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特集/障害者プラン推進・厚生省予算

平成10年度障害保健福祉部関係予算案について

厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課

 平成10年度の障害者保健福祉関係予算については、財政構造改革の推進に関する特別措置法が制定され、また集中改革期間(平成10年度から平成12年度)の初年度であることなど財政状況が極めて厳しい中で、平成8年度よりスタートした「障害者プラン」を中心に、障害者の総合的な保健福祉サービスを整備するに必要な額が確保されています。
 具体的には、厚生省全体の予算の伸びが1.9%増であるの対し、障害保健福祉部所管予算については、5348億円を計上し、対前年度伸び率は2.9%となっています。さらに障害者プラン関係予算については、2378億円を計上し、対前年度伸び率は5.9%としており、その3年次目の事業の推進に必要な額を確保しています。これは障害者プランが重要施策として位置づけられていることを表しています(別表参照)。
 新規施策等主要事項の内容は次のとおりです。

1 筋萎縮性側索硬化症(ALS)による障害者の身体障害者療護施設における受入れ体制の整備

 身体障害者療護施設に筋萎縮性側索硬化症(ALS)による障害者の受入れ体制を整えるため、特別介護経費の加算、人工呼吸器や喀痰吸引器等の特殊な設備を備えた専用居室の確保を図ることとしています。平成10年度以降に新たに整備する施設のうち、定員規模が50人以上の施設については、1施設当たり2床程度の専用居室を、また既存施設については、定員規模が50人以上の施設において、毎年各都道府県1か所1人ずつの受入れ体制がとれるよう専用居室の確保をすることとなります。
 また在宅における支援策として、新たに日常生活用具の品目に電気式「痰」吸引器〈身体障害者・児〉及びネブライザー(吸入器)〈身体障害児〉を取り入れることとしています。

2 権利擁護相談体制の整備

 障害者の人権に関わる事件が頻発している実態等に鑑み、障害者の権利を擁護する体制を整備するため、「障害者110番」運営事業を「障害者の明るいくらし促進事業」の充実を図る中で実施することとしています。

〈具体的な事業の内容〉

(1) 年間を通じて(日祭日を含め)来所、電話、ファックスによる相談窓口を常設します。また、利用時間帯は障害者が利用しやすい時間帯とします。
 
(2) 窓口には、常設の相談員を配置するほか、問題の内容に応じて法律・教育・行政等の関係者からなる「専門相談チーム」を編成して、訪問などによる相談体制を整備することにより、問題の解決に当たります。

3 短期入所(ショートステイ)事業の充実

 新たに身体障害者の家庭介護(ホームケア)促進事業と障害児の生活等訓練事業を実施することとしています。

〈具体的な事業の内容〉

(1) 身体障害者の家庭介護(ホームケア)促進事業は障害者及び介護を行う家族等を概ね1週間程度入所させ、障害者自身には日常動作訓練及び介護の受け方の指導を行うとともに、介護者に対しては介護実習を行うものです。
 また対象となる障害者及び介護者に対し、家庭介護に関する指導、助言を行うとともに、家庭における介護方法等を記載した「障害者及び介護者のための家庭介護(ホームケア)方法書」を作成し、交付するものです。
 
(2) 障害児の生活等訓練事業は、障害者(児)及び保護者等を概ね1週間程度入所させ、障害児(者)には日常生活動作訓練等を行うとともに、保護者等には、家庭における養育方法の正しい知識、技術を習得させるものです。
 また、保護者等から家庭における養育についての相談を受け、指導、助言を行い養育指針となる方法書を作成し、交付するものです。

4 障害者介護等サービス体制整備支援試行的事業の実施

 地域における障害者の生活を支援し、自立と社会参加を促進するため、公的サービスの量的・質的確保とともに、障害者の多様な需要に対応した総合的なサービス提供体制が必要とされていることから、在宅保健福祉サービスを中心とした介護等サービス提供支援の事業を身体障害者、精神薄弱、精神障害のすべてにおいて試行的に実施するものです。

5 国連・障害者の十年記念施設「障害者国際交流センター(仮称)」の整備

 国連・障害者の十年を記念する事業として、大阪府堺市に3年計画(平成10~12年度)で建設を予定しているものです。この施設は、障害者国際協力・交流機能、障害者の文化・芸術の発信機能、大規模災害時の障害者支援機能等を有した、全国の障害者の「完全参加と平等」の実現へのシンボル的意味を持ち、かつ、障害者の社会参加活動の拠点となるような施設として整備を行うこととしています。

6 精神障害者身体合併症治療体制整備試行的事業の実施

 身体症状を併せ持つ精神障害者(いわゆる身体合併症者)については、精神障害と身体疾患を並行して治療する必要があることから、平成8年度から2年間にわたり「精神障害者の身体合併症の治療体制の整備に関する状況調査事業」を実施した結果、全国レベルでの身体合併症の発生頻度や合併症病床の必要数が明らかになりました。これらを踏まえ、医療体制のあり方については、具体的な検討が必要であることから、平成10年度において、当該検討に必要な基礎的データの収集等を行い、その結果を評価、分析するため、合併症治療体制の整備を試行的に行うため事業を実施することとしています。

7 その他

 障害児通園施設の相互利用制度を実施するほか、市町村障害者社会参加促進事業に精神薄弱者、精神障害者の社会参加促進事業のメニューを追加することや国際障害者スポーツ大会(フェスピック)派遣事業、精神保健福祉士法制度運営指導事業を実施することとしています。

障害者プランの推進
10年度予算額2,378億円(9年度予算額2,246億円)

・平成8年度を初年度とする障害者プランを策定~14年度まで。
区分 9年度予算 10年度予算 目標値
(平成14年度)
地域生活援助事業(グループホーム)・福祉ホーム 9,173人分 (+1,210)
10,383人分
20,060人分
授産施設・福祉工場 50,795人分 (+2,760)
53,555人分
67,570人分
重症心身障害児(者)等の通園事業 460か所 (+68)
528か所
1,238か所
精神障害者社会適応訓練事業(通院患者リハビリテーション) 4,198人分 (+108)
4,306人分
5,280人分
精神障害者生活訓練施設(援護寮) 2,840人分 (+540)
3,380人分
6,000人分
市町村障害者生活支援事業 80か所 (+40)
120か所
690か所
障害児(者)地域療育等支援事業 140か所 (+60)
200か所
690か所
精神障害者地域生活支援事業 94か所 (+21)
115か所
650か所
訪問介護員(ホームヘルパー) 15,500人増 (+8,600)
24,100人増
45,300人増
短期入所生活介護(ショートステイ) 1,836人分 (+374)
2,210人分
4,650人分
日帰り介護施設(デイサービスセンター) 627か所 (+58)
685か所
1,010か所
身体障害者療護施設 19,169人分 (+1,100)
20,269人分
25,000人分
精神薄弱者更生施設 88,296人分 (+1,903)
90,199人分
95,600人分

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年3月号(第18巻 通巻200号)9頁~13頁