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列島縦断ネットワーキング

福岡・福岡県障害者協議会の設立

藤田博久

設立までの経緯

 福岡県障害者協議会(略称FD)は、1996年11月27日に発足した。
 設立の端緒は、92年、全国一斉に展開された「国連障害者の十年最終年記念事業・市町村網の目キャラバン」の福岡における反省会での「せっかくつながりができたのだから、このままで終わらせたくない」という障害者団体からの発言であった。
 その後、障害者基本法、市町村障害者計画、障害者プランなどをテーマとした年1回のつどいを県社協主催で開催し、組織化の火種を絶やさずにかろうじてつないでいるという状態であったが、96年のつどいでは、12の障害者団体と県社協で「市町村障害者計画の策定推進に向けて」と題するアピールを行い、この中で、「県内の障害者福祉関係者が幅広く結集し、日常的に連携し合える組織づくりをめざしたい」という意思表明を行った。
 このアピールを受け、96年5月に障害者団体組織化推進会議の名称で実務者会議(障害者団体・障害者施設協議会・障害児学校・社協・ボラ連・研究者からなる)を起こし、県域での障害種別を超えた横断的組織の必要性についての考えかた等をまとめた討議資料、会則、組織化の方法についての案を練り、8月、障害者団体と県社協の代表者からなる設立準備会で加入の呼びかけを行い、設立に至った。

活動内容

 FDは、福岡県の障害者施策と運動をリードする組織となることをめざしているが、当面の取り組み課題は、「市町村障害者計画の策定と見直し」である。現在、身体障害・知的障害・精神障害・てんかん・自閉症・難病をはじめとする25の障害者団体(30団体からなる福岡市の連合組織を含む)、13の作業所・施設、6つの関係団体(病院・社協など)と、個人の会員から成り、会員数は約6万8300人である。この一定規模の結集を可能としているのは「市町村障害者計画」という共通のテーマであり、これへの取り組みを活動の中心に据えている。活動内容の概要は次のとおりである。

1 基幹会議の開催

(1) 政策・企画合同部会

 障害者団体の事務局長クラスを中心に研究者等を加え各部会10名からなるが、1月から3月までは月2回、4月以降は原則として月1回の定例会としており、組織の核である。部会員以外でも、会員であれば参加は自由としている。

(2) 常任委員会

 会務の執行を決定する場。

(3) 協議員総会

 基本的事項を決議する場。

2 機関誌「インテグレーションFD」の発行

 発行部数1500部の隔月発行であり、会員をはじめ県内外の関係機関・団体等(県内は、市町村・福祉事務所・市町村社協・障害児者施設・障害児学校)に配布している。

3 障害者施策推進セミナーの開催

 JD(日本障害者協議会)のメンバーによる講演や甲賀郡障害者生活支援センター(滋賀県)の実践報告、県内障害者団体や施設・社協・行政のメンバーによるパネルディスカッションを、約300名の参加者を得て2か所で開催したが、今後は障害保健福祉圏を単位とした地域集会を実施の予定である。

4 要望活動の実施

 現在までに、要望書としては、「障害者のための施策に関する基本的な計画に係る要望について」、「福岡県障害者プラン策定のための実態調査に係る要望について」を県民生部長に対して提出し、意見書としては、「福岡県障害者プラン(仮称)策定に係る実態調査について―提案の調査票をベースとした意見」を県障害福祉課に提出している。
 設立の呼びかけ段階から集約・検討を重ねてきた310項目からなる第一次統一要求書を軸としたFDとしては初めての本格的要望活動を、97年度からスタートさせることとなる。

5 福岡県障害者計画(カウンタープラン)の策定と活用

 前述の第一次統一要求書を下敷きとし、県及び市町村障害者計画策定・見直しに向けての提案事項をまとめあげる。この計画はFDとしての障害者計画策定マニュアルでもあり、次の柱からなる。①実態把握と公開、②障害者計画策定委員会及び地方障害者施策推進協議会、③策定指針、④マネージメントの窓口、⑤課題解決のための具体的な取り組み〔A乳幼児期、B学齢期、C青年・成人期、D高齢期、E基本的課題(a交通・通信情報 b住宅 c介護 d障害判定 e医療福祉 f施設福祉 g福祉機器 h防災対策 i行政手続サービス j地域生活支援 k所得保障 lその他)〕。
 これらが、市町村障害者計画の策定・見直しを進めるFDとしての最大の戦略である。

今後の課題

 FDが発足して半年が経過した。この間、市町村障害者計画の策定はわずかながら前進してはいるが、内容も手法も相も変わらずきわめて不十分としか言いようがない。具体的政策提言活動を急いではいるが、シンクタンクである政策・企画部会も事務局を預かる県社協スタッフも、目一杯の状態である。
 95年3月に提示された「福岡県障害者長期計画」の重点施策計画として、数値目標や具体的な方向を明示するプランの策定作業が、97年度に行われる。発足して半年あまりの実績しか持ち合わせていないが、これへのアプローチは大きな正念場であり、早々に研究運動組織としての真価が問われることとなる。
 じっくりと構えて取り組みを進める時間的余裕などあるはずもなく、とにかく突っ走るしかないのである。
 こまかく言えば課題はいろいろとある。しかし、FDを支える主力メンバーと事務局を担当する県社協スタッフの気力と体力がどこまで続くのかにすべてがかかっている。

(ふじたひろひさ 福岡県社会福祉協議会地域課長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年8月号(第17巻 通巻193号)63頁~65頁