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サポーティド・エンプロイメント
(supported employment)

指田忠司

 「援助付き雇用」の訳語で紹介されている重度障害者に対する米国の雇用支援制度の一つ。1970年代に提唱され、立法化を通じて広く各州に普及している。  このプログラムでは、従来障害が重度であるために、競争的雇用の機会が得られなかったり、雇用が続かなかったりした人々を対象とし、「就職してから訓練するモデル」が取り入れられ、雇用後に継続した援助サービスが提供される。その要点として、(1) 職場実習のための仕事でなく、それによって実際に給与収入を得られる仕事 であること、(2) 職場が統合された環境、つまり障害のない他の従業員と相互に関係を持ちながら働ける環境であること、(3) 雇用後、職務内容、職場定着、通勤等の訓練について、個別 化された援助を行う専門家としてのジョブ・コーチによる継続的な援助が提供されること、等があげられる。  具体的な実施形態としては、援助付き競争的雇用の他、エンクレーブ(個別就労の困難な8人以内の障害者がグループでジョブ・コーチの指導を受けながら、ホスト事業所の中で、通常は障害のない者が行うひとまとまりの仕事を行う形態)、移動作業班、小規模事業所、等がある。援助付き競争的雇用(個別就労)では、中度から重度の障害者 を地域の職場で雇用し、ジョブ・コーチによる訓練等の援助が初期段階に集中的に提供される。そして、その援助は次第に減らされるが、期間満了を理由に打ち切られることはない。  このような米国での取り組みは他の国々の雇用促進プログラムにも影響を与えており、英国では援助付き雇用プログラム(SEP)が教育・雇用省の施策として実施されている。このプログラムは、30%~80%の生産能力を有する重度障害者を対象とするもので、具体的には、雇用サービス庁が行う賃金補助付き雇用計画(SPS: Supported Placement Scheme)という雇用対策として実施されている。ここでは、レンプロイ公社等の授産施設から一般企業に派遣されて働く重度障害者に対して、国がその賃金を補助する等の支援が行われている。  なお、わが国では、日本障害者雇用促進協会が実施している「職域開発援助事業」が米国の制度に範をとったものと言われている。この事業では、職業リハビリテーションの実施場所として民間の事業所が活用され、地域障害者職業センターと事業所が共同し て障害の種類及び特性に応じた職業全般にわたる支援を行うことにより、労働習慣を含む職業能力の向上を図り、障害者の円滑な就職の促進と職域の拡大が図られている。

(さしだちゅうじ 障害者職業総合センター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年12月号(第17巻 通巻197号)45頁