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新しい生活支援制度のしくみを知ろう
-当事者を中心に勉強会の開催-

小関あつ子

 昨年10月に地域福祉生活支援センター事業が始まり、今年4月に成年後見制度が新しくスタートを切る。私たちが以前から行ってきた知的障害者の生活支援事業と大いに重なる内容であることと、私たちにとっては第三者機関の介在により、より透明性のある関係構築ができることを期待している。また、増え続ける利用者を考えると、地域福祉施策の再構成とともに、地域で暮らす人々へのサービスの位置付けを明確にしていく必要があろう。
 障害者を取り巻く関係者の意識は変わろうとしているが、知的障害をもつ人々はこの新しい流れの情報もさることながら、意見を述べる機会は非常に少なかった。そのため使い勝手のよい、分かりやすい、障害当事者のための支援のひとつになるよう、障害をもつ多くの人々にぜひ知っていただきたい。そして、その選択は各個人にまかせられるよう、当事者の人々にこの制度を学んでもらう勉強会を設けた。

勉強会のスケジュール

ステップ1~制度資料の読み合わせと理解(4回)
ステップ2~金銭にかかわる情報の提示と理解(2回)
ステップ3~契約の理解と内容作成(4回)
ステップ4~実際の利用とその契約について(2回)
 勉強会は、人選したうえで行うこととした。人選の目安は、ある程度の理解力があること、自らの生活経験に助けが必要であったことを自覚している人で、男女を問わずさまざまな生活パターン(通勤寮、グループホーム、結婚、一人暮らしなど)の人にまず学習してもらい、中核となるメンバー作りを企画した。それには障害の認知が必須条件となることもあり、以前からの経緯はあるが、メンバーに個々の障害の再確認をしてもらった。また、途中から、社会福祉協議会の担当者にも出席を要請し、今後、社協が中心となって、当事者に働きかける視点を模索しているところである。

勉強会の開始

 いまだ第1段階を終えたばかりで、課題はたくさんあるが、知的障害当事者の意見は以下のとおりである。
●権利については、当たり前のことだが、今まではよく分からなかった。
●相談する人が、あまり増えると、気をつかう人が増えて嫌だ。
●ずっと相談をしてきた今の支援センターに引き続き相談したい。
●信頼関係ができるのか心配。
●支援者とは別に第三者の人に相談したいと考えることもあり、助かる。
●いろんな所に、相談するところがあれば、どこへ行っても相談できる。
●指導されるのは嫌である。
●失敗は2度としたくないので、いろんな助けがあったらよい。
●差別されているのかそうでないのか、自分で判断できないことが多い。
●お金のことだけではなく、生活全体のことを相談にのってもらいたい。
●大きなお金の使い道については、よくわからない。
●将来のことを考えると不安。
●クレジットやカードローンなどは、返済などが分からなくなって処理できない。
●親とは考え方が違い、お金をどうするか意見がまとまらない。
 以上のような意見がでてきたが、新制度を生活の中にどのように活用していくかは、本人もまだイメージとしてつかめてはいない。自分たちの権利と生活を守るためには、さまざまな制度を活用したほうがよいこと、支援が必要であることは認識した様子である。

今後の課題

 この勉強会の初めから、契約と有料化については説明してきている。これからの福祉サービスは、“タダ”という考え方から、適切なサービスと適正な料金を支えとして、地域生活を送るための手段を考えていくことが柱と説明している。それがたとえよいサービスだったとしても、利用する当事者が、使い勝手のよい、しかも当事者中心の分かりやすい制度でなくてはならないことは言うまでもない。
 今後は、当事者が意見を述べ、自分たちにとっても味方になれる、自分たちを守る施策を障害当事者が獲得していかなければならないだろう。引き続き勉強会を重ね、当事者の意見を多くの人に伝えていこうと思う。

(こせきあつこ 札幌生活・就労支援センター指導主任)