音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

特集/豊かな生活をもとめて

ボッチャ(BOCCIA)

古賀稔啓

 ボッチャは重度脳性マヒ者のスポーツとして、ボールを投げることができなくても、補助具を使い、自分の意思を介護者に伝えることができれば楽しめるスポーツです。
 ボッチャは白いジャックボール(目標球)に自分(チーム)のボールを近づけるように投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして行われる競技であり、ペタンクに似た競技です。
 重度の脳性マヒ者を対象としたC1・C2クラスの選手に参加資格があります。パラリンピックの正式種目でもあり、このクラスの選手が唯一世界を狙える競技です。
 種目は個人C1Wad、個人C1、個人C2、団体(C1・C2)、ペアC1Wadがあります。男女混合です。
 C1Wadはボールが投げられない選手のために、勾配具などの補助具を使用して競技をします。介護者がスローイングボックスの中に入り、勾配具を選手の指示に従って動かし、ボールを選手の身体の一部に触れてから転がしてスタートします。Wad使用の勾配具などの補助具は国ごとに特徴のある補助具が用意されています。
 団体戦は1チーム3人で編成され、1人のC1の選手を含めます。補助具を使う選手は、チームメンバーの資格はありません。

簡単な歴史―国際的動向

 ヨーロッパで生まれたこのボッチャは1988年ソウルパラリンピックで公開競技として始まり、ヨーロッパを中心に数多くの競技会が開催されています。
 パラリンピックの翌年に、各地域ごとの大会(ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア地区など)→世界選手権(98年ニューヨーク)→ワールドカップ(99年アルゼンチン)→シドニーパラリンピック(2000年)のサイクルで毎年開催されています。
 パラリンピックの出場権はランキングの大会(世界選手権、ワールドカップ、パラリンピックなど)でポイントを獲得し、ランキングポイント12位までが出場権を得られます。
 アトランタパラリンピックでは、13か国、64名が参加しました。そのうち36名がヨーロッパ勢でした。上位のほとんどがヨーロッパ勢でしたが、韓国やオーストラリアの活躍も目立ちました。
 C1Wadの選手の中には、ボールを握ることができない選手の参加が目立ち、ヘッドギア型の補助具を使用してメダルを獲得していたのが印象的でした。5日間の競技のため、C1、C2の選手は集中力を持続するのがたいへんです。
 何人かの電動車いすなどのCP(脳性マヒ)の選手が国際審判の資格をもっており、誇りをもってパラリンピックの審判として活躍していました。このような競技運営ができるのもボッチャの魅力です。
 95年シャーウッドの森大会(国際脳性マヒ者スポーツ競技大会)では、脳性マヒ以外の筋ジスなどの障害のある人も含めての新しいクラス分けを行い、試験的な大会が開催されました。国際ボッチャシンポジウムの検討課題の1つになっています。

国内の動向

 ソウルパラリンピック以後、日本でもレクリエーションスポーツとして紹介されていましたが、重度脳性マヒ者のための競技スポーツとして競技会が行われたのは、96年6月に開催された千葉ボッチャ選手権大会です。種目は個人戦のみでした。
 この大会は95年に設立された千葉ボッチャ協会が運営し、国際脳性マヒ者スポーツ・レクリエーション協会(CP―ISRA)のボッチャ競技規則を翻訳し、クラス分けなどを行い、国際ルールで競技会を行いました。千葉県周辺を中心に療護施設や作業所、在宅者などの障害者が40名参加しました。この大会はC1・C2の選手と同じような障害をもつ筋ジスなどの選手も参加できるように独自にクラス分け(BC1~3)を行っています。
 97年6月には、軽度障害者も参加できるようにオープンクラスも設けて競技が行われました。また、重度の障害をもった人が審判員として参加していました。
 補助具を使って行えば、健常者の人たちと一緒にボッチャのゲームをレクリエーションとして楽しむことができます。また、高齢者スポーツとしても取り入れることができるのではないでしょうか。
 選手の感想は次のとおりです。

・自分の意思を正確に相手(介護者)に伝えることができるようになったら、ゲームが面白くなった。
・今までスポーツはできないと思っていたが、ボッチャはできると思う。
・いろいろな場所に行ったり、人に会ったり、話をしたりする機会が多くなった。
・電動車いすで審判をすることができた。

 現在では、東京や大阪でも講習会やミニ大会が開催されるなど各地で普及の動きがでています。
 97年12月には、日本ボッチャ協会が発足し、さらに全国的にもボッチャが普及していくと思われます。
 今後、国内でもボッチャ競技が盛んに行われ、国際的に活躍できる選手が多く現れることを期待します。

専門用語解説
ジャックボール 白いターゲットボール(目標球)1個。
ボール 赤6個または青6個のボール。
チーム 個人ボッチャは、1人の対戦相手。
チームボッチャは、1組が3人の対戦相手。
ペアボッチャは、1組が2人の対戦相手。
コート 境界線で囲まれたプレーする区域で、投球ボックスを含む。
コートの大きさは12.5m×6m(コートレイアウト参照)
試合 2チームで終了まで特定の回数を競技する。
終了 2チームによってジャックボールを含め、全てのボールを投げ終えた時が1回の試合終了。試合の種類に対応した回数を競技し、競技終了となる。
補助具 ゲームをするのを助けるもの。例:勾配具運搬装置等
自ボックス 投球ボックス番号が、1、3、5のボックス
相手ボックス 投球ボックス番号が、2、4、6のボックス
反則の対応 全てのボールが投げられた後、反則していないチームに与えられる。
1回の反則につき、2個の特別なボールを追加してプレーできる。

コートレイアウト

コートレイアウト

(こがとしひろ 千葉県立桜が丘養護学校)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年1月号(第18巻 通巻198号)12頁~15頁