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特集/障害者プラン推進・厚生省予算

リハビリテーション どこまできたか日本の現状

社会

奥野英子

 1960年代にリハビリテーション・インターナショナル(RI)の中に4分野の常置委員会が設置されていたことや、1969年のWHOによるリハビリテーションの定義等から、リハビリテーションが医学、職業、教育、社会の4分野からのアプローチと整理されたのは、1960年代であろうと推測できます。
 その後の約30年間に医学、職業、教育等の分野における取り組みはめざましく、さらにリハ工学分野も大きく発展しています。しかし、社会リハビリテーションは、障害者福祉と同じであるとか、障害者を取り巻く環境(物理的、経済的、法的、社会・文化的、心理・情緒的環境)への取り組みであるとか、障害者に暮らしやすい社会にすることが社会リハビリテーションであるなど、社会リハビリテーションの概念が変遷してきたために、その取り組みは他分野に比べて遅れています。

▼社会リハビリテーションの定義

 1986年にRI社会委員会は「社会リハビリテーションは社会生活力(Social Functioning Ability:SFA)を高めることを目的としたプロセスである。社会生活力とは、さまざまな社会的な状況の中で自分のニーズを満たし、一人ひとりに可能な最も豊かな社会参加を実現する権利を行使する力を意味する」と定義しました。
 この定義により「社会リハビリテーション」は「社会生活力」を高めることを目的としたプロセスとされ、環境への取り組みは「機会均等化」の概念の中に整理されたのです。

▼社会リハビリテーションの現状

 この定義のもとで社会リハビリテーションの現状を評価すると、①先駆的な障害者更生施設において、社会リハビリテーションのプログラムが実践されるようになってきたこと、②社会リハビリテーション分野の専門職として重要なソーシャルワーカーや心理職等が、社会福祉士、精神保健福祉士、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士などとして専門職化が図られてきたこと、③障害者の地域生活を支援する事業に社会リハビリテーションのプログラムが必須事業として位置づけられてきたこと、などにより取り組みが発展しつつあるといえます。

▼今後の課題

 社会リハビリテーションの指導・援助・支援プログラムは現在、生活訓練、社会生活技術訓練、社会適応訓練、生活技能訓練(SST)などの名称のもとに実施されていますが、今後はさらに障害のある人の社会生活力を高めるための体系的なプログラムの構築が求められています。
 就労が困難な重度・重複障害者が地域において主体的に豊かな生活をし、社会参加していくことを目的とした指導・援助・支援プログラムを開発するとともに、対象者のエンパワメントとパートナーシップの視点に立ち、実践的な援助技術を有する専門職員の養成・研修体制の充実が重要です。
 また、社会リハビリテーション分野の専門職集団のネットワーク化を図るとともに、実践を深めるために、社会リハビリテーション研究会を発展させるとか、社会リハビリテーション学会等を創設することも今後の課題といえるでしょう。

(おくのえいこ 厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課障害福祉専門官)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年3月号(第18巻 通巻200号)20頁