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DPI障害者権利擁護センターの役割と課題

金政玉

目的と特色

 DPI障害者権利擁護センター(以下、センターという)は、1995年7月にDPI(障害者インターナショナル)日本会議が展開してきた諸活動(交通アクセス・まちづくり、自立生活運動、施設や精神病院における人権侵害に対する取り組み等)を背景に、障害をもつ当事者の立場から相談活動を中心にセミナー等や調査・研究を行う権利擁護機関として設置された。
 当センターでは、障害の種別や程度にかかわりなく相談窓口(電話等)を設置し、障害当事者だからこそ共有できる権利侵害を受けてきた側からの視点や体験をベースに権利擁護活動を行っている。つまり、障害当事者自身が主体となり、苦情や権利侵害にかかわる相談に対応する中で、障害当事者やその関係者と共に問題解決に向けた行動を行うことに特色があり、全国的にも先駆的な試みとして位置付けることができると考えている。

個別相談への対応の経験から

 昨年(98年)度実績では、169人(男性133人、女性36人)の方からの相談を受けたが、全体として相談内容も多岐にわたり、継続中の案件が増加している。
 相談活動から見えてきた主な課題は、不特定多数の障害当事者には、悩みや問題を聞いてくれるだけでもいいという傾向があり、どうしたらいいのか途方にくれて「あきらめ」が先行している場合が少なくないことから、当事者が能動的に権利意識を身につけていくことができる人権教育のプログラム化に取り組んでいく必要があること。
 また、具体的ケアが伴わない電話だけの対応ですませているのであれば、現状の改善には向かっていかないし、実効性のある権利擁護の役割を果たせない。より重要なことは、相談内容の事実関係を整理し、どの点が障害を理由とした不当な扱いであり、権利侵害なのかを明確にして、場合によっては相手側(加害者)との間に入って話し合いを行い、当事者が少しでも納得できる解決に向けて取り組む姿勢をどれほど示していくことができるかという点である。

今後の課題

 これからの社会福祉事業の枠組みが「措置から契約」へと移行する中で、利用者(当事者)とサービス提供者との「対等性の確保」等に起因した苦情・権利侵害にかかわる相談案件への対応のありかたを通じて、サービス提供者との利益相反関係等のチェック機能を含む第三者機関の役割と独立性が厳しく問われることになる。この点は、当事者主体の自立生活運動を基盤とする自立支援に向けたサービス事業の展開においても、役割分担の明確なシステム化の必要性を意味していると思われる。障害種別の違いによる自己決定の方法やニーズの多様化をしっかり踏まえた権利擁護活動の中身づくりが求められている。

(きむ・ぢょんおく DPI障害者権利擁護センター所長)