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列島縦断ネットワーキング

埼玉
バリアフリータウンマップの調査をして

上野美佐穂

 埼玉県は99年度から実施する市民への情報提供の一つとして、インターネットのホームページで県内のバリアフリーといわれる建築物(公共施設)や駅、お店などの所在や概要などを載せた地図『彩の国バリアフリータウンマップ』を制作することを決めました。
 この地図は、県のホームページを通して一般市民に公開されます(8月以降の予定)。埼玉県では、今後4年をかけて各地域のバリアフリー状況を調べ、より詳しい地図にしていき、障害者が埼玉のその町を訪れる時に必要な情報が得られるようにしたい。また、全県に対して住みやすい町の必要性をアピールしていきたい、という意向です。
 ホームページ全体のデザインやその他の情報処理は、NTTに委託という形で制作が進みました。ただ各地域の詳細な調査については、日頃から住みやすい町づくりを考えて活動している、その地域の当事者団体に委託されることになりました。今年度は七つの市民団体が調査を委託されています。そして、浦和に関しては、私たち「虹の会」が委託を受け調査することになりました。
 調査は、昨年10月から今年2月19日までの5か月足らずという短い期間でした。その中で、どのように調査をしたらいいかを話し合い、今回は、本当に私たちが暮らしている地域周辺(埼大通り、大泉院通りの店舗など)に限って調査をしました。
 まず初めに私たちは、埼大通りと大泉院通りの二つの商店会の会長さんにご協力をいただき、今回どのような主旨でこのような調査を行うのかということをお話し、県からの依頼文を各店舗に配っていただきました。また、加盟店の名簿をいただき、そこからふだん私たちがそのお店を利用した体験などを書きながら下調べをし、最終的にどのお店を調査するかを決めました。同時に、市内の各団体に、ふだん利用している使いやすいお店やお気に入りの店、駅や交通機関の状況などのアンケートを取りました。
 調査にあたっては、たとえば段差があって入れないとか、お店の中が狭くて入れないということを載せるのではなく、段差があってもお店の人が快く持ち上げてくれるとか、狭くて入れなくても店員さんが品物を取ってくれるお店というふうに紹介したいと思い、そのような観点から調査表を作り進めていきました。そして県からデジタルカメラを借りて、お店の外観や入り口の様子の写真も撮らせていただきました。
 実際、調査に伺ってみると、お店の反応はさまざまで、その場で話を聞かせてくれるお店もあれば、忙しくて話を聞けずに何度も足を運ぶお店もありました。また、「そういうのはウチはいいや」と門前払いされたり、「情報を載せて障害者がたくさん来るようになると、対応しきれなくなるので困る」と断られるお店もありました。しかし、逆に「どういうふうにしたら使いやすくなりますか?」「不都合な点があったらいつでも言ってください」と言ってくれるお店もありました。
 ただ情報を載せるために調査を行うのではなく、この調査を通して少しでも使いやすいお店が増え、住みやすい町にどんどん変わっていったらいいなと思っています。
 そしてさらに、虹の会の関係者や市民団体、一般市民の皆さんを集め『駅総点検』という形で、イベントを行いました。このイベントには県の建築指導課の方にも参加していただき、車いすに乗って、駅の階段やエスカレーターを体験してもらいました。点検を行ったのは浦和、北浦和、武蔵浦和、西浦和、東浦和の五つの駅で、エスカレーターやエレベーターの有無、車いす用トイレの有無、券売機の高さ、点字ブロック・電光掲示板の有無などを点検しました。その後、各グループごとに感想を出し合い、全体で意見交換会を行いました。その中で、駅の構内に車いす用トイレがないことや、まだエスカレーターやエスカル(車いす1台用のリフト型階段昇降機)が設置されておらず、不便を感じていることなどがあがりました。また、視覚障害の方からは、駅周辺の放置自転車が怖くて非常に歩きにくいという意見が出ました。この意見交換会には県の方にも参加していただき、皆さんから出た意見を伝えることができました。
 今回、この調査を「委託」という形で受けた以上、私たちは「仕事」であったと理解しています。それは、障害者団体のふだんの活動を認めたということを指し、大きな一歩となりました。
 私自身、この調査は浦和に越してきて初めての大きな仕事でした。どこにどんなお店があるのかも分からなかったのですが、この調査に参加したことでいろいろなお店を知ることができました。「障害者が来ると他の客に手がまわらなくなるから困る」と言われたときは、本当に悔しい思いをしました。でも、いろいろなお店の方と話しをして、時には世間話になってしまったりもして、そうやってつながりを持ちながら、少しずつ自分の住んでいるこの町が住みよくなっていったらいいなと思いました。そして、この地図を見た人が「今度はこの街に行ってみよう」と思ってくれたら、とてもうれしいです。

(うえのみさお 虹の会)