音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

気になるカタカナ

セルプ

保坂春美

 セルプという単語は英語の辞書をひいても国語辞典を探しても載っていません。というのは、日本で作られた独自の言葉だからです。1994年(平成6年)、95年、96年と3年かけて当時の全国授産施設協議会は社会福祉業界で初めてのCI活動に取り組みました。平成4年の厚生省による「授産施設制度のあり方に対する提言」にも、「授産施設」という名称が国民になじみにくいので検討してはどうかという指摘もありましたが、一般の人々に活動内容を伝えにくいだけでなく、職を授ける側の言葉として、当事者にとって抵抗の大きなコトバだったのです。
 名前をつけるのだけが目的のCIではなく、仕事やくらしの環境見直し、一般社会・企業との交流、事業の進め方のトライアル、といったいろいろの側面をもったCI活動でした。が、やはり名前をつけるために全国で展開された研究や議論が最も大きな成果であり、協議会始まって以来の体験だったかもしれません。
 「名付けることは、知ることである」という諺があるように、自分たちは何を目標にしているのか、何に名前をつけるのか、将来はどうなりたいのか、働くことの意義、方法、といった自分たちのアイデンティティーに関する議論が約1年間にわたって沸騰したのです。
 結果として95年(平成7年)6月に発表されたのが、英語のSELF・HELP(セルフヘルプ・自立自助)という語を縮めて作った「SELP/セルプ」と、制度的名称の「社会就労センター」です。「セルプ」は、社会就労センターが、障害をもった人たちが社会の中で自立して生きていくことを目標に仕事や訓練をする活動であり、場であることを意味しています。また、社会就労センターやその職員自身も自分たちで考え自立することを宣言しているわけです。活動の目標や活動自体をセルプと呼んだり、セルプ○○のように施設名につけたり、製品をセルプ製品と呼んでもいます。「セルプ」は商標登録もしており、今や製品は「ブランドもの」です。
 セルプの語とデザインが全国で展開されることで、人々に親近感と相乗効果をもたらし、社会福祉への窓口となることも狙いです。

(ほさかはるみ 株式会社パオスCIコンサルタント)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年2月号(第18巻 通巻199号)38頁