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肢体不自由者の参政権に関して

金政玉

 「国際障害者年」(1981年)以降、ノーマライゼーション理念の普及と障害者の〈完全参加と平等〉が謳われながら、多くの問題が放置されたままになっている。中でも政治参加の機会均等化(参政権の保障)は、大きく立ち遅れている。
 ここでは、昨年の第18回参議院選挙に向けた大阪での選挙における障害者の権利保障の取り組みなどから、その障壁の要因と、それに関連する肢体障害をもつ当事者の参政権問題について考えてみたい。
 昨年7月、障害者の自立と完全参加を求める大阪連絡会議などの4団体が緊急行動として、大阪府と市区町村選挙管理委員会に対して申し入れを行った。申し入れではまず、大阪府(市)選挙管理委員会が各市区町村選挙管理委員会宛に出した通知文書の表題が「身体障害者の選挙権行使に関する便宜供与等について」となっている点を取り上げ、「便宜供与」という表現が「まるで障害者の選挙における権利保障を『努力目標』であるかのような印象を与え、それが改善への遅々とした歩みにつながっている」と指摘している。そして同文書が、障害者をことさらに身体障害者に限定したものとしていることを問題にしたうえで、車いす利用者などの投票所へのアクセスについては、徹底を図るために、段差解消などの改善が間に合わず、やむをえず介助者による応援が必要な投票所については公表し、障害をもつ有権者の理解を得られるようにすること。また、スロープの配置などでかえって急な坂になっている問題などを、大阪福祉のまちづくり条例に関連して取り上げている。
 一方、全国的な問題として、投票の意思があるのに、寝たきりの重度の難病や障害のために自分で文字が書けない当事者が投票所まで行けない場合、手帳を持った重度の身体障害者に対象を限定している郵便投票は、「自筆に限る」という公職選挙法上の規定によって選挙権の行使ができない。在宅でワープロ入力(唇の動きで文字を指示してワープロ画面で意思表示できる場合など)ができたとしても認められないのだ。自治省選挙課は「経費の問題や寝たきりの高齢者の問題をどうするかなど、公平の面からも難しい問題が多い」と述べるにとどまっている。
 こうしてみると、選挙権を「便宜供与」というあいまいな考え方によって、権利保障として認めていない状況(決して大阪の事例にとどまらない)そのものを早急に変えていくことが必要になっていると考える。

(キム・ヂョンオク DPI障害者権利擁護センター)