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大阪
自立生活センター・ナビ

尾上浩二

自立生活センター・ナビの概要

 自立生活センター・ナビは、大阪市の東南にあたる東住吉区にあります。1998年5月の設立以降、毎月50~60件の相談を受けています。主な活動として、ピアカウンセリング、自立生活プログラム、社会資源の開拓、機関誌『ナビゲーション』の発行、自立生活セミナー等を行ってきています。
 これらの活動を、3人の障害者スタッフと1人の健常者スタッフで構成する事務局が中心になって進めています。また、事務局の活動を方向づけ決定する機関として運営委員会があります。北野誠一氏(桃山学院大学)、関宏之氏(大阪市職業リハビリテーションセンター)をはじめ、精神障害の当事者団体のリーダーや地域で自立している障害者などで構成し、いつも時間が足りなくなるほど、活発な意見、問題提起、アドバイスをいただいています。
 ナビの特色の一つに、自立生活や街づくりの長年の活動を背景にもっていることがあげられます。関連組織では、作業所を2か所、重度身体障害者グループホームを2か所運営しています。相談に来られる人もそうしたことを知っているのか、グループホームの入居希望がきっかけになって、自立生活プログラムヘの参加につながったというケースもあります。また、交通街づくりや介護保険の障害者への影響等の相談も寄せられます。
 ピアカウンセリングと並んで、自立生活プログラムを活発に行っていることも、大きな特徴です。「電動車いすで街に出よう」「パーティをしよう」「自分を表現しよう」「旅行計画をつくろう」と、楽しみながら自立生活をイメージできるようなテーマ・内容で進めています。ナビのスタッフは、いずれも20年以上前から障害者運動にかかわっています。今以上に、重度障害者の自立生活は難しかった時代です。自立生活を進めていくうえで、障害者が自分を信頼し自己主張を確立していくことの大切さを、自らの体験を通じて知っています。ピアカウンセリングや自立生活プログラムによって、障害者が自らの生き方をつくっていくことを支えていきたいと思うのです。
 機関誌「ナビゲーション」は年4回、1800部を発行し、会員や各区役所、障害者スポーツセンター等に配布しています。お勧めのレストランやおしゃれなどの生活情報から、自立生活に関係する制度・社会資源の解説といった少々硬い(?)情報までを扱っています。

大阪は「自立生活センターが旬」

 私たちが活動している大阪では、ここ2、3年、急速に自立生活センターが立ち上がってきています。もちろん、大阪で障害者の自立生活運動がなかったわけではありません。むしろ、障害児の共同保育や統合教育、交通街づくりの問題等、全国的に見ても活発に取り組まれてきた地域と言えます。
 そうした当事者運動の活発さに比べて、自立生活センターは少ない状況にありました。多くの当事者グループは、社会福祉法人格をもたない任意団体です。今はやりの言葉で言えばNPOにあたるこれらのグループが、比較的柔軟に利用できるのが共同作業所への補助金でした。
 国際障害者年以降、この15年、障害者が中心になって運営する作業所が急増してきました。そして、活動内容も、自立生活支援や就労支援等、それまでの作業所のイメージを越える活動が展開されてきました。また、そうした作業所が母体になってグループホームも設立されてきました。このように作業所を軸に、自立生活の取り組みが進められてきたのが、大阪の地域的な特徴と言えます。
 こうした流れを受けて、さらに自立生活を広げていくために、今、自立生活センターをめざして活動を展開してきているグループが増えてきています。また、JILの協力を得て開催しているピアカウンセリング講座(短期、長期)も好評を博しています。また、自立支援にかかわるスタッフを対象にした講座等も開催しています。これらの各種講座のリーダーやスタッフとしても、ナビのメンバーは動いてます。
 今後、「社会福祉基礎構造改革」としていろいろな法制度の改定が予定されています。そうした激動の中、自立生活センター等の障害者主導のNPOの役割が重要になります。当事者が声をあげて始まった自立生活。その自立生活を当たり前のものにするために、自立生活センターが広がっていくことを期待します。

(おのうえこうじ 自立生活センター・ナビ代表)