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ほんの森

厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課監修
障害者ケアマネジャー養成テキスト

(身体障害編)

〈評者〉奥野英子

 平成12年4月から開始される「介護保険制度」に向けて、国、都道府県・指定都市、市町村、民間機関、各種専門職が準備に追われている。40歳未満の障害者、40歳以上64歳未満で特定疾患によらない原因により要介護状態になった者は、介護保険制度の対象とならないので、厚生省においては平成7年度から、このような若年障害者を対象としてケアマネジメントを実施するための検討を行ってきた。
 平成7年度から本年までの5年間に、身体障害、知的障害、精神障害の3障害を対象とした基本的理念、原則、基本的事項等を検討する委員会や、各部会においては、それぞれのニーズに対応するケアマネジメントの実施方法やアセスメント方法等を検討してきた。
 これまでに、全国各地において試行的事業が実施され、平成10年度からは障害者ケアマネジャー養成指導者研修が実施されている。この障害者ケアマネジャー養成指導者研修会に参加した都道府県・指定都市からの参加者は、各県に戻り、県内の障害者ケアマネジャーを養成する役割を担っている。
 介護保険制度におけるケアマネジメントの実施方法とは多少異なり、障害のある方々の個別的ニーズをアセスメントし、その人がどのような生活を築いていきたいかを十分に聞き、一人ひとりの社会生活力を高めていくことを重視するケアマネジメントの具体的実施を学習するために、障害者ケアマネジャー養成テキストとして発行されたものである。
 本編は身体障害者を対象とするケアマネジメントであるが、B5版430頁にわたる本書には、障害児・者の動向とケアマネジメント、障害の概念、自立生活の概念、身体障害者ケアマネジメントの基本的枠組み、具体的実施方法のほか、多岐にわたる障害のニーズを適切に把握するために、聴覚・言語障害児・者、視覚障害児・者、肢体不自由児・者、内部障害児・者の生活ニーズ等が、それぞれの障害をもつ当事者らによって詳しく書かれている。
 これらのほか、相談面接の演習、ケア計画作成の演習、施行事業の実施方法、養成研修計画の企画方法等、まさに実践に即したテキストとなっている。本書によって、障害者の自立と社会参加を実践的に支援するケアマネジメントが全国各地に普及していくことが期待される。

(おくのえいこ 筑波大学大学院リハビリテーションコース)