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特集/地域での暮らしを支える相談員

生活支援センターの相談活動から

上野容子

 今年度、(福)豊芯会は東京都のモデル事業として地域生活支援センター事業を東京都豊島区で開始した。主な事業内容は、要綱では、①生活支援事業、②相談事業、③地域交流事業、④その他の事業となっている。そのうちの②について、開始して半年の現況と私見を述べてみたい。
 相談の対応方法は、電話と来所による面接だが、その内容は個々さまざまであることは言うまでもない。時間も個人差があり「話を聞いてもらうだけで気分が安らぐ」という人から、家族関係、医療の問題が複雑にからみ合っている人など、受話器をあげるまで、または、その人と顔を合わせるまで、その内容がこちらには全く見えないというのが、特徴である。
 今年の4月から8月までの相談内容別の件数を挙げる(表)。

表 相談内容別の件数
精神保健 50
経済 29
就労 19
住居 14
ADL 44
年金などの手続き 14
対人関係 33
家族関係 49
その他 26
(内容分類は、当方のやり方であり、都から指定されているわけではない)

 また、ボランティア希望者の中で、カウンセリングの学習をしてきた人たちから相談活動への参加希望があったが、生活支援センターとしては、まず④その他の事業にかかわってもらうことにした。そこで、夕方に行っている少人数の当事者、ボランティアなどいろいろな立場の人で構成しているグループ活動や誰もが気軽に居られるオープンスペースへの参加をお願いした。当事者のいろいろな場面における存在そのもの、一病者のAさんでなく、Aさんそのものを理解してほしかったからである。
 我々の相談活動は、相談に応じ、それをその人の生活向上のための支援につなげていくところが重要である。その人との相談・面接をとおし、その人を変えることではない。その人の生活環境(人的資源、法的資源も含む)の改善方法を当事者と共に考え、実行していくことによって、その人らしい生活ができ、その人らしさ(主体性)を発揮し、一市民として地域の中で暮らしていけるよう支援することを目標に相談活動がある。これを忘れてはならない。それが福祉的かかわりであると思う。

(うえのようこ (福)豊芯会地域生活支援センター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年11月号(第17巻 通巻196号)22頁