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交通機関とタバコ

横須賀俊司

 私は中学2年の時に頚随損傷者となった。それ以来、日常の移動には電動車いすを使っている。そんな私が、縁あって98年の4月から今の職場に勤めることになった。そのため、大阪の住まいを引き払い鳥取へ引っ越ししてきたのだった。毎日の通勤にも電動車いすを使い、JRに乗り込んで通っている。
 私は職業柄、研究会に参加したり、資料を集めに行ったり、講演に呼んでいただいたりするため、月に1、2回はJRを利用して関西方面に赴いている。以前は鳥取から関西に向かうには4時間も5時間もかかっていたらしいが、最近では、特急スーパーはくと号が走っているため、大阪まで2時間半ほどで行けるようになった。便利になったものだ。しかも、特急スーパーはくと号には車いす用の座席もあり、車いすのままで乗り降りができる。これはいい。1人で行くことの多くなった私には便利だ。こうして障害者の移動に対して整備されていくのは望ましいことだと思う。
 しかし、手放しで喜べないことが特急スーパーはくと号にはある。車いす用の座席が喫煙車両にしかないのだ。禁煙車両にはない。私はタバコを吸わないにもかかわらず、2時間半ものあいだ煙に燻されながら移動しなくてはならない。出張の会社員が多い時間帯に乗車すると、車内は煙でかすんで見えるほどである。非常に不快だ。気分も悪くなる。呼吸器に障害がある人が乗ったりすると、生命や健康に影響が出てもおかしくない。
 本来は喫煙、禁煙の両方に設置するべきだと思う。もしスペースがなくてどちらかしか設置できないのなら、禁煙車両につけるのが妥当ではないか。今のご時世、禁煙が主流になりつつあるのだから。ちゃんとお金を払っている客がなぜ嫌な思いをして利用しないといけないのだろうか。
 ある時、車いす用座席を喫煙車両に設置した理由を聞いてみた。新幹線がそうなっているので、それに準じたというのだ。これまでよく問題にならなかったものだ。
 先日、私は禁煙車両に車いす用座席を設置するよう遅まきながらJRに要望した。前向きに考えると言っていたが、果たしてどうなるものやら……。

(よこすかしゅんじ 鳥取大学教育地域科学部助教授)