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海外自立生活新事情

カリフォルニア州における障害者のグループホーム(その2)

定藤丈弘

 本誌5月号でも、カリフォルニア州の発達障害者のグループホーム(以下GHと略す)制度の内容や実態および財政状況などについて紹介した。同号で記述したように、GHは、毎日の生活で何らかの支援が必要な障害児者のための日常的な医療的ケアを必要としない居住サービスである。同州では州の発達障害局の管理下にある21の地域センター(民間の非営利機構)が、GHの運営を希望し、州の定めるサービス運営ライセンスをもった民間団体(会社など)とサービス購入契約を結ぶことによって、その民間団体にGHを運営させている。その運営費は連邦のSSIを除き、すべて州から地域センターを経由して支給されている。
 そしてGHは、障害の程度による生活の自己管理能力、日常生活動作自立の制約の程度、あるいは行動障害の程度、およびそれに伴う生活支援ニーズの程度などによって、レベル1から4までの4段階に分類されており、したがって各々の運営費用やケアスタッフの人数も異なっている。利用者の定員は原則として6名までとされるが、実際には6名以上の大規模GHもかなり存在している(その数的状況は本誌8月号を参照)。GHは州法であるランターマン法の施行規則第17編に規定されている。今回は第17編に規定されているGH制度の運営に関する全体的概要を紹介したいと思う。

グループホームのサービスレベル

 前述したように、GHは4レベルに分類されるが、各レベルの基本的な職員の配置は、生活支援ニーズの程度などによって異なる。たとえばレベル2では利用者6名までに1人の直接介護職員がつき、レベル3、4A、4Bでは利用者3名までに1人の職員、レベル4C、4D、4Eでは2名までに1人の職員、最重度を対象とするレベル4F、4G、4H、4Iでは利用者1名に1人の職員が配置される。これに加えて、多人数が利用するGHは、そのサービスレベルに基づいて、表のように利用者に対する追加の週直接介護職員時間の累積時間の提供を義務づけられる。なお、直接介護時間に加えて、プログラム作成機能(データ収集と分析、職員会議、利用者会議などの補助的活動)の時間配分や、レベル4のGHではコンサルタント時間数も定められている。

表 サービスレベルごとの追加直接介護職員時間
    増加利用者1人当たりの週間追加時間数
サービスレベル 1” 2” 3” 4” 5” 6” 7”以上

基本職員配置レベル

12

基本職員配置レベル

19 19 19
4A

基本職員配置レベル

12 21 21 21
4B

基本職員配置レベル

24 24 24 24
4C

基本職員配置レベル

27 27 27 27
4D

基本職員配置レベル

18 30 30 30 30
4E

基本職員配置レベル

30 34 34 34 34
4F 基本職員配置レベル 38 38 38 38 38
4G 基本職員配置レベル 12 42 42 42 42 42
4H 基本職員配置レベル 22 47 47 47 47 47
4I 基本職員配置レベル 36 54 54 54 54 54

 ”利用者数


プログラム計画

 レベル2、3、4の創設運営の許可申請をする各GHは、ノーマライゼーション理念をベースとしたプログラム計画書の提出を求められる。そのプログラム計画には次の7つが含まれねばならない。①GH組織図、②目的、利用者、提供すべきサービスおよびサービス利用者の期待されるサービス成果の記述、③年齢範囲、性別、歩行状態、医療状態、自助能力、および行動特質などGHがサービス利用者の特徴を識別する基準、④GH職員によって作成されるプログラム調整機能の記述、⑤GH内での各職員の地位と資格、職務内容の記述、⑥職員勤務体制の例、⑦職員訓練計画。
 これに加えて、各レベルによって計画内容が追加される。例えばレベル4の許可申請に際しては、次のような追加がある。①自助能力や日常生活動作に著しい制約、あるいは重度の行動障害をもつ利用者の可能性を高めるために計画されるサービスの記録、②コンサルタントの資格、時間および任務、③希望のサービス成果を達成するためにとられる指導方法と記述、④個別プログラムプラン(IPP)目標の達成度や利用者の成長度を測定する方法。
 なお、GHへの入居希望者に対して、地域センターはその障害に適したレベルのGHを提供しなければならない。また、GH利用者が別のGHへの移転の援助を要請した時には、利用者のIPP策定のために結成された学際的チーム(IDチーム)は利用者のニーズに適した生活の場を決定しなければならない。それらが決定されれば、地域センターは移転先のGH管理者に通知書を送付しなければならない。そして地域センターのケースマネージャーであるサービス調整者はGHの入居前訪問の機会を利用者に助言する必要があり、利用者の入居が許可されれば、管理者とサービス調整者はそれぞれ必要な入居手続きを進める一方、各センターは各利用者ごとに入居契約を作成する必要がある。

利用者サービス

 サービス調整者は利用者が入居して30日以内に、IDチームとともに利用者のIPP目標の見直しを求められる。IPPには、利用者のサービスニーズに含まれるGHから提供されるべきサービスのタイプと量の決定や、IPPを履行するのに必要で適当なサービスレベルなどが含まれる必要がある。そしてすべてのサービスレベルの管理者は、GHが責任あるプログラム計画と利用者IPP目標に一貫したサービスの提供を義務づけられている。
 各レベルのGHの管理者は利用者の生活状況などを記録し、それを保管する義務がある。レベル2、3の各GHの管理者は利用者一人ひとりのIPP目標の達成度や利用者の成長度について半年ごとに報告書を作成し、それを保管する義務がある。レベル4のGHの管理者は上記の事柄について3か月ごとに報告書を作成して保管する義務と、3か月終了後30日以内にサービス調整者に同報告書を提出する義務がある。
 さらに、利用者が自然死以外の死や虐待、無視の疑いによって重い身体的障害を受けるなどの緊急的問題の通知を地域センターが受けた後、2労働日以内に電話で発達障害部の人権事務所に通知し、その後10労働日以内に今後対応するための行動計画を同部に提出し、部から追加情報を求められた時はその30日以内に部の人権事務所に書面で情報を提出する義務がある。

職員

 各レベルの管理者は、GHの職員訓練計画書を作成、実施、保管する義務もある。その計画には直接介護職員のための現場オリエンテーション、職場適応訓練および教育要件の継続が含まれる。管理者はその資格要件として、プログラム計画の中で述べられている利用者サービスや、利用者の権利、健康、安全および社会的・物理的統合を推進して、障害をもつ利用者の生活を支援する義務を負い、各レベルごとにそれぞれ障害者支援に関する一定のキャリアや一定期間の継続教育の受講を求められている。
 新規採用の直接介護職員は、GHのプログラム計画、利用者のIPP、権利規則、処方箋についての利用者への援助、防火管理を含む健康と緊急時の対策、前述した緊急的問題の識別と報告、および利用者の虐待の識別と報告についての現場オリエンテーションを受ける義務がある。また利用者のIPPの履行に必要な職場適応訓練を受講しなければならない。そして各レベルごとにそれぞれ一定期間の継続教育の受講を義務づけられている。

グループホームサービスの質の保障に関する評価

 地域センターは各レベルのGHが確実に規則を遵守するために、サービスの質の保障(Quality Assurance ; 以下QAと略す)計画を策定、実施、保管する義務をもっている。それには次のような内容が含まれる。①各GHが最低3年ごとに1回確実に評価される評価スケジュール、②QA評価チームの構成、③GHが利用者のIPP目標の実施を点検するためにサービス調整者が使うべき方法、④GHのQAを点検するために施設連絡者によって使用されるべき方法、⑤これらの規則についての精通およびQA評価過程の概要を含むQA評価に参加する人に提供されるべき訓練の記述。
 以上のようにGHサービスの質の保障を高めるために、その評価がさまざまな担当者によって実施されている。まず、ケースマネージャーであるサービス調整者は、各レベルの管理者と利用者に、少なくとも半年に1回のペースでIPP目標の達成度や利用者の成長度を評価するためにGHで面接する義務がある。利用者が特別な健康管理を必要とする子どもの場合は、上記の評価のために3か月に1回のペースで管理者と利用者に面接する義務を負っている。
 また、サービス調整者はGHサービスの質を評価するために次のような業務を担当している。①利用者の記録、3か月、半年ごとの報告書の点検と利用者のIPP目標の実施状況を記述した書類の点検、②利用者の現金、個人的財産および貴重品に関するGHの記録および出納簿の点検、③利用者のサービスニーズの変化、およびこの変化に応じてとられた活動や、IPPに関連するサービス提供についての評価などを記述したGHのサービス報告書の編集。
 次に、地域センターは各レベルのGHの施設連絡者を選任する。選任された施設連絡者はGHサービスを評価するために次のような業務を行う。①毎年各GHへの最低1回の訪問、②承認サービスレベル要件に従う職員時間表の点検、③GH職員の訓練ファイルの点検、④利用者記録の全部を集め、そこでの20%の無作為抽出サンプルの点検、⑤居住サービス提供者の土地、建物およびサービスの点検。
 次にサービスの質的保障評価チームをつくり、GHのQA評価を行う。各地域センターはQA計画を実施するためにQA調整者を選任し、調整者は2名以上から成る評価チームを組織化し、地域センターの職員をチームの代表に選ぶ。そこで評価チームは次のようなQA評価を行う。①GHと地域センターの両方でGHの記録を点検する、②GHと地域センターの両方から無作為に選んだ利用者の記録と個人的、付随的な手当の管理を点検する、③定期的な利用者の日常活動の観察。そして評価チームは活動後30日以内に管理者に評価結果を提出し、それを参考にしたGH運営を行うように要請する。
 以上のように、カリフォルニア州のGH施行規則では、GHサービスの質の評価を極めて重視しているのである。

改善行動計画と罰則

 GHは少人数であるから、状況次第では、一層深刻な人権侵害も起こりうる可能性がある。そこでカリフォルニア州のGH施行規則ではGH利用者の人権侵害を防ぎ、解決するために、さまざまな権利擁護のシステム化を図っている。

(1) 緊急性のある危険な状態への対応

 まず地域センターは、次のような緊急の危険状態が報告された場合は、直ちに調査に入らなければならない。①生命を脅かす構造的状態、②利用者の虐待の疑惑または陳述、③IPP目標や権利の放棄がなされたり、GH内で直接の生活的・支援的管理がなされていない利用者、④利用者に医療的に指示された特別食を提供するのがうまくいかなかった状態、⑤本人または他人の生命を脅かす個人の感情的な攻撃的または暴行的行動の存在。
 そして地域センターは利用者の権利擁護のために次のような対応を義務づけられている。
 ①人権侵害の実態把握調査のために事前の通知をして、訪問の目的が妨害されたと地域センターが判断した時は、地域センターは当局に緊急の危険状態を確証するためにGHの予告なしの立ち入り調査を行わせる義務がある。
 ②利用者の虐待が申し立てられた場合には、地域センターは、(イ)利用者の虐待に関するいかなる申し立てでも適当な保護サービス機関へ直ちに転送する、(ロ)依頼があれば調査機関に協力する。
 ③緊急の危険状態が存在することが確証された場合、地域センターは直ちに次の行動をとる必要がある。(イ)管理者と面接をして緊急の危険をつくり上げた状況を記録すること、(ロ)社会サービス部のGH免許を制定する地方事務所に緊急の危険状態を通知すること、(ハ)同状態の確証後24時間以内にその危険が改善されるかどうかを判定する義務があること。24時間以内に改善されない時は、地域センターは利用者を直ちに当該GHから他の場所に移動させなければならないし、24時間以内に改善して、利用者の安全が確保された時は地域センターは緊急の危険の改善が行われたことを確証する義務がある。
 ④地域センターは緊急の危険へのすべての対応行動を記録する義務がある。

(2) 実質的な人権侵害や不当な措置への対応

 さらに、地域センターが対応を求められる人権問題として、次のような実質的な人権侵害や不当な措置があげられる。
 ①緊急の危険状態には入らないが、利用者の健康および安全に脅威を及ぼす状態、②GHの承認サービスレベルにより必要とされる直接介護職員時間より少ない時間の提供、③利用者の権利の違反、④IPPに明記されている利用者のサービス提供の不履行、⑤利用者の入居契約条件の不履行、⑥利用者の現金、個人的財産、および貴重品の取り扱いの欠陥または不規則、⑦管理者および職員の資格や訓練の要件に合致しない状態、⑧レベル4のGHで、プログラム計画に明記されている教育方法および技術の使用の不履行、⑨レベル4のGHで、プログラム計画に明記されているIPP目標の達成度や利用者の成長度に関する測定方法の不履行。
 これらの問題に対して、次のような対応がとられる必要がある。
 (1)地域センターはこれらの問題の報告を受けた時や発見した時、事前の調査通知をしても訪問の目的が妨害されたと判断したならば、当局をGHに事前通告なしに立ち入り調査させる義務がある。
 (2)地域センターと管理者は、これらの問題を把握し、確証後10労働日以内に改善行動計画を作成するための会合を開く。同計画には、これらの問題を把握するための制定法、規則、IPP、または入居契約要件の引用、およびこれらの事柄に対する訴訟の権利を管理者に通知することや、管理者によるこれらの問題を改善する方法が記述される必要がある。
 これらの問題の改善は、基本的には改善計画作成後30日以内に実施されなければならない。また、改善の実現が計画作成後30日以上かかる時は、改善計画ではこれらの問題改善に向けて特別な方策が行われる中間日を明記しなければならず、最高6か月以内での改善が義務づけられる。
 (3)施設連絡者は改善計画を実現するために管理者によってとられた対策の点検および記録のためにGHを訪問し、明記された期日内に改善されていないこれらの問題を記述する義務がある。
 (4)罰則の適用。地域センターは次のような場合にはGHに罰則を適用する義務がある。①これらの問題が改善計画に明記されている期日までに改善されない場合、②同一GH内で1年以内にこれらの問題が2件発見された場合。
 地域センターは、例えばこれらの問題が、基本的な職員配置レベル、またはGHによって用意される追加の直接介護職員時間に関係するのであれば、GHによって実際に用意できる職員の全時間に見合うレベルの許可サービスレベルに落とす措置をとる。これ以外の問題が発見された場合は、地域センターは利用者に当該GHからの移転を勧めたり、GHが改善計画に従うまでは利用者をそのGHに置かないように努める。
 その他、第17編では記録保管やGH控訴過程も定められている。記録には居住サービス記録として利用者個人のファイルとGHファイルがあり、地域センター記録の規定もある。保管を義務づけられる地域センター記録の内容としては、次のようなものがあげられる。①GHサービスレベルの承認、②サービスの質的保障の評価、③利用者のIPP目標の地域センターによる監視、④GH連絡者の(QA)監視、⑤緊急的問題の報告書、⑥緊急の危険の発見、⑦実質的人権侵害と不当な措置、⑧改善行動計画、⑨罰則、⑩GH控訴、⑪レベル4のGHからの3か月ごとの報告書。

終わりに

 以上のように、カリフォルニア州法でのGH施行規定は多岐にわたっている。最重度級の障害者が利用可能な体制が整備されているし、特にGH利用者の権利擁護のためにさまざまな規定が盛り込まれている。
 権利擁護のためには、日常の生活処遇の向上が何よりも必要となるが、第17編では利用者個々の生活ニーズに基づく個別的処遇の年間計画であるIPP策定を義務づけ、一人ひとりの個別的な処遇を重視する一方、IPP目標の達成度や利用者の成長度の測定を含むGHサービスの質的保障(QA)に関する評価を、サービス調整者や施設連絡者および複数人数から成るサービス評価チームによって行うことを義務づけるなど、利用者の評価を充実させて人権保障を目指している。
 利用者のさまざまな人権侵害問題に対しては、緊急の危険状態と実質的な人権問題と不当な措置に区別して罰則規定を含め、それぞれ厳密な対応措置を規定するなど、いわゆる権利擁護のシステム化を図る規定を設けている。わが国の貧しいGHの処遇、運営や入所施設の処遇、運営改善のために、極めて示唆に富む規則集であるということができよう。 ランターマン法の施行規則第17編は、西宮市社会福祉協議会の重度肢体不自由者通所施設青葉園の親の会である青葉福祉会の前事務局長の田川康吾氏が全訳されたものを、田川氏のご好意により借用して、本稿を執筆した。最後に、田川氏に心からお礼を申しあげる。

(さだとうたけひろ 大阪府立大学)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年11月号(第17巻 通巻196号)52頁~57頁