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2000年年頭にあたって

八代英太 郵政大臣

 2000年おめでとうございます。
 私は、政治の世界に入って今年は23年目になります。その間、ハンディキャップのある人がいる社会こそ正常な人間社会であるという「ノーマライゼーション」の理念のもと、施設などのハード面だけでなく、心の面を含めた社会全体のバリアフリー化に、私のライフワークとして取り組んでまいりました。そして21世紀を目前に、私が郵政大臣を担当しているのも、偶然ではない配慮を感じます。障害者の念願であったバリアフリーが、情報技術の進歩により飛躍的に前進しようとしている時です。
 私は車いすの郵政大臣として第1の仕事として、情報のバリアフリーに取り組みます。そして、小渕総理大臣の言う「架け橋」という言葉をつかわせていただくならば、「21世紀への架け橋となる情報通信ビジョン」を早急に策定したいと着手しております。
 新しい技術は、もちろん国民全体のものです。豊かな国民生活の基盤になるものにしなければなりません。安価でだれもが共有できる技術を目指します。しかし、何といっても新しい技術の恩恵を一番待ち受けているのは、障害者です。
 情報革命、コンピュータ技術、インターネット技術の進歩は、移動が不自由な人々の身近に、世界を引き寄せました。自宅のベッドからでも、日本中はもとより世界中の情報を自分の手で入手し、利用できるようになりました。もちろん発信することもできます。
 視覚に障害のある人にとって、点訳者や朗読者の手を煩わせずに、文字情報にアクセスできるようになったことは、非常に大きな変化です。音声認識処理の技術がもっと使いやすいようになるのも時間の問題でしょう。このような技術を多くの視覚障害者や上肢に障害のある人だれもが使えるようにすることが重要です。
 聴覚障害者の方々に対して音声情報をいかに保障するかという問題にも、この10年の技術の進歩は大きな変化をもたらしました。ファックスの普及、パソコン通信、携帯電話の文字メールと便利になってきました。まだまだ、便利になります。新しい技術をうまく生かすことによって、聴覚障害者のコミュニケーションをもっともっと便利にすることができるでしょう。
 障害者にとって、新しい技術を最大限に生かす方法は何か、障害をもつ方と一緒に考えていきたいという思いで、障害者と情報技術の問題を考えていただく懇談会をつくりました。従来の学識経験者、組織代表者中心とは違う、ユーザーとして障害者自身を中心とした構成にしました。皆さんの討議の結果を踏まえて障害者にとっての情報保障の指針を作成し、実施に移していく考えです。
 そして、このような新しい技術を駆使することによって障害者の自立、社会参加をもっともっと促進することができます。今まで、通勤がネックとなっていた人々にとっても仕事ができるようになりました。SOHO、テレワーク、という新しい社会参加の方法を推進し、高齢者、障害者を含めてだれもが安心して参加できる社会を目指します。グローバル化する経済活動に即応し、ベンチャー企業の支援を図ることも今の郵政省の重要な取り組みの一つですが、このような動きの中に障害者もハンディなく参加できるように計画します。
 さて、コンピュータを媒介とした情報保障も大切ですが、人と人が出会ってコミュニケーションを図ることは、潤いのある豊かな社会に欠かせません。全国に2万4700か所もある郵便局は、一番国民の生活の身近にある施設です。地域の人々の生活に密着した郵便局を地域の「情報・安心・交流」の拠点にしていきたいと思っています。郵便局に行けば、切手が買えるだけではありません。介護やボランティアの情報も手に入れば、ひまわりサービスもあり、災害時には防災の拠点にもなる郵便局を目指します。
 初の車いすの大臣として、ノーマライゼーションの実現のためにやりたいことはたくさんあります。私一人の力は、微力です。多くの仲間の力が必要です。「ノーマライゼーションの理念」を実現するために、障害をもつ皆さんに積極的に政治に参加していただきたい。私は、与えられた大臣という立場で全力を尽くします。ぜひ、障害をもつ皆さんがそれぞれの地域で積極的に政治に参加してくださることを望みます。そして、日本全国で議員として活動されている障害者の皆さん、21世紀まであと一歩という、この記念すべき歴史の狭間に立ち会うことのできる喜びをかみしめ、みんなで汗をかき、知恵を出して、将来の子どもたちのために、よい日本を残していくためにがんばりましょう。

(やしろえいた 郵政大臣)