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1000字提言

音楽で癒しを

吉田雅子

 リウマチ患者にとって最大の苦しみは、他人に理解してもらえない痛みがあることです。「痛みのない日がほしい。痛みよ、痛みよ、とんでいけ」と願っています。治療法は進歩していますが、決定的なものはなく、長い療養生活の中で、副作用を心配しつつ、薬を飲み続けています。
 この痛みを薬だけに頼るのではなく、自己治療として近年、精神面での笑い、俳句、短歌、音楽等で少しでも痛みを緩和しようという療法が考えられています。
 日本医大の吉野槇一教授は「笑い」で痛みを解消することを試みておられます。患者の気分が明るい時は痛みが軽いということで、精神的なアプローチとして笑いの効果を実証しておられます。「俳句療法」を40年前から提唱、実践してこられた国立伊東温泉病院名誉院長の伊藤久次先生は、句作に取り組むことによって苦痛を客観的に考える境地に達することができ、よい影響を与えるとされています。
 「音楽」は古来より病人を癒すための道具であったと言われており、その音楽のもつ力が、人々の心を慰め、勇気づけるものであったのでしょう。聖路加国際病院の日野原重明先生は、音楽は筋肉の弛緩を促進し、不安やうつをやわらげることによって慢性の痛みの知覚をやわらげ、楽しみと気分転換ができると言われています。音楽は耳から入って大脳で認知し、その響きやリズムで心を安定させて、痛みを軽くする働きがあると言われています。このミュージックセラピーの効用を上手に医療の中で適用し、取り入れられれば痛みのコントロールもできるのではないでしょうか。
 このような音楽の偉大な力を医学と結びつけて、医学では限界のある疾病に、音楽療法も選択肢の一つとしてもっと積極的に考えてもよいのではないでしょうか。薬公害が叫ばれる今日、薬だけでなく、これらの治療領域が改めて見直される価値は十分にあると思います。
 疾病による苦痛だけでなく、挫折や失意の中にあった時、どんなにか音楽で救われ、心癒され、心を奮い立たせてきたことか。
 BGMにグリーグの曲を聞きながら、ゆったりとした時の流れを感じつつ、この原稿を書いています。今秋、第1回の音楽運動療法の会を開く予定です。音楽によってもたらされる精神的安定とリウマチ体操を結びつけて、リウマチの自己管理を効果的に行う企画です。このイベントの成果を楽しみにしています。
 

(よしだまさこ 前日本リウマチ友の会理事長)