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新時代の事業に向けて

近藤秀夫

 ある施設から相談を受けた。「何を企画しても障害者が集まらない」という。聞いてみると「地域に開かれた施設として常に催物の時は地域に呼びかけてきたが、ほとんど地域の人の反応がない」という。そこで、支援事業のすべての企画は、施設を出て会場を地域のホールや、会議室を使用することを提案した。つまり、「待ち」から「打って出る」積極型を提案した。
 1996年、国によって事業化された「市町村障害者生活支援事業」(以下、支援事業という)は初年度から各方面に話題を呼んだ。この支援事業は、これまでの法人への事業委託と異なり、初年度から障害当事者が運営している「自立生活センター」にも委託されたことや、地域のニーズに合わせた対応を考慮した「柔軟性」は逸品である。99年10月現在、107か所(当会調べ)で実施されているが、当会の会員も50団体を超えた。
 委託先を見ると、1.社会福祉協議会系、2.身障療護施設系、3.NPO(自立生活センターを含む)系、4.その他法人、公社等の4種類に分かれる。それぞれの組織には規約や規則があるが、その中で支援事業の柔軟性がどう有効に活かせるか? これは研修に参加した多くの担当者から漏れる言葉だ。この事業の必須課目とされている「地域生活力を高めるための支援」と「ピアカウンセリング」の二つの項目は、これまでの福祉制度にはない「新しい要素」を含んでいる。
 「地域生活力を高めるための支援」は、障害者自身に経験を通じて自信を与え、自立に向けての情報や選択する力など、まさに生きる力をパワーアップするものである。また「ピアカウンセリング」は、障害当事者のもつ力を掘り起こし、新しい相談部分を創るものである。それについてある時、厚生省の担当官はこう言った。「これまでの《身障相談員制度》と《ピアカウンセリング》とは全く違う制度であり、これを同質の物と考えるはずがない」と。しかし、多くの地域でその間違いが起きていることを私たちは知っている。また「…生活力を高める…」に関しても、これまでの施策とほとんど変わらないプログラムが進められていることも知っている。この支援事業のもつ可能性は、おそらく21世紀の地域福祉を揺るがすパワーとエネルギーを生み出すと私は信じている。
 1997年9月「市町村障害者生活支援事業全国連絡協議会」(略称「全連協」)は支援事業に従事する職員、またそれをめざす人、支援事業の委託を考えている行政職員等を念頭に研修を企画、これまでの5回の研修は、各方面のご協力と助成金の賜物である。全連協の研修の特徴は、内容が分かりやすいこと、障害の種類の違う団体と交流できること、全員が語り、考え、まとめる作業に参加すること、みんなが書くアンケートが次の研修プログラムになることだと思う。今後の研修は九州、中国等地域ブロック別を検討中である。

(こんどうひでお 市町村障害者生活支援事業全国連絡協議会理事長)