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大分あんしんねっと
あんしんねっとの目的

青田和憲

 きわめて小グループからのスタートであったが、法改正の動向をいち早く察知し、判断能力の低下に絡む現実の諸問題の解決の糸口を探るべく、法律職をアドバイザーとする在宅支援機関・施設職員等による研究会が、現在の大分あんしんねっとの前身である。
 この時点では、改正前の制度下における最善の解決策及び新法制の想定を基に方向性を検討するといった形で事例検討を積み重ねてきた。
 これらの熱意及び新法制の輪郭の明確化が必然的に研究者はじめ複数の職種の参画を得ることとなり、さらに、NPOをはじめとする住民自治の流れが組織化の後押しをすることとなる。つまり、後述するコーディネート機能等を活かすための土台づくり、あるいは諸システムを補完すべくノウハウの蓄積等は、これまですでにある程度の実践がなされてきたということが言える。
 2000年4月の施行後は、これまでの土台・実践を基にした新たな実践が求められるのであるが、そのコンセプトは「制度と利用者との近接性」であると考えている。
 法制度の補完システムとして社会福祉事業をはじめとするさまざまな動きが活発であるが、法制度を含むこれら後見的支援システムに利用者を効率的に結びつけていく、という役割を実践していくべきであり、その役どころこそがネットワーク型権利擁護センターの存在意義であると考えている。

今後の具体的な実践内容

 第一点は、制度・システムの全体的・個別的インフォメーション機能の役割である。
 新後見制度・権利擁護諸システムに関しては、全くと言ってよいほどなじみがなく、まして難解な仕組みであり、ことに個別的対応として、利用価値・利用適格等を含め、利用者に分かりやけく説明をし、理解を得ることには相当の技術が要求されるであろう。利用に結び付くかどうかはこの初期の介入の仕方如何にかかっていると考えられるからである。
 このことは、会員はもとより、ことに在宅支援機関や、人権擁護・民生委員等の、利用者に最も身近かに位置する職種においても言えることであり、後述するネットワークの形成にも関連することである。
 第二点は、コーディネート・マネジメント機能の役割である。
 まず制度・システム利用の前段階として、支援の必要範囲・家族関係・資力その他に関する入念なアセスメントを行ったうえで、後見的支援を要する対象者を最も適切なシステムにあてはめる、あるいは組み合わせることが重要な役割となる。
 利用段階としては、たとえば後見制度が適切であるとするならば、家裁への申立てまでの道案内として、具体的には、類型・形態・後見人適任者・第三者の後見人であれば報酬等、「お膳立て」が必要になると思われるし、申立人不在の場合には、申立権者のひとりである市町村長への繋ぎの必要なケースもでてこよう。
 利用開始後としては、たとえば後見開始後におけるその後見人の支援ということに関しても、ネットワークを活用していくべきであろう。
 第三点は、さまざまなレベルにおけるネットワークの形成である。
 まず一つ目は、支援する側のネットワークとして、複数の専門職の連携はもとより、生活全般にかかわるさまざまな関連機関との連携及び対象者の発見機能を備える機関との連携が機能の強化において不可欠となると思われる。
 二つ目は、家裁をはじめとするその他の権利擁護システム間のネットワークである。相互に守備範囲を明確にしたうえで、対象者の適・不適を考慮し、マネジメント機能を備える必要があるからである。
 三つ目は、地域住民間のネットワークの形成である。住民間のミニネットワーク及び最も身近かな自治会・民生委員・人権擁護委員等が常に互いに顔の見える関係を維持できるよう、組織化を図っていくことがきわめて重要となる。さらに、これら重層的ネットワークをさらにリンクさせていくことが、ネットワーク型権利擁護センター本来の役割の一つであると考えている。
 ネットワーク型権利擁護センターとしての独自性を発揮する意味で、独立した完結型のセンターとは一線を画し、制度・システムの顔が地域によく見えるようにするための啓発を含め、「発見」「橋渡し」「お膳立て」等に徹することが、私たちの存在意義であり、使命でると考えている。
 多くの「声なき声」に応えるために。

(あおたかずのり NPO大分あんしんねっと事務局次長)