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特集/検討中!これからの障害者施策パート1

関係3審議会合同企画分科会中間報告の評価と今後への期待

精神障害を中心として

細見 潤
溝口明人

 原稿の依頼を受けた時、私たちには大きな戸惑いがありました。言い訳するつもりは毛頭ありませんが、「中間報告」は宮崎県精神保健福祉センターには公式文書として届いてはおらず、そしてこれは必ずしも宮崎県の精神保健福祉センターに限ったことではなかったからです。
 厚生省では既に大臣官房に障害保健福祉部を設置し、精神障害者を含む障害者の総合的かつ横断的な保健福祉施策を推進しようとヤル気を見せておりますが、県によっては従来の行政機構の中で精神障害者の障害者としての認知は相変わらず進んでおらず、つい隅に置かれてしまうのでしょう。本県の平成10年度からの機構改革に期待するとともに、私たちの日頃の力不足を大いに反省しているところです。
 一方、「中間報告」は昨年の12月9日に出ていますが、これを詳細に掲載した精神保健福祉関係の印刷物を見たことがなく、一部の高いアンテナをもつ精神保健福祉関係者だけで盛り上がっているとすればこれも心配です。もっとも私たちの不勉強ゆえの心配であれば良いのですが…。
 さて、編集部から早々に送られてきた「中間報告」を見ての印象ですが、必要なことはほぼ言い尽くされており、さらにきめ細かな配慮もなされていることに大変感動を覚えました。ただし、配慮し過ぎて焦点がぼやけるなど若干気になるところも見受けられましたので、その主なものについてかいつまんで述べることにします。
 まずはじめに、精神障害者福祉の推進には他の障害者福祉とは異なり、保健・医療の整備充実を抜きにして語ることはできませんが、「中間報告」ではこれを平成11年度の「精神保健福祉法」の見直しに向けての公衆衛生審議会精神保健福祉部会での検討に下駄を預けているようです。しかしながら「中間報告」が同精神保健福祉部会を含めた合同企画分科会により検討されていることや、身体・知的・精神の3障害の施策の総合化が今後の精神障害者を含む障害者施策推進の大きなテーマであることを考えると、この合同企画分科会で検討された結果が、その後の「精神保健福祉法」の検討に反映されてこそしかるべきであると考えます。「最終報告」までには時間的に多少窮屈かもしれませんが、ぜひとも合同分科会委員の皆さんにはご尽力のほど、お願い致します。
 次に、精神障害者の社会復帰については、この10年間にほとんど進んでいない現状や、精神障害者社会復帰施設がいまだ少ないとしながらも、利用率が高くはないという現状が何の分析もなく記述されているのは、明らかに問題です。当然のことながら合同分科会の中で、これらの現状分析は詳細になされたとは思いますが、そこで明らかになった事項を「中間報告」に盛り込むことで、「最終報告」に向けての「中間報告」としての価値が出ようというものです。したがって「最終報告」にはこれらの「中間報告」に記載されるべき現状分析を明記したうえで、今後の施策を提示していただきたいと思います。そのことにより「最終報告」はより説得力を増すものと考えるからです。
 次に、市町村の役割については〈具体的な施策の方向〉の中で繰り返し強調されていますが、施策遂行の主体は市町村であり、それは市町村の地域責任性に基づくということを〈基本理念〉の中で明確に打ち出していただきたいと思います。と同時に、市町村をバックアップする国および都道府県の役割についてもここで明らかにしていただきたいと思います。責任所在の曖昧さは施策を台なしにする危険性があると考えるからです。また、介護保険制度もずいぶんと意識されていますが、介護保険に基づくサービスの内容が不確定な現在、これを引き合いに出すのはいかがなものかと思われます。
 次に精神障害者社会復帰施設に関しては、施設の小規模化ということから現在の4類型とともに小規模作業所、グループホームが高く評価されておりますが、4類型よりも「作りやすく使いやすい」後二者(小規模作業所、グループホーム)への施策のシフトをさらに明確に打ち出すべきだと思います。また、地域生活支援センターに関しても、入所施設や通所施設に付設するというのではなく、より小規模で独立したものを認め、それを地域に点在させていくという方向を示すべきではないでしょうか。
 障害者の所得保障も極めて重要な事項ですが、その割には具体的内容に全く触れていないのはとても残念です。例えば、一部の地域で保障されている小規模作業所への通所費用などは当然のこととして盛り込むべきでしょう。このような地域格差に関しては、競争原理が働き、むしろ地域活性化につながるということを平気で口にしていた方がおられましたが、地域の施策責任者の能力の低さのツケを障害者に背負わせることには反対です。合わせて作業手当の支給についても、論理的裏付けとともに、実質的に保障できるような積極的なご提案をお願い致します。
 その他、私たちが所属する精神保健福祉センターの業務について、〈睡眠障害、慢性覚醒剤中毒者の機能回復等…〉という記述はいかにも唐突ですし、一方、保健所の位置付け・役割についての記述は極めて不十分であり、さらなるご検討をお願い致します。
 まだまだ指摘したい事項はありますが、紙面の都合上、割愛しなければなりません。今はただ「中間報告」やこれからまとめられる「最終報告」が「報告のための報告」とならないことを祈るばかりです。

(ほそみじゅん・みぞぐちあきと 宮崎県精神保健福祉センター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年4月号(第18巻 通巻201号)22頁・23頁