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列島縦断ネットワーキング

長野・長野オリンピック・パラリンピックに向けたやさしいまちづくりプロジェクト

飯島英一

はじめに

 長野では、長野オリンピック冬季競技大会に引き続き、3月5日から14日まで、ヨーロッパ以外でははじめてパラリンピック冬季競技大会が開催されます。
 この競技大会施設及び関連施設はすべて完成しており、これらの施設は特にバリアフリーに配慮して建設されています。
 高速交通網の整備では、東京―長野間を最速1時間19分で結ぶ新幹線が開業し、高速自動車道も完成しています。また、県内の競技会場間を結ぶアクセス道路も新設または改良され、ハード面でのインフラ整備が大きく前進しました。

やさしいまちづくり推進事業

 長野市では昭和50年に「身体障害者福祉モデル都市」の指定(厚生省)を受けて以来、「福祉都市宣言」を行い、「福祉環境整備指導要綱」を制定し、さらに長野オリンピック・パラリンピックの開催都市に決定後は、「やさしいまちづくり推進協議会」を設立し、また、「障害者や高齢者にやさしいまちづくり事業」(厚生省)と「人にやさしいまちづくり事業」(建設省)の指定も受け、障害者や高齢者が安心して社会参加のできる計画的にやさしいまちづくりをハードとソフトの両面から推進してきました。
 一方、市民団体等による独自の立場では、「ながの福祉マップ作り実行委員会」を設立し、百余名のメンバーがタウンチェックを実施し、194頁からなる「ながの福祉マップ」を日本語と英語版で制作して、障害者の皆さんなどに配布しています。
 このほか、パラリンピックの市民ボランティアグループ「ながのパラ・ボラの会」等多くの団体がパラリンピックの支援活動や障害者理解等に向けた情報提供をしています。

やさしいまちづくり推進プロジェクト

 いよいよオリンピック・パラリンピックの開催も間近に迫り、国内をはじめ世界から多くのお客様を温かくお迎えするために、公共機関や商店会等がそれぞれの立場で「やさしいまちづくり」を進めてきましたが、その整備状況等は障害者や高齢者にとって果たして万全かどうか「愛と参加のオリンピック」「ふれあいと感動のパラリンピック」の成功のために、プロジェクトを組織し、もう一度実態調査等を実施して問題点について、さらに可能の限り対応することになりました。
 このプロジェクトは福祉関係団体及び企業や民間団体、公共公益機関等29団体によって設立し、幹事会と7専門部会20班の対策実行班によって組織されています。

実態調査の概要とその対応

 123名からなるプロジェクト対策実行班は、昨年8月、20班に分かれ、やさしいまちづくりの実態調査を実施しました。
 この調査では、不特定多数の人が利用する公共公益的施設のうち、JR長野駅周辺から善光寺に至る商店会等を中心に、競技会場及び関連施設とその周辺、ホテル等障害者対応宿泊施設、また、公園や公衆トイレ等公共公益的施設について地域と施設を限定しました。
 その結果、それぞれ問題点が指摘され、民間企業や店舗などについては、その場で改善事項を要請し、公共公益的機関については改善要請事項を持ち帰り、可能な限り対応してもらうことになりました。

各専門部会(各班)での主な対応要請事項

①道路歩道部会=各道路管理者に点字誘導ブロックの新設や取替え等交通安全施設について、歩道を中心とした再点検と整備等。
②交通輸送部会=JR駅等でエレベーターやリフト等は設置されましたが、さらに乗客誘導表示や英語の案内併記、既存段差の介助対応、その他案内パンフレットの作成配付等。
③④商店飲食店部会及び大型店金融部会=2部会が調査した店舗数は351店で、既に車いす等障害者対応済の店舗数は203店(58%)であり、未整備または物理的に対応不可能の店舗数は148店(42%)でした。未整備店舗等には仮設スロープの設置や誘導表示、店員の介助システムの対応等。また、長野市商店会連合会では、パラリンピックの開催を契機に「やさしいまちづくり対策実行委員会」を設立し、今後、やさしいまちづくりを継続的に推進することになりました。
⑤宿泊観光部会=市内には主にベッドを使用して、一般客の受け入れ可能なホテル等の宿泊施設が51施設あり、その全施設を調査した結果、障害者に配慮したハンディキャップルームが、9施設で19室あり、62名の宿泊対応が可能です。ユニットバスに段差等はありますが、通常、車いす使用者が、補助いすなどを利用して国内や国際的にホテルを使用している方法では、宿泊可能施設が35施設で2868室(シングルルーム1877室・ツインルーム991室)あり、宿泊可能者数は3859人でした。したがって宿泊施設は十分あるものと判断されます。この他、玄関に階段などがあり物理的に車いすの使用が不可能なホテルが16施設ありました。
 なお、市内の観光施設の中心に善光寺があり、国宝建築物で高い階段があるため、車いすでは本堂に入って拝むことができませんでした。
 しかしながら、昨年の御開帳では初めて国宝に直接固定しない仮設スロープが設置され、大変好評を博しました。オリンピック・パラリンピックの開催時には、誘導標識の設置も含めさらにやさしい対応をいただくことになっています。
⑥公共施設部会及び⑦サポート広報部会=略

おわりに

 長野オリンピック・パラリンピックの開催を直前に控え、いま長野では関係団体や関係機関等の協力を得て、最後の準備の総仕上げに入っており、新幹線でJR長野駅に着いた車いす利用の皆さんをリフトバスで輸送する手配や、これを支援してくださる市民団体及びボランティアなどによるサポートセンターの設置、また、ホテルのユニットバスに使用する補助いす(シャワーチェアー)をパラリンピック大会スポンサーから提供を受け、必要なホテルに貸与をする手配など、多くのお客さまを温かくお迎えするために、やさしいまちづくりの推進に努めています。
 このやさしいまちづくりプロジェクトがオリンピックやパラリンピックを迎えるための一過性の対応に終わることなく、パラリンピックの開催目的の1つである、市民の障害者理解が深まり、パラリンピックの開催都市の責務として、全国のモデル都市になるような、やさしいまちづくりがさらに推進されることを願っています。

(いいじまえいいち 長野市福祉部障害福祉課福祉主幹兼パラリンピック室長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年2月号(第18巻 通巻199号)72頁~74頁