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1000字提言

チャレンジドが提案する
新しい働き方、新しい価値観

竹中ナミ

 プロップ・ステーション(略称プロップ)は、コンピュータと情報通信を活用してチャレンジド(challenged)の自立と社会参画、特に就労の促進を目的に活動しています。「チャレンジド」というのは最近の米語で「神からチャレンジという使命を与えられた人」を意味し、障害をマイナスとのみとらえるのでなく、障害をもつゆえに体験するさまざまな事象を自分自身のため、あるいは社会のためポジティブに生かしていこう、という想いを込めた呼称です。
 プロップのスローガンは「チャレンジドを納税者にできる日本」という“刺激的な”ものですが、私は「日本という国は今、チャレンジドや高齢者の力を必要としている」という私なりの現実認識のもとに、あえてこういう“誤解を受けやすいスローガン”を掲げて活動を進めてきました。
 高齢化と少子化が大変なスピードで同時進行している日本では、フルタイムで働ける人や残業もいとわない、という人がどんどん少なくなっていきます。そうした社会にあってなお、福祉的財源(人とお金)を維持していける国であるためには、「1人でも多くの人が“自分の身の丈に合った”働き方で支える」という構造に日本の社会システムが変化しないと持ちこたえられません。
 「働く」あるいは「働くことでだれかの役に立ちたい」という気持ちは、人間ならではの素晴らしい感覚です。「日本を、チャレンジドや高齢者が元気と誇りをもって働ける国にしたい!」と思うと同時に、「働く」という形で社会貢献できない重症心身障害児者や痴呆症などの人たちも、尊厳をもって存在できる国でなければと、思います。
 情報通信技術の発達によって、今まで埋もれがちだった「個人の資質」や「個性」といったものが、不特定多数の広範な人たちに伝達できるようになり、また地域を越えた、人と人の交流が生まれるようになりました。
 重度在宅のチャレンジドが、家族の介護を受けながらも情報通信を活用してプロの技術を学び、一つの仕事を複数人のグループで在宅のまま仕上げる、という「新しい学び方、働き方のモデル」も、続々と生まれつつあります。
 自分の力を「働く」という形に表し、障害があろうがなかろうが、誇りある社会の構成員として生きていける日本の国を造るために、広範な分野の人たちと力を合わせてプロップの活動を進めていきたいと思っています。

(たけなかなみ 社会福祉法人プロップ・ステーション理事長)