音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

福島
オフィスIL

宮下三起子

オフィスILの発足

 オフィスILは、初めは自立生活センターとして活動を始めるにはお金がないので、郡山市の小規模作業所の助成を受け活動をしていました。青い芝の会という障がい者運動(*)を行っていた重度の脳性マヒの人たちを中心に、1993年にオフィスIL準備会が発足し、翌年正式にオープンしました。そして、95年に全国で初めて、自立生活センターに県と市から補助金が下りることになり、これまでの作業所とは別に、自立生活センターを立ち上げました。
 その後、福島県でもオフィスILを含め、5か所の自立生活センターが立ち上がり、97年に福島県自立生活センター協議会を結成し、同年9月に全国自立生活センター協議会と車いす市民全国集会の合同で「全国障害者市民フォーラムin福島」が郡山市で開催されました。これを契機としてオフィスILの存在が市民に知れわたり、2年後の1999年、市から「郡山市障害者生活支援事業」が委託されました。

オフィスILの事業

 オフィスILの事業としては、まず有料介助派遣サービス事業があります。一人暮らしをしている障がい者の家事介助、身辺介助などに月平均400時間のサービスを行っています。
 福島県では介助保障が十分でなく、ホームヘルパーの利用時間も1日3時間、9時から5時の間の利用で、土日の利用はできません。自立したいという人は有料介助がなくては一人暮らしは難しいのが現状です。しかし、年金や手当などから介助料を支払うのは厳しい障がい者が多く、オフィスILでは年に数回、行政に介助保障の充実について検討してもらえるように話し合いを続けています。今年度の目標は、利用時間を増やすこと、利用時間帯をニーズに即して変えられるようにすること、同性介助者の確保、土日の利用もできるようにすること、の4点の実現に向けて働きかけをしています。
 この他に、交通・まちづくり・教育など、障がいをもっていても一般市民と同じような生活が保障されるように働きかけています。
 今年度は、新たに「市町村障害者生活支援事業」が市から委託されました。地方で自立生活センターにこの事業が委託されることは非常に珍しいことです。この事業のメインは相談事業です。とくに相談員は視覚・聴覚・肢体不自由と、障がい別に当事者が当たっているのが特色です。同じ立場で話ができるせいか、相談件数も毎月増えていて、1か月に延べ約300件の相談があります。
 支援事業では、障がい者の生活力を高めるために、ILP(自立生活プログラム)を行っています。これまでは、「自立」をテーマに、肢体不自由の人を対象にした日常生活の支援が多かったのですが、今年度は段階別ILPを取り入れました。知的、重度の障がいをもった人を対象とした初級ILPは、外出することによってさまざまなことを経験し、仲間と一緒に何かを考えていくことを目的としています。また、生活の質(QOL)向上と当事者のより多い選択肢の実現を目的とした中級ILPでは、ファッションや世界各地の食についての知識を深めることを提案しました。
 今回委託を受けたことにより、行政や病院などからも相談事が回ってくるようになりました。また相談員として、視覚や聴覚の障がいのある人が週1回かかわるようになったことにより、事務局の中に今までと違った風が吹いてきたような気がします。
 そのせいか、今までは肢体不自由の問題が中心になりがちでしたが、視覚や聴覚など他の障がいのある人が困っていると、一緒の問題として話し合いをもてるようになってきました。

終わりに

 自立生活センターは、障がい者の社会参加をサポートするところです。今後は、障がい者自らが問題意識をもって解決できるように、いろいろな角度からサポートができるセンターづくりをめざしていきたいと思います。

(みやしたみきこ 自立生活センター オフィスIL事務局長)

*オフィスILでは、障がい者の「害」は使っていません。害は、「公害・害虫」といった意味なので、「碍」かひらがなを使っています。