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気になるカタカナ

コーヒーブレイク/カタカナ語余話

小川 孟

 コーヒーブレイクとは、コーヒーまたはお茶などを飲みながらひとやすみという意味ですから、今回は肩の凝らない茶飲み話ということになります。
 さて、“カタカナが気になる”のは本欄だけではないようです。私の地元の山陽新聞がカタカナ語をテーマにした読者の意見を特集しました(平成9年6月22日)。特集にいわく、「カタカナ語は子どもやお年寄りに分かりにくいとして、小泉厚生大臣は公式文書からガイドライン、マニュアル、フォローアップなど難解なカタカナ語の追放を指示しましたが、カタカナ語なしでは生活できないほど浸透しているのも事実です。…」
 私も年寄りの一員ですからワケの分からないカタカナの氾濫には往生していますが、“追放を指示した”のが本当であればコトはおだやかでありません。戦時中に、野球用語までカタカナ禁止になったのを思い出すといえば笑われるでしょうが、試しにストライク、ボールやセーフ、アウトを日本語にしてみてはいかがですか。野球中継が楽しくなること請け合いです。
 いまどきこれはジョーダンと思ってはみたものの、指示された担当者がマジメに追放語の一覧表をつくれば、リハビリテーションやノーマライゼーションは字数だけでも真っ先に槍玉に上がるでしょう。この欄に登場したカタカナも無事ではいられません。
 前述の特集によれば、熟年層に戸惑いが見られ、若者は「日本語に訳すと微妙にニュアンスが違ってくる」「軽快感やスマートさが魅力」という意見が目立ちました。つまるところ「難解さ」の線引きはむずかしい、ということのようです。公式文書の難解さはカタカナ語よりもその日本語にあると思うのですが、どうでしょうか。
 とはいっても、安易にカタカナ語を多用する傾向を支持するわけではありません。現在、私たちが使っている法律や科学・技術の分野における日本語の多くは、明治維新以後20年くらいの間に先人たちがヨーロッパ語から置きかえたそうですから、宗教、哲学、義務などのすぐれた創作の例から学ぶ努力は必要だと思います。個人的には中国語の「電脳」などは好みの漢字です。
 ところで私たちに身近なリハビリテーションですが、手元の国語辞典を開いてみたら、ちゃんとカタカナ語で載っているではありませんか。でも、その解釈はあまりに一面的で、そのまま「リハビリ」というカタカナ語に変身してひとり歩きしていると思えば、やっぱりカタカナは気になります。

(おがわはじめ 津山みのり学園顧問)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年10月号(第17巻 通巻195号)66頁