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特集/検討中!これからの障害者施策 パート2

関係三審議会合同企画分科会中間報告の評価と今後への期待

各会議への参画と当事者能力の向上を期待する

松尾 榮

1 はじめに

 今後の障害者保健福祉施策の在り方について、平成9年12月に中間報告が出されています。合同企画分科会、小委員会と14回もの会議を経てまとめ上げられた各委員のご努力に改めて敬意と感謝を申し上げます。
 障害者施策の基本は、障害者が生涯のあらゆる段階において能力を最大限に発揮し、自立した生活を目指すことを支援すること及び障害者が障害のない者と同様に生活し、活動する社会を築くことであるとあって、その基本理念には喜んでいます。
 私は、この中間報告の実現を強く願っておりますが、しかし、内容的にまだまだ十分ではありません。

①障害者のニーズを完全に盛り込んでいるのか。
②これを受け入れる当事者団体の能力はどうか。
③これを実現するため当事者の責務はどうか。
④厚生省はこれだけ真剣に考えて検討しているが、地方での考えはどうか。
⑤福祉が地方自治体に移譲されているが、その地方の体制はどうか。

 など数多くの問題を含んでいることも事実です。場合によっては、この論議を地方ですることも必要でしょう。

2 障害者プラン

 この中間報告では、当面の目標として「障害者プラン」を強力に推進していくことを前提に、①身体障害者、精神薄弱者、精神障害者の総合化、②介護保険制度の導入を踏まえ、障害者施策の整理を市町村障害者計画に基づいて進めていくとしています。
 国会議員のなかで障害者プラン推進議員連盟も結成されました(委員長山下徳夫・元厚生大臣、事務局長八代英太・衆議院議員)。このような国会議員の先生方ともよく連携をとり、障害者プランの完全実施に向けさらに努力していかなくてはなりません。
 地方自治体では、障害者団体の意見尊重が十分でないところもあります。たとえば、国が公共事業一律7%カットの決定をくだしたら、障害者プランの公営住宅等の施策を学識経験者の了解を得たとしてカットしたところもあります。障害者施策については、障害者団体の意見が尊重されるよう、また障害者団体も力をつけ信頼されることを強く願っています。

3 障害の総合化

 中央、地方の社会参加推進センターでは、身体障害者、知的障害者、精神障害者の3障害が総合化して一緒に活動することになります。お互いを尊重し合い、総合化への努力をすることが必要です。それぞれが他の障害や団体を理解し合うことが急務であり、「仲良くやること」が一番大事なことです。

4 介護保険制度の導入

 障害者プランでは障害者の介護を明らかにして、障害者が不利にならない介護保険制度との整合性を訴えていますが、なかなかその実態が目に見えてきません。
 介護保険制度の導入にあたっては、参議院厚生委員会の付帯決議として遜色のないものに、市町村障害者計画の策定、適切な指導を行うとしています。40~65歳未満までの障害者は加齢により介護が必要とされるものとしていますが、加齢に伴うものとは具体的に何か。また39歳以下の障害者の場合はどうなるのか、障害者プラン、福祉施策でやると公約していますが実際はどうか、19歳以下の若年障害者はどうなるのかなど、いろいろな問題を含んでいます。今後の大きな課題として、日身連の研修会などで取り組んでいきたいと思っています。

5 市町村体制はどうか

 市町村障害者計画の策定率は17.9%、市町村の障害者施策推進会議設置は5.9%と、市町村障害者計画の全市町村での実現はまだまだ程遠い状況にあります。
 これは障害者計画がゴールドプラン策定に比べて義務ではなく、努力規定となっていることが大きな原因であり、高齢者の数と比較して絶対数の差だといわれています。
 市町村に福祉が移譲されていますが、首長が責任をもってやれる体制かどうか、市町村全部に担当者がいるのか、財政の裏付けがあるのか、など問題はあります。日身連は全国各市町村にある支部組織を生かして、積極的にかかわりをもって障害者計画の実現を図る努力をしていかなければならないと思っています。市町村との対話集会等を開いて、それぞれの首長に直接陳情する活動が必要です。

6 むすび

 今後の課題として、次のようなことがあげられます。

①地方での論議が必要である。
②障害者団体での論議が必要である。
③障害者団体が大同団結してひとつの障害者団体になるには、それぞれの意見が尊重されるべきである。
④障害者関係予算の確保が当面の急務である。

 日身連としては最大の努力をするつもりですが、当事者能力の向上を図り、各会議に参画して責任をもち、信頼される障害者団体を目指したいと思います。

(まつおさかえ 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会会長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年5月号(第18巻 通巻202号)12頁・13頁