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列島縦断ネットワーキング

東京・バリアフリーコンサート'97を終えて

今井志朗

 昨年12月12日(金)、東京・世田谷区民会館において「バリアフリーコンサート'97」が開催されました。このコンサートは、主催した自立生活センター「HANDS世田谷」の事業の中で、特に介助派遣による事業を通して、障害者が自立生活する際にいろいろなバリアがあることがわかりました。たとえば日常生活の中で、買い物に出かけると、まず道路上のバリア、商店街のバリア、さらに一般市民の心のバリアなど、障害当事者にしかわからない数々の問題を、広く地域の人たちに知ってもらうことを目的に企画されました。
 準備は8月下旬から本格的に始めました。2年前にも「チャリティーコンサート」を開催した経験を生かして、それぞれの役割分担を決め、スムーズに準備が進みました。
 世田谷区内の各関係団体、および求人雑誌などを見て集まった人たちと協力しながら、必要な役割をこなしていくことになりました。
 まず、役割分担を準備と当日の2段階に分けました。準備としては、まず資金集めが最も重要な仕事です。このことは関係者が一丸となって行いました。パンフレットの中に広告欄を設け、地元の商店街をめぐり広告料を集めました。そのほかにも準備として、出場者の募集、パンフレットの作成など、さまざまな事柄に取り組みました。
 当日の役割としては、三菱自動車の協力を得て、1週間前から区役所のロビーに交通バリアフリーパネル展示会を行い、雰囲気を盛り上げました。そのほか、ノンステップバスの展示、ジョイスティックカーの写真展示、障害者のための衣類展示などへの会場案内や、コーヒー、パン、おでんなどの屋台を出しました。そのボランティアには世田谷ビジネス福祉専門学校の学生が協力してくれました。当日出場できない障害者の人たちも、舞台の背景の絵を描いてくれるなど、いろいろな方々の協力が得られました。
 出場団体も世田谷区内から5団体、そのほかの地区から3団体の計8団体がパフォーマンスコンテストとして、いろいろな出し物をくりひろげ、その中から大賞1団体を選び賞金として10万円が支払われました。
 内容としては、寸劇、車いすダンス、楽器演奏・歌などのパフォーマンスが行われ、8団体ともできがとても良く甲乙つけ難いものばかりでした。審査委員も困り果て、結局大賞は2団体に、賞金も仲良く5万円ずつということになりました。
 その2つの受賞団体を紹介します。まず「交通メッセージ21」ですが、2年前のヨーロッパ視察を期に、誰もが使える交通・まちを実現しようと活動を始めた団体です。今回は、車いす使用者がバスに乗車拒否されたという、実際にあったエピソードをおりこんだ寸劇を行いました。
 もう1つの団体は「ポピーズ」といい、町田ヒューマンネットワークの自立生活センターで働いている障害者夫婦を中心にかなり前から結成され、実績もあるバンドグループで、楽器演奏と歌を聞かせてくれました。ほかにも、前回のチャリティー・コンサート同様に、元かぐや姫のメンバーの山田パンダさんによるミニコンサートがあり、雰囲気が盛り上がりました。
 ところで、コンサート会場の世田谷区民会館は、建物が非常に古いため、いたるところに階段があり、バリアフリーなんてとんでもない場所で、舞台に上がるのにも外にある仮設スロープから上がらなければなりませんでした。そういう場所を私たちがあえて使うことにより、公共的な建物でありながら、使いにくいままに放置してしまっている行政サイドの怠慢さ、いいかげんさをアピールしました。
 さらに日常生活で日頃よく使う病院・図書館・郵便局などの公共施設のバリアだらけな現状と、公共施設以外の生活空間、例えばスーパー、コンビニ、商店街などさまざまなバリアの現状をも区民全体の課題として、本当のバリアフリーとはどういうことなのかということをアピールしていきたいと思います。
 当日の入場者は500名近くに達し、このことは誰もがびっくりしました。そして今回の企画に協力してくれたボランティア、スタッフの人たちは110名にものぼりました。今後、このようなコンサートを重ねるごとに、私たちは心のバリアも取り除いていければ良いと思っています。新しい若い人たちと、企画から運営まで一緒に行えたことは、何より嬉しく、この「バリアフリーコンサート」を今年・来年へとつなげていきたいと思います。

(いまいしろう 自立生活センターHANDS世田谷)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年4月号(第18巻 通巻201号)58頁~60頁