特集/もう1つのオリンピック 日本の3月、パラリンピック。
選手にインタビュー
土田和歌子さん
東京都出身、東京都多摩教育事務所勤務
出場種目 : アイススレッジスピードレース
―スレッジレースはいつから始められたのですか。
リレハンメルパラリンピックの3か月前の1993年11月に、長野でパラリンピックが開催されることが決まって、アイススレッジを取り入れるということで、長野県が主催でアイススレッジの講習会を開いたんです。たまたまそれに遊び心で参加したのがきっかけです。
そこに講師で来ていたノルウェーの指導員の方から、リレハンメルのパラリンピックがあるんだけれど、やってみないかとお話を受けました。
―土田さんはお仕事をされているので、練習の時間量が決まってしまうと思います。もっと練習の時間があればと思うことはありますか。
それはありますが、生活を安定させることが一番ですから。逆に、いい方向に考えて、仕事をもっているからメリハリをもって練習の時間がもてるんじゃないか、と考えています。でも本当にしんどくなると、何にも考えずに練習だけに集中したいと思うこともあります。
―リレハンメル大会に続いて今回は2回目の出場になるわけですが、1回目のときと今回とでは、気持ちの上で違いはありますか。
違いますね。リレハンメルに行ったときは、19歳だったんですね。3か月間だけしか練習をやってなかったということもあったのですが、競技者としてまだ精神的にもできあがっていなかったですから。それに、自分に対するプレッシャーもあったし。
今は、当時に比べて随分変わってきていますね。競技に対しても考え方が変わってきたように思います。リレハンメルに行ったときは、とりあえず一生懸命ということだけでした。もちろんそれは今でも変わっていませんが、周りを見る余裕がでてきたと思います。スレッジレースって、やっぱり乗り物によって結果が左右されるんです。だからどんなに筋肉がついていて、体力があっても、乗り物でスピードがダウンしてしまったりということがあり得るんです。すべてパーフェクトにおさえた人が勝利を勝ち取ることができる競技なんです。そういった意味で、今はいろんなことを広く考えられるようになりました。
―アイススレッジレースをやっている国はどれくらいありますか。
あまり多くないですね。まだ限られた国でしか行われていないと思います。どうしても暖かい所ではできないので。やっぱり強いのは北欧ですね。
20年前からノルウェーではじまったようなんですね。ノルウェーでは、子どもたちが氷のはった湖を滑ってわたるとか、そういうことが普通だったらしいんです。それをオリンピックで取り上げたのがリレハンメル大会なんです。
―いま、日本と外国のレベルの違いはどんなところで感じますか。
私は、変わらないと思います。筋力のレベルとかはあるけれど、技術面では日本のほうが上だと思います。4年前の大会では、だれもアイススレッジレースという競技の知識をもっている人がいなかったので、どういうふうにトレーニングしていったらいいか、改良の余地が1つもなかったんです。でも今回は4年間の準備期間がありますから、今回そういう部分を出せればいいと思います。力の差は必ずあると思うんですが、日本人はそのへんをどうカバーしていけるかということが重要になってくると思います。
―アイススレッジレースの見どころはどんなところでしょうか。
やっぱりスピードでしょうか。そこを見ていただきたいと思います。
―長野パラリンピックを間近に控えた、今の気持ちはどうですか。
時間的にあまりないんですが…、今までやってきたことを無駄にしないようにしたいと思います。
―最後に本誌読者に一言お願いします。
競技自体を分かってもらうのは、なかなか難しいと思うんですね。でも、競技をやっているところを見ていただいて、私たちもオリンピックの選手や競技者と同じようなことをやっているということを感じてもらえればいいかな、と思います。
※取材・インタビュー 編集部
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年12月号(第17巻 通巻197号)11頁・12頁