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1000字提言

投票所のバリアフリー

平野みどり

 統一地方選挙が終わった。有権者の審判を受ける2期目の熊本県議会議員選挙において、私は無事再選を果たすことができた。補欠選挙から1年4か月、利権誘導型の多い県議会議員の中にあって、手作りの議会だよりや介護保険の勉強会を開くなど、市民の目線で県政に携わってきたことが評価されたのかなと、自己分析している。
 いずれにせよ、共に生きるとはどういうことなのかが、理念として、システムとして根付くような地域社会実現に向けて、あらゆる分野に福祉的視点で網掛けをしていきたいと思っている。
 私たちがこれから向かう大変な時代は、まさに地方分権、地方自治の時代である。だから、自分が住む地域の代表を決める地方選挙への関心はもっと高くていいはずだ。しかし、不在者投票の条件が緩和されたにもかかわらず、熊本県議選の投票率はわずか2.33ポイント伸びただけであった。むろん、市民感覚とかけ離れた議員が、従来と変わらない金権選挙、連呼型選挙を繰り返していることへの不満や諦めがあることも事実だ。
 しかし、選挙戦を通じて、こんな声をよく聞いた。「投票に行きたいけれど、投票所が遠くてねえ」「投票所の小学校体育館入り口に階段があるから、選挙には1回も行ったことがない。いちいち車いすを上げてと頼むのも嫌だ」「筆記が困難で、言語障害もある。選管の係員が代理として対応するが、意思を丁寧に確認しようという姿勢がない」など。
 ヒューマンネットワーク・熊本では、91年の統一地方選挙以来、選挙が行われるごとに、投票所のバリアフリーの要望書を市や県の選挙管理委員会に提出してきた。最初はおざなりな対応で憤慨したこともあったが、回を重ねるたびに改善の進捗を説明したり、選挙管理委員会のスタッフへの研修に当事者として呼ばれたりと、少しずつ私たちの意図がくみとられてきた。投票所のバリアが、高齢者の激増とも相まって、投票率アップの足かせになっていることが認知されてきたようだ。
 「少々のバリアがあっても、投票所に行くことによってアピールになる」という思いの仲間はまだまだ少数派で、高齢者を含め多くの障害をもつ人たちは、投票を諦めているのが現状ではないだろうか。投票は、自分の意思で、自分の生きる町の仕組み作りにかかわる代表を決める大切な権利だ。何としても選挙に行こう、選挙をしようと呼びかけるとともに、投票所のバリアフリー、投票システムのバリアフリーを強く訴えたい。

(ひらのみどり ヒューマンネットワーク・熊本権利擁護担当、熊本県議会議員)