音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

特集/地域での暮らしを支える相談員

提言

相談員制度を考える

村谷昌弘

 1966年、昭和41年2月、身体障害者福祉法によって置かれている身体障害者福祉審議会は委員を臨時に増員し、ほぼ1年をかけて福祉法の抜本改正を図って審議し答申した。私も当時、日身連副会長の黒木猛俊君とともに同席し審議に加わっていた。
 翌42年、身体障害者福祉法は大改正され今日の障害者福祉法の体系のもとになったと私は思っている。
 この改正の中で挙げられたのが身体障害者家庭奉仕員と身体障害者相談員制度の創設であった。どちらも今年で30年経過したわけだ。
 相談員は、身体障害者の増加に平行し、身体障害者200人当たり1人ずつとなるよう図られ年々増員されている。平成3年11月の調査によると身体障害者総数は272万2000人あり、相談員数は平成9年現在、全国で1万5640人だといわれている。
 相談員は地域で直接障害者本人に、また家族らに触れ、障害者施策の第一線に立って活動しておられ、私は本誌上を借りて敬意と感謝の意を表したい。私は現在の相談員制度に私なりに感ずるところ、また私が所属する日身連、日盲連の期待をもって相談員制度の改定、業務の拡充を求め次のように述べたい。

 施策の対象となる障害者の範囲が広くなり、定義による障害の種別が多種多様化し、障害者の実体やニーズは複雑となってきた。行政の中からは施策は障害種別を超えて、と総合性を強調されているむきもある。確かに人間性としては障害があろうとなかろうと分けられるものではない。しかし、障害者に対する施策となると医療に当たる医者がそうであるように、障害の種別、特性に対応できる専門知識と施策は無視できない。相談員は身体障害者と精神薄弱者を合体させ、担当させようともいっている。相談員を単純に合体させるのではなく、相談員全体にもいえることだが、総合性と専門性がうまくかみあえるよう体制を整えていただきたい。
 障害者が多種多様化し、施策も多彩となってきたので相談員は研鑽に努めていただきたい。
 なお、要望したいことは、次のとおりである。
① 相談員は民生委員と同様に厚生大臣よりの委嘱にされたい。
 相談の処理が何から何までもとすべてに立入れるものではないが、現状の多くは福祉事務所や更生相談所等関係機関の紹介にとどまっている。一例として、世帯更生資金等の手続きにあっては、民生委員を介して福祉事務所または地域社会福祉協議会に申請するとなっている。相談員が民生委員を介さずとも直接行い得るよう、また福祉事務所、地域社会福祉協議会等関係機関に障害者ともども立会えるか、意見具申ができるようにされたい。
② 相談員手当を少なくとも月額1万円以上に増やされたい。
 手当の現状は筆墨の代価にも当たらない程だ。いかに奉仕的であっても相談の用件によっては電話等の通信費のほか、広域的な行動等による旅費・交通費も要する。相談員活動をより活発にするためにも手当は増やされるべきであろう。
 政府の平成10年度予算案編成の方針では、手当が身体障害者福祉法による国の予算から転じて地方交付金に一括され、都道府県もしくは政令指定都市財政から給付されるようだが、それでは不安定に思われる。
③ 相談員に障害者手帳交付者名簿を開示されたい。
 手帳交付者名簿の開示は、プライバシーや守秘義務の問題があるが、相談員は少なくとも管轄地域内、障害者の所在や実体を常に認識しておかなくてはならない。それが相談機能を高めるもととなろう。
④ 相談員の全国体制化を保障されたい。
 相談員制はもともと全国に一貫した福祉法案、施策とのかかわりが多く、関係行政機関等を含む相談事例、情報等の交換、研修等が有機的に行い得るよう地域の組織化とともに、全国的に組織化されることが望ましい。
⑤ 相談員センターの設置を図られたい。
 前項の組織化と平行し、相談員センターを県単位及び県下いくつかの地域に設置されたい。場合によっては、更生相談所か、障害者福祉センター、地域ではB型センターに併設も可とし、相談員の名簿登録等によって配備を明らかにし、相談員相互の連絡及び相談事例等記録の収集、収録等により、相談員の機能をいちだんと高められたい。
 付け加えると、阪神方面の震災からにわかに障害者の避難救助、防災、危機管理が問題化してきた。こうした場合にも相談員を含む管理機関等へ障害者の登録制があってもよいのではないかと私は登録制をおすすめするとともに、非常の際、いち早く障害者の避難救助ができる体制整備を求めたい。

(むらたにまさひろ 社会福祉法人日本盲人会連合会長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年11月号(第17巻 通巻196号)13頁・14頁