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特集/検討中!これからの障害者施策 パート2

合同企画分科会の中間報告について

今泉昭雄

1 経緯

 平成8年7月、厚生省大臣官房障害保健福祉部の設置に伴い、厚生省三局に分掌されていた障害保健福祉施策が、同部に一本化された。
 これを契機に、障害者施策全般について総合的に見直してみるということで、身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会障害福祉部会及び公衆衛生審議会精神保健部会にそれぞれ企画部会が設けられ、合同して審議を行うこととなった(平成8年11月)。
 審議は、身体障害、精神薄弱、精神障害の3分野に共通する課題を中心に検討することとされ、「障害者プラン」を強力に推進するためという前提もあったが、これにこだわらず、広く次のような問題意識の下に進められたといえよう。すなわち、戦後50年、改善の積み重ねの形で進められてきた障害者施策に制度疲労がでているのかどうか。障害者やその家族の具体的ニーズに十分応えているかどうか。介護保険の利用の権利性、選択性の原理と措置制度による障害者施策はどのようにかかわっていくべきか等々の問題意識である。
 審議に当たっては、障害者団体、個人の意見も聞き(IL団体、個人)、審議の終わりの段階では、3つの各審議会、部会にフィードバックする等の措置も採られた。1年余り、小委員会を含めて14回にわたる審議を経て平成9年12月の中間報告となった。

2 中間報告の概要

 中間報告は33頁になる大部のものである。従って、その一つひとつに論及することは与えられた紙数では不可能であるし、本稿の主旨でもあるまい。
 そこで、中間報告の底に流れる考え方なりを中心に若干の具体的項目について言及することにしたい。なお論評にかかわる部分は、審議に参加して得られた、私自身の個人的見解である。
 まず合同分科会設置そのもののもつ意味である。例えてみれば、山がお互いに近づくことによって山の高低や谷間の存在が明らかとなるように、合同企画分科会(将来、三審議会、部会が統合することも中間報告で提言されている)の設置によって、障害種別による施策の不均衡や谷間の障害の問題の検討を避けて(他で審議すべき事柄として)通ることが許されなくなったことであろう。
 第2に、前記の問題意識を背景に「一人の生活者として自らの生活を自らの意思で選択決定することを当然とする」基本理念が確認され、その理念から、例えばリハビリテーションを職業復帰や経済的自立の目標よりさらに広範囲な生活の自立まで含めるべきであるという提言や、在宅対策の重視、施設の在り方の変革についての提言が導かれている。
 第3に、在宅対策への提言であるが、「障害者プラン」に示されている諸施策の充実のほかに、障害者施設の弾力的活用として、例えば、障害の種別にかかわりなく在宅者が最寄りの障害者施設のデイサービス等を利用できるようにする。日中のみのショートステイは通所施設でも実施できるようにする等提言している。また、家族の介護負担を軽減するため、一時的にサービスを利用できるいわゆるレスパイトサービスの導入等の具体的提言も行われている。施設の専門性もさることながら、限られた社会資源として、障害者施設を「地域の宝」として在宅対策の1つの拠点としている点に注目したい。
 第4に施設そのものの在り方について、地域に根ざすべきものという観点から、小規模化を図り、身近な地域に設置しやすいようにする。生活の場と活動の場を分離し、生活施設から、訓練、作業、生きがい活動のための施設に通所できるような途を検討する。生活の質を高めるために、個室化、夫婦のための居室の設置等の処遇充実の必要性が提言されている。また小規模作業所の法定施設化を進めるため、各種要件の緩和についてもふれている。
 在宅対策及び施設の充実には、従来の仕組みでは、財源等の壁がある。その点、中間報告では「施設と利用者との直接契約により、利用者にも相応の負担を求めつつ…」としており、将来のきめ細かな施設サービスへの一方向を示している。その際、所得保障の水準との関係が検討の課題であることはいうまでもないことであろう。
 第5に障害保健福祉体制について、障害児、精神薄弱者への福祉サービスの決定権限を、所要の準備期間をおいたうえで、県から市町村に移譲すべきであるとしているが、これは「障害者プラン」では移譲を「検討する」となっていたのと比べ、1歩前進の提言となった。
 第6の障害者の権利擁護については、とりあえず「施設入所者の権利を尊重する生活指針や入所者の預かり金に関する規定を策定すべきである」との具体的提言がなされている。
 以上、中間報告の一部についてコメントしたが、審議項目が多岐・多彩にわたるため結論のでなかったものも多い。合同企画分科会は現在も鋭意審議中であるので、さらに煮つまった提言がなされるであろうことを期待している。

(いまいずみあきお 社会福祉法人全国心身障害児福祉財団理事長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年5月号(第18巻 通巻202号)10頁・11頁