特集/地域での暮らしを支える相談員
自立生活センターとしての相談活動
光岡芳晶
自立生活センターは、「障害者自身が福祉サービスの提供者として、同じ障害をもつ人たちの自立を支援する」というこれまでの常識を破る理念の基に、1986年、日本でのその第1号が東京都八王子市で生まれて以来全国に広がり、各地で障害をもつ人たちの地域での自立生活を可能にしてきました。
私たち自立応援センターSTEPは、1996年7月、山陰地方で初めての自立生活センターとして鳥取県米子市に誕生し、現在4年目を迎えています。取り組んでいる事業としては次のとおりで、県西部の障害をもつ人たち、特に重度と呼ばれる人たちの自立・在宅生活を支援しています。
①介助者派遣、②移送サービス、③自立生活プログラム、④各種相談、⑤権利擁護、⑥啓発活動
これらの事業はどれも欠くことのできないものですが、その中で今回のテーマである相談活動は、私たちの活動の基本と考えて取り組んでいます。
自立生活センターとしては当然のことですが、日々の相談を受けるのは障害者スタッフの役割で、担当者はさまざまな情報と当事者としての生活の“キャリア”を活かし、文字どおり当事者の立場に立った対応をしています。
さて、相談内容としては、施設や家族からの自立の方法について、介助や交通アクセス、行政の福祉制度、障害児の進路についてなど多様です。相談者はもちろん障害をもつ人自身が大半ですが、親、そして最近では行政の側の人や病院のソーシャルワーカーなどからの相談も受けるようになっています。
そんな相談に対応する際の、私たちの基本的な考えについて書いてみます。
まず第1に、障害をもつ当事者からの相談の場合、施設からの自立について、あるいは外出についてでも、はじめにその人が本当に何を望んでいるのかをきちっと掴まなければなりません。施設や親元での生活が長い重度の障害をもつ人たちの中には、施設あるいは家族の都合に合わせて生活してきた人が多く、自分がどうしたいのかよくわからない、または言えないということがあって、じっくり時間をかけて聞くことが必要と言えます。
その上で、例えば、「一人暮らしを始めて朝、晩の介助者がいなくて困っているんですが…」という相談の場合、対応としては、まず私たちが行っている介助者派遣を利用してもらうことで支援します。ただ介助者派遣の継続的な利用は費用の負担が大きく、そもそも生活する上での必要不可欠な介護は公的に保障されることがだれもがもっている基本的な権利だと思いますので、ホームヘルパー制度の利用などの話し合いについても権利擁護として支援しています。
公営住宅などへの入居や公共交通機関の利用などについても同様に支援してきました。
おそらく相談活動とは、単に既存の行政の制度や、利用できる住宅や交通機関などを紹介するというような情報提供だけでは不十分だと私たちは考えています。重度の障害をもつ人たちの自立や社会参加ということがほとんど考えられていない中で、私たちに寄せられる相談はほとんどの場合、既存の行政の制度やサービスではカバーできていないケースです。そんなさまざまな相談を受ける側として、私たちの介助者派遣や移送サービスなどのサービスを利用してもらう一方で、既存のサービスを拡大し、必要なものについては新しく創り出せる、そんな力になりたいと考えています。
これからも、社会から、そして地域からの新鮮な情報を仕入れて、当事者から信頼される相談活動を続けていきたいと思っています。
(みつおかよしあき 自立応援センターSTEP)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年11月号(第17巻 通巻196号)25頁・26頁