました。当日は小雨のぱらつくあいにくの空模様でしたが、関東を中心に全国から当初予想していた人数の2倍、約1400人もの関係者が参加しました。
 セレモニーは、北回りと南回りの最終地になった埼玉と滋賀からのキャラバンカーのゴールで開幕。日比谷公園に到着したキャラバンカーを迎えた参加者の表情は、天気とは反対に晴れ晴れとしてうれしそう。両キャラバン隊の代表が、高田英一全日本ろうあ連盟理事長、安藤豊喜、河合洋祐副理事長に「ただいま到着しました」と宣言し、握手を交わしました。
 続いて日比谷公会堂内でキャラバンの報告集会が行われました。オープニングは和太鼓の響きに合わせ、全国の協会旗が入場。色とりどりの旗がずらりと並んだ舞台からは、全国のろうあ者の団結力の強さがひしと伝わり圧巻でした。そこに鐘や太鼓のお囃子にのって、阿波踊りやぬいぐるみの一団が登場し、舞台は一変にぎやかになりました。華やかな演出で参加者の気分が盛り上がったところで高田理事長が登場。キャラバン成功の喜びの挨拶を述べ、加々見隆内閣総理大臣官房参事官から橋本龍太郎首相の直筆の色紙を受け取りました。
 その後、滋賀、埼玉からのゴール宣言、全国8つの各ブロックの代表から、キャラバンの様子や成果についての報告、安藤副理事長から総括報告がありました。
 これらの合間には、東京の手話パフォーマンスグループ「きいろぐみ」が寸劇を披露。50年前の伊香保温泉での集会において全日ろうあ連盟が誕生した瞬間、立ち会い演説会への手話通訳設置運動、民法11条の改正、世界会議の成功など、連盟創立50年の歴史のなかで起こった大きな出来事がわかりやすく演じられました。これを見て参加者はあらためて50年間の運動の歴史の重みや意義を感じたのか、終始感慨深げな表情で見入っていました。

パレードでにぎやかにアピール

 午後からは参加者全員で、公会堂からJR東京駅近くの旧国鉄労働会館まで、約1.6キロの道のりをパレードしました。
 パトカーを先頭に、参加者は『いつでもどこでも手話通訳を』『テレビ番組に字幕・手話を』『重複障害者に働く場を』などと書いたプラカードや横段幕を持って元気に行進。舞台を盛り上げた阿波踊りやぬいぐるみたちも加わって、通行人に明るくにぎやかにろうあ者の要望をアピールしました。
 パレード終了後、高田理事長をはじめとする連盟の代表者は、厚生省、自治省、労働省、文部省、郵政省などの省庁を訪問し、政務次官をはじめ、関係部署の担当者と懇談。要望書を手渡し、聴覚障害者への理解と支援を訴えました。
 一般参加者はここで解散となりましたが、丸の内、八重洲、数寄屋橋の3か所で、有志によるアジアろう者友好基金街頭カンパとビラまきを行いました。このカンパは、キャンペーン活動の1つとして組み込まれているもので、集まったお金はアジア各国の聴覚障害者の生活や教育および福祉向上に役立てていきます。
 全日本ろうあ連盟は、アジアのろう者同士の連帯を強めることを早急な課題として掲げており、基金の設立がその一助となることを強く願っています。基金の最終目標額は1億円ですが、6月の大会までに2500万円集めることを目標に掲げ、現在各地で熱心なカンパ活動に取り組んでいます。セレモニー当日は、平日の昼間でやや人通りは少なめでしたが、1時間で10万6064円のカンパが集まりました。
 全国で繰り広げられたキャラバン、東京でのゴールセレモニーは、行政や市民に幅広く聴覚障害者の問題をアピールしただけでなく、ろうあ者にとってもこれまでの運動の意義や、これからの方向性、仲間との連帯の大切さを見直す非常に良い機会となりました。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年5月号(第17巻 通巻190号)63頁~65頁